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第二十二章 原因究明

 一つの会場を壊した、という誰も想像だにしなかった決着で勝利をもぎ取った大我。だが、この後の戦いにも響いてしまったらしく、その壊したとされる会場は使用せず、別のもう一つの会場へと戦いが切り替わる事になった。それを所長から聞かされた紀美代は謝ったが、お咎めはなしとのこと。

 理由を尋ねれば、上層部である四人――戦いの中で大我が言っていた引きこもりと称した四人が、大我と出会う為に、白鳥警備会社の社長室へと呼び出しを後日、休日の日に来るようにお願いするとの連絡を得た。

 それを、大我の元へ行き、報告をする。のだが、大我がいる住宅街の白嵜公園に、大我の他に、レッド・ホークが一緒に居た。


            ▼


「えっと……レッド・ホークさん? どうしてここにいるのかしら?」

「もう私は大我君に負けた人間だから、彼の言う通りに、この身体を差し出そうと思って~」


 ウルウルと口に出しながら涙を流しているが、大我は首を傾げるだけ。大我を前の椅子に座らせて抱きしめているこの状況に紀美代は溜息を一つし、隣に座る。

 いつも通りの椅子とテーブルに、お茶とお茶菓子が置かれている。


「紀美代さん。この人、やっぱりおっぱいデッカイよ」

「はいはい、分かりました分かりました~~」

「あとこの人、本当の名前があるっぽいよ。レッドなんちゃらって名前じゃなかった」

「……確か、レッド・ホークってあだ名よね?」


 涙が急になくなったレッド・ホークは大我を抱きしめ、頬をスリスリしながら、


「えぇ。私の本当の名前は、キャサリン メーロン。キャシーって呼んでくれたらいいわ。というより、将来的にはキャサリン・白濱になるかも知れないのよね~~」

「――へ?」

「絶対に大我君、かっこよくなると思うのよ。だから今のうちに婚約者として立候補してもよくない?」

「いやいやいや。歳はどのくらい離れているのよ」

「12才、一回りね」


 レッド・ホーク改めキャシーがそう答える。つまり、24才という事になる。


「貴女も結構若いのね」

「連れて行かれたところがちょっとした内戦だったから、武器を使う生活にはなってるけどねぇ。今は殺し殺されの世界に身を置いているわ。ただ、こうやって”婚約者として生きます”って言えば、離れられるじゃない?」

「ちょっと。大我君を巻き込まないで――って、私が言えた義理じゃないわね」


 周りにいるメイドが何やら話している。が、ワードが”婚約者”とか”白濱家は安泰ね”とか、結構前向きな発言をしている。それでいいのか白濱家。


「それで、どうしたの? 紀美代さん」

「……まぁいいわ。所長から連絡があったのよ。大我君が戦いの中で言ってた四人の引きこもりって人達が、数日後の休日に会いたいんだって」

「……へぇ~~。そうなんだ。まさか僕に会いに来てくれるなんて、嬉しいなぁ~~」

「指名したくせに。というよりも、どうやって知ったの? その四人の事を。私ですら知らないわよ。それも、上層部だっていうじゃない。私、驚いちゃったわよ」

「ん~~。キャシーさんを調べている途中で、僕が何度かあの警備会社に行った時なんだけどね?」


 紀美代は、さらっと飛んでもない事を聞いた。何度か、警備会社に、行った?


「白鳥警備会社に来てたの!?」

「え? うん。気になってねぇ。それで調べたんだけどさぁ、上層部の人間って~~、僕とキャシーさんが見た石の場所よりも下にいるんだねって。あとは体格とか、態勢とかで勝手に言ったんだけど」

「……どこから調べたの?」

「下水道で、コンコンって」


 鉄の棒を持って軽く振る。その行動の意味が最初分からなかったが、前回の欠片破壊にも繋がっている行動だ。そう、そうだ。そもそもの話し――、


「大我君のその行動や、前回の会場の欠片を破壊した事でも、振動が関連しているわよね? それって大我君にとっては大事な行動なのかしら?」

「そうだね。相手の場所を確認したり、空気を揺らしたり、地面を液状化させたり、色々と用途はあるよね。ちなみに、こうやって抱きしめられてはいるけど、背凭れがない椅子があってそこに座っているんだよ、僕は」

「……え? あ、うん」


 突然の話しの切り替わりに、一瞬だけポカンとする。だが確かに、キャシーが抱きしめているが、四角い椅子と合わさっている状況だ。


「12才の平均体重が45㎏なんだけど、僕はこう見えても100㎏近くはあるんだ。それだけ筋繊維があるんだけどね?」

「――そういう病気だったわね。けど、それと大我君の行動に何の因果があるの?」

「力任せで思いっきり鉄の棒同士をぶつけて地面にやれば、それだけで地面の探査が出来るんだよね、僕って。一種の特殊能力? みたいな」


 そんな事ってありえる? と紀美代が思うが、誰も何も、キャシーさえも言わないので、無視する事にした。今はとりあえず、


「まぁ今はいいとして……その四人、噂では過去の犯罪者らしいのよ。今は上層部という立場にいるみたいなんだけどね?」

「あらまぁ、黒い噂ねぇ」


 キャシーの言葉には紀美代も頷くしかない。確かに黒い噂だ。取り仕切っているのが、犯罪者だったなんて。


「キャシーさんの依頼された欠片だけど、全て保管されているのではなくて使われているってのと、今も尚調べているっていうの? 疑問も解消されそうだよねぇ。それに、前の戦いで壊せたの、キャシーさんの力も借りれたからだし」

「それそれ、気になってたのよ私。私は別に力を貸してない筈なのに」

「地上を荒らしてくれたでしょ? あの時に、地面を思い切り殴ってたんだよね。そん時かなぁ~~、全体的にヒビを入れられたの」


 空中にてバルカンの雨を降らしたあの時か、とキャシーは思い出す。ただ、短い時間でそんな事までやってしまうとは……恐れ入ったと内心で頷く。


「そんで、一対一って提案してくれるだろうなぁって思ったら、本当にしてくれた。そんでトドメの振動で全部割って、キャシーさんに勝利。ここまで考えるのに頭使ったよぉ~~」

「それって最初からじゃないでしょ? 途中から考えたんでしょ?」


 キャシーの言葉に、大我はう~~ん、と考える。数秒後、口を開く。


「本当は欠片だけを壊して、引きこもり四人を引っ張れないかなぁって考えたんだ。けど、地形的に難しいと考えた。だからキャシーさんと戦いながらどうにかして異常を与えられないかなぁと考えたら、バルカンを持ち出したでしょ? その瞬間に思いついたんだ。もしキャシーさんが全域をやらなくちゃならないくらい本気になってくれなくちゃって。だから腹部に狙ったり、引っ張って追い込んだんだ」


 成程ね、とキャシーは感心する。つまりは、誘導されたのだとそこで知る。


「そんな事が可能なの? いくらキャシーさんの性格をあの戦いで分かったとしても、空中に連射なんて事を考えていた可能性は高くなかったわよね?」

「って考えて、もう一つは、僕が大暴れする事。あのフェンスと木を利用して糸を巻き付けて、僕が動けるようにして地面に向かって落としていく。これでも地面に埋められている欠片に対しての攻撃は可能だね。ただ、僕の目的がバレちゃう可能性が大いにあったけど。でも、キャシーさんは勝利を急いだ。僕に精神の乱れを見せたくないからこその行動を取ったんだ。それが~~」

「……空からの銃撃」

「正解! けど、僕の狙いはさっき言ったように、地面に打ち込む事だったから良かったよ。そんでやる事をやって、バルカンを破壊していった。ついでに地面も僕自身が陥没させて、全域に振動が行き渡るようにしてね」


 楽しそうに喋る大我に、キャシーは溜息をする。


「私は乗せられたって事ね。けどまぁ結局、任務は失敗しちゃったから、私はいったんお別れかしらねぇ~~」

「……任務?」

「っそ。もう話しちゃうけど、私の目的は、呼び石の欠片、もしくは石を奪う事だったの。ただ石は無理そうだったから欠片だけでもって思ったんだけど、それも難しそうね」


 キャシーが溜息を再びすると、大我は足をブラブラとさせて、首を傾げる。


「多分だけど、欠片を得る方法はあるかもよ?」

「え?」


 紀美代とキャシーが口を揃えた。どういうことなの? と含めた言葉を。


            ▼▼


「以上が、今回の欠片破壊のシナリオになります」


 監視室では、分析班による映像の解析と、何をしたのかという事の辻褄合わせ、並びに事後報告が行われていた。


「ミオスタチン関連筋肉肥大とは考えませんでしたが、大我選手の常人離れした動き、並びにその身体能力の制御ならば――本当に、ごく僅かですが、有り得ると考えられます」

「……つまりだ。一回戦での壁破壊や移動は仕込み武器による誘導と、言葉による虚偽。二回戦は純粋な力でやった事と紙一重での回避という個人の力。そして三回戦で見せたのは一回戦、二回戦で見せた事の総合力というわけか」


 所長が解析班の言葉に、映像を見ながら頷きつつも、どういう結果になったのか理解する。


「確かに、今思えば……二回戦目の最後の耕三選手の攻撃ですが、一人の少年の一撃であそこまでの威力になるとは思いません。現在の耕三選手は入院中ですが、背骨の骨折をしています。いや、骨折で済んだというのが正しい表現でしょう」

「であるならば、耕三選手は殺されていた可能性が十二分にあった、という事ですね」

「骨折で済んで良かった……等と、言いたくはないけどなぁ」


 それぞれが感想を述べるが、所長は何故、態々上層部である四人を呼び出そうとしているのか、そこが分からない。マイナスなイメージしか付かない筈なのに、何故?


「確か大我選手。今度、上層部と会うんですよね?」

「あぁ。私も同席する予定だが、何が起こるのか全く分からないよ」


 出来れば、何も起きてほしくないと願いたい。



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