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第二十一章 三回戦 vsレッド・ホーク7

 大我の力には、ミオスタチン関連筋肉肥大症という病気による、超人的な力を発揮させているという事が判明した。ただ、もっとも恐ろしいのは、それを耐えうる武器となっている鉄の棒や糸である。どんな雑な使い方をしても壊れず、糸も切れず、服も破けずで、レッド・ホークにとってはそこが脅威であると考えている。そして先程出てきた、曾お爺さんという存在。多分だが、ここがデカい。

 そう考えながらも中央へ立ち、振り返って大我と対峙する。今は謎が解けた――いや、どうでもよくなったので、何処かスッキリとしている。つまり、精神の乱れはない。


            ▼


 お互いに立って見合っている大我とレッド・ホーク。大我は鉄の棒――いや、一郎と二郎を互いに叩き合い、一定の沈むが空間に響く。


「正直に言えば、遠距離で撃っていた状態のお姉さんよりも、至近距離でこれからやろうとしているお姉さんの方がやりにくかったりする?」

「正直に言えばって使い方、日本語として正しいのかしら? まぁそうね。私からしたら、爆発物に手を出すってイメージをしているから、私の方がやりにくいわ」

「成程、成程。確かに!」


 大我が一郎を地面に向かって振り落とすと、落とした箇所の地面が陥没する。それにはレッド・ホークは溜息を一つ。それそれ、と言いながら、


「その一撃が怖いのよ。しかも、それを直接喰らったわけじゃないんだからね? 私。脇腹と腹部には当たってるけど、それでも優しくなのよね?」

「当たり前じゃん! こんな一撃を本気でやったら、お姉さん死んじゃう死んじゃう! 僕はお姉さんを殺したいってわけじゃないから。殺したいのは、僕が殺すべきだと判断した人間と……頼まれた人間の標的だけだよ」


 笑顔で答えるソレに、成程ね……とレッド・ホークは理解した。この子は、私と同じ”仕事人”だ、と。


「それじゃ、お互いのプライドがぶつかり合うって感じかしら?」

「僕にプライドはないよぉ~。けど、勝たせてもらいたいなぁって思ってるよ」

「はいはい。それじゃ~~」

『ちょっと待った~~』


 ふと、互いの間に司会者のモニターが出現する。これには流石の二人も少々驚く。


『そのスタート、こっちでやらしてくれないか?』

「あら? 司会者はただ状況を上に見せているだけでいい存在じゃなかったかしら?」

『悲しいねぇ。けど、ちゃんと許可は得ているから喋ってるわけ』


            ▼


「簡単に言えば、大我君の戦闘記録を上の人間が本気で取りにいきたいってところなんだよねぇ」

『僕のぉ? まぁおちょくっちゃったからねぇ~~。意地でもって分かる、うんうん』

「そうそう。だからさぁ、能力とか使ってくれない?」

『どうだろ~~。もう使ってるかも知れないよ? ただそっちが確認出来てないだけで』


 笑顔でそう答える大我に、司会者は溜息をする。女性スカウトは紀美代を見て、


「本当に性格悪いですね、この子」

「ま、まぁ……。流石に擁護できないわ」


 紀美代が少々頭を押さえる。大我は一郎を振りながらこちらを見て、


『けど、これから接近戦が見れるんだよ? 純粋な接近戦が。それだけでもデータとして大事じゃない?』

「……と申していますが?」


 モニターには監視室の映像もあり、所長が映っている。所長は何も言わずに頷くだけ。


「了承を得た。君の言う通り、好きなように戦ってくれ。俺はただ、開始の合図だけを言うだけだからね」

『悲しいね。それだけの為に割り込んできたなんて……』

「……同情するなら金をくれってな。レッド・ホーク、すまないな、割り込んじゃって」

『別にいいわ。それよりも始めて頂戴。こっちも――もう精神を乱されるわけにはいかないから』


 レッド・ホークが両手を交差させると、ハンドガンを作り出し、やや前傾姿勢になる。それを見た大我が、思い切り一郎と二郎を地面に落とし、先程よりも深く陥没させる。


『僕も、負けるわけにはいかないからねぇ。殺さないといけない相手がいるんだからっさ!!』


 嬉しそうに答える大我に、再び司会者は溜息を、


            ▼


『いや、悪かった。プライドとやる事のぶつかり合いを見せてくれるのならそれでいい』


 そう司会者が言うと、モニターが上にあがり、二人の視界から消える。


『それじゃ、仕切り直しかつ、最高の戦いを見せてくれ!!』

「了解」

「いいよ~~」

『では~~~~~~~~~――スタート!!』


 トのタイミングで二人は動き出す。


 レッド・ホークは前に飛び出し、撃たない。大我は互いの鉄の棒を当てて空気中を振動させる。


「ッ!」


 視界が歪んだ。空気中の振動が三半規管に直撃してバランスを崩しにかかる。右側へ傾く――のを利用して左足の上からの振り落とし大我に放つ。その蹴りを大我は右鉄の棒で受け止める――のを確認して左ハンドガン真っ直ぐ大我に突き付けて一発撃つ――瞬間を左鉄の棒で横に弾く――と分かっていたレッド・ホークは右ハンドガンで背後に一発撃ち、能力を使用。ハンドガンを両手に持って真っ直ぐ手を伸ばして大我に向けている――のを分かっていたかのように左鉄の棒を伸ばし、ハンドガンの先端を斬った。


 この行いが実行され最後に斬るまでに、五秒。五秒の時間で、全ての事象が起こった。


 これにレッド・ホークは口許を笑みにし、大我は、笑った。


 大我が左鉄の棒を元に戻し、再び空気を震わせる為に両鉄の棒を当てる。これにはレッド・ホークも苦痛の表情を作るが、その振動を地面に刺す。すると、地面に亀裂が走り、何かが割れる音がする。

 その瞬間、レッド・ホークのハンドガンが消滅。これにはレッド・ホークは――精神を乱さない。


「(大丈夫、大丈夫よ。何が起きても、私はだいじょ――――)」


 再びハンドガンを作り出そうとする――


「!?」


 が、作れない。そもそも、力が発動しない――!?


「まさか、大我君!?」

「お姉さんの想像通り!! やらせていただきましたぁ!!」


 その言葉の後に、会場となっているフェンスとその内側が突然消滅し、一つの平原が出現する。

 元々の会場が平原であることが証明された。


レッド・ホークはその場で体勢を崩しながらも両手を上げ、大我がレッド・ホークの前で止まる。


「参ったわ」

「了解」


            ▼


「―――――――――――――――――」


 司会者が呆然としている。それは、女性スカウトと紀美代の二人もだ。目の前で起こった事は、大我の勝利である。だが、そんな事よりも――あってはならない事が起きた。

 それは司会者のモニターに映し出されている監視室の者達の慌て様からも分かる様に、緊急事態が発生した。


「……先輩。今、会場が壊れましたよね?」

「……壊れたわ」

「……壊れる前に、何かが割れる音がしましたよね?」

「……したわ」

「……それってつまり……大我君、壊しちゃったってことですよね? 呼び石の欠片を」

「マジかよマジかよ!?」


 遅れて動揺し始める司会者。


「いや、これって――こんな終わり方があっていいのか!? あっぶねぇ! こっちの欠片は無事だけど、会場の欠片がぶっ壊れたって事は――か、監視員!?」


            ▼▼


「分かっている!! っくそ! まさか振動を利用して破壊したってのか!? んなのありかよ! そう簡単に壊れるような代物じゃねぇんだぞ! 呼び石の欠片ってのは!!」

「勝者は大我選手でいいんですよね!? そうしますよ!!?」

「この状況は大罪人が大我選手って奴だろ!? 所長!! どうするんですか!?」

「今上の者達に対応を聞いている所だ。君達は、何故壊れたのかの原因の追究に努めてほしい」


 所長だけは冷静に、今の状況を上の者達に伝えた。原因が解明次第、全ての資料をお送りするという旨を添えて。



            ▼▼▼


「いやぁぁ~~。無理!! ごめんね~~」

「……今回は仕方ないわね。大我君が色々とやっちゃったから」

「いや? お姉さんの協力も得てたよ?」


 司会者が何処かに連絡をし、女性スカウトは何処からか連絡が来たのか携帯を片手に少し離れている。


「私の協力?」

「っそ。お姉さんのおかげで、僕もやりやすかったよ。これで、紀美代さんのお願いを叶えられるかもしれないなぁって」

「……私の? それって……」


 紀美代が疑問に思うと、女性スカウトが、了解です、と答えて携帯を閉じ、三人の元へと来た。


「結果報告で~す」


 三人が女性スカウトを見る。女性スカウトは溜息をしながら両手を広げ、


「今回の戦いは大我君の勝利です。その後の戦いは一旦停止との事です。大我君、下手したら呼び出しくらいますけど、いいですか?」

「だろうねぇ。いいよぉ~~」


 笑顔で答える大我。そこに、司会者が四人の元へと歩いてくる。連絡は終わったようだ。


「この後の戦いは別の会場を使うとの事で話しは収まった。同時に、ここは暫く閉鎖との事。いやぁ~、大我君も大変な事をしちゃったねぇ」

「あっはっはっは。けどこれで、僕がちょっと、ほんのちょっと考えている事が可能になったよ。司会者のお兄さんありがとうねぇ~~」

「いいよいいよ。今回の戦いはいい経験をさせてもらったから。けど、絶対に怒られるから覚悟だけはしておけよ? おチビちゃん」


 意地悪な顔をして言う司会者に、大我は笑顔で答える。


「いいよぉ~~」



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