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第二十章 三回戦 vsレッド・ホーク6

 大我は、笑顔で背中に手を回し、何かを取り出す。それは、もう一つの鉄の棒。レッド・ホークは二つ目の鉄の棒が出てきた事に、汗が額から出て来る。あの動きの中で、もう一つ隠していた? と考えて、右目で見てきた事を思い出す。大我の回避している瞬間や、攻撃をしている瞬間に、もう一つの鉄の棒が隠されていたのだろうか?

 色々と見てきたつもりだったが、二つ目? 膨らみすら分からなかった。レッド・ホークの構えた状況を見ながらの大我の二つ目の鉄の棒出現に、大我は笑顔になった。


            ▼


「汗が流れて光ってるね。どこから二本目がって思ってるね? 二本目は”最初から持ってなかった”よ。ならどうしてあるのか、なんだろうねぇ~~」


 レッド・ホークは一瞬だけ考えてしまった。それを読まれたのか、真横から鉄の棒が伸びてきた。大我に向けて二発撃つ。一発は大我の額に、もう一つは斜め上に。っが、両方とも先を読まれていたのか、二発とも斜めに叩き落された。


「!?」


 それには驚き、身体を反らして回避する。鼻の先を鉄の棒が掠っているのが分かる。それを感じ取った後に、後ろと上に一発撃つ。どちらに移動しても問題は――、


「真上から二つ叩き落せる!」


 前からの突然の言葉に、脳裏に浮かぶは先程の攻撃。現れた先で、真上から降ってくる鉄の棒を想像してしまった。そのまま背後へと飛び、身体を持ち上げ前に構えると、両手に一つの鉄の棒を二つにして持って一定のリズムで叩いている大我がいる。


「さて、次はどう動くのかな? 楽しみだなぁ」

「そんな事を言うわけが――」


 直後、背中に何かが接触し、逆くの字になる。


「っがはぁ!?」

「そう動くのかぁ」


 衝撃が背中からお腹へと通過、何が接触したのか、無理な態勢から見れば、それは鉄の棒。


「(騙された! 意識二つ目の鉄の棒を、既に振っていたのか! あの発言の後に!)」


 真上から二つ叩き落せる。あの発言の後に、横から振って伸ばし、何処かに固定して鉄の棒部分が背中に当たる様に考えたのだろう。

 レッド・ホークは即座に真上に向けて一発撃ち、その場から脱出。今度は背後を見せない様に大我を見ての移動。大我は横に振り被っており、持っている鉄の棒が今か今かと伸びている。


「(今の移動は、流石の私だと褒めてやりたい。精神の乱れを狙われているのは分かるが、今、ここに移動できた事に拍手してやりたい。そして、集中――)」


 心の中で冷静になる。先程撃った二発の弾は、移動先には使えない距離までいった。いや、真上は使える。そう考えて、真上へと移動。高い高度に出現し、バルカンを――斬られた。


「――――――」


 冷静に、いや、冷静にならざる追えない事が起きた。高い位置で、バルカンを作り出している最中に、何かによって斬られた。その何かは、高い位置だから細かくは見えないが、大我がやった事なのは確かであると確信した。だが、いったいどうやって?

 そう考えている最中に、地上から何かが伸びてきた。それは、鉄の棒だ。


「(ちょっと! なんでここまで届くの――――ッハ!? 二つ目の鉄の棒か!)」


 そう確信した瞬間、身体に巻き付かれ、真直ぐに引っ張られる。


「三…二…一…ゼロ」


 引っ張られる力は強く、このままでは地面に接触してしまう。だからこそ冷静になるのに言葉で三秒数え、マガジンを作れるだけ作り空中に放り投げる。


「成程ね!」


 大我の声が聞こえたと思った時には、拘束は解けられていた。だが勢いは止まらない。地面に接触する――と感覚で理解した時には能力を発動、レッド・ホークは空中に、それも一番近い位置に出現していた。ハンドガンを大我に構えて、だが、既に鉄の棒による薙ぎが放たれており、真横からこめかみに向かって接触する瞬間だった。

 殺しに来ている、と理解した。だからこそ一番上に移動した。なのに、今度は反対側から鉄の棒が回転しながら飛んできていた。


「(一つ目を伸ばした状態で投げた後に二つ目を振り被って狙った。流石だわ)」


 そう考えながらもレッド・ホークは真ん中の位置に移動――――出来なかった。


「!?」


 何故移動できなかったのか。それは、レッド・ホークにさえ分からなかった。さっきバラ撒いたはずなのに、どうして? と。

 その答えは、目の前で判明した。回転しながら飛んでくる伸びた鉄の棒の方向から、破壊されたマガジンの破片がいくつも飛んできたのだ。


「(私を捕まえる為の投擲でもあり、マガジン破壊でもあったのか!)」


 投擲された鉄の棒の線がレッド・ホークの身体を縛り上げる。身動きが取れない状態。だが、彼女は尚も冷静になるよう心がける。


「(また時間をかければ――)」

「今度は時間を貸してあげない!」


 声がした。大我の声だ。だが、ここは少なくとも高い位置。いくら大我でも、ここまで飛んでこれるとは思えない。それが、レッド・ホークの疑問と精神の乱れに直結した。

 だが、それ以上な事が起きた。それは――


「僕がここに現れる事!!」

「ど!?」


 斜め下からレッド・ホークに抱きついてきた大我。それにはレッド・ホークは心を乱した。


「どうやってここまで!?」

「僕の能力は明かしてあげられなかったけど、これは明かしてあげる。僕はね~~、仕込み武器の家系の人間なのさ!!」

「仕込み、武器!?」


 大我は鉄の棒を掴み、前に無理矢理、落ちる方向を顔面に変えられたレッド・ホーク。


「そう、仕込み武器! ある様に見せないのが手品師だけだと思っちゃ駄目だよ! そして、共に落ちよう!」


 レッド・ホークは、見た。何か光り輝く物が大我の背中から地上――戦いの入り口前に向かっているのを。


「さっきお姉さんは体験した落下を、僕も体験してみよう!」

「あ、あははは。子供と一緒に落ちるのはご勘べ~~~~~~~!?!?!?」


 そのまま勢いよく射出した。


「(両腕はガッチリホールド! 手の平は上に挙げられていて握られている! 胸元に息が当たっている最高!! だけどこのままだと二人共死ぬ!! 精神が乱されているから私の能力は発動できない。ちょっとこれ、詰んでるんだけど!?)」


 そのまま勢いよく地面に落下――


            ▼


「大我君!」

「レッド・ホーク!」


 二人が叫ぶ。大我とレッド・ホークが地面に接触――――しなかった。

 司会者が目を反らしていたが、何の音もしなかったので、そーっと見てみる。すると、レッド・ホークの鼻先が地面に当たるほどで、止まっている。


「な、なんだなんだ!?」

『司会者! 今すぐ大我選手の両手を映せ!!』

「両手を!?」

『早く!!』


 監視員からの言葉に、司会者が映像を大我の腕を映す。先程までホールドしていた腕が左右に伸ばされており、その左右の腕から細い糸が何重にもなって太い糸になっており、周りを囲っているフェンスに巻き付いている。


「ま、マジかよ……」

『このフェンスの強度は、さっきのバルカンの弾をも防ぐ程の強度がある。が、いつそれが分かった』

『最初、フェンスを叩いておりましたが、その時ではないですか?』

『あの時か!! だとすると、今までの行動は耐久力を調べる為の行動であると断定しても良さそうだな!』


 監視室の言葉がこちらで丸聞こえだが、紀美代は大きく溜息をしてホッとする。女性スカウトも流石に、腰を抜かしそうになる。


「度胸が鋼ってレベルじゃないよ……あの子供……」

「それには同感ね……。大我君、これはちょっとやり過ぎ。私の心臓に悪いわ……」


            ▼


「よいしょっと」


 軽く浮き立てる体勢になったレッド・ホークと大我はその場で拘束していた糸が外れたのか地面に着地する。身体を巻いていた鉄の棒を回収する大我に、レッド・ホークは大我を見て、両手を腰辺りに添える。


「色々と質問したいけど、どうやって私は助かったのかしら?」

「ここのフェンス、異様に頑丈なんだよね。だから戦う前に調査してたんだけど、この会場も能力で作られているのなら、どんな能力にもある程度は耐えられると思ったんだ。だから、僕は今回、ちょっとだけ見せたわけ」


 そう言って左手を上にあげる。その左手の先を見れば、もう一つの鉄の棒が伸ばされて、受け止める形をしていた。普通なら切断されるのだろうが――、


「そう。糸で守ったのね」

「正解~。そして幾つも腕に糸を巻いて、蜘蛛男みたいにギリギリ耐えて見せたって感じ」

「……腕、大丈夫なの?」

「ん?」

「だって、あの勢いを殺す程の力を持っているとは――」


 喋っている最中に大我は両腕の袖をまくり上げて、両腕を見せる。そこには、


 およそ子供とは思えない程の筋肉の形が出来ていた


「!?」

「えっへへ。驚いたでしょ~~。曾お爺ちゃん曰く、僕は病気持ちなんだったって。ミオスタチン関連筋肉肥大症ってやつ? それなんだってよ。だから曾お爺ちゃんは僕に、色々と教えてくれたんだ。力の使い方をね」


            ▼▼


「ミオスタチン関連筋肉肥大症――!?」


 監視員の一人が、声に出す。つまり、二回戦での力技は、素の力だという事に繋がる?


「一つ、解明が出来たな。大我選手の謎が」


 所長が一言そう告げる。映像にいる大我は楽しそうに笑顔でいる。


『きっとこの映像を見ている人達は色々と考察を頑張っていたんだろうけど、実はーーーーーっとう!』


 その場で勢いよくジャンプすれば、引っかけている鉄の棒の糸を掴み、そのまま落ちてくる。左右のフェンスに引っかかっている鉄の棒はそのまま戻って来る。軽くその場で離せば中央で一つになり、鉄の棒を掴む。人間離れしていると言わせるには十二分だ。


『全ては僕の身体能力でした!』

『……打ち返したのも、その力って事ね』

『僕は誰よりも優れているらしいよ? しかも曾お爺ちゃんの技術も加えられているから、更に凄くなっている。ただ曾お爺ちゃんは僕の模倣が出来るから、そこは悔しいかなぁ~~』


 そう楽しそうに話している大我に、所長は微笑む。


「子供ならでは、だな」


 これには、上層部がどう思うか、だな。


            ▼▼


「それで、お姉さん。続ける?」

「…………敗北を認めたいところだけど、ごめんなさいね。私も負けられない理由があるのよ」


 決心した顔付きをするレッド・ホークに、大我は何かを考えて、頷く。


「じゃあ、今から接近戦の戦いをしよう! それに勝ったら僕は降参する。けどそれに負けたらお姉さんが降参する。それでどう?」

「あら? 結構優しい提案じゃない。死ぬとかなしかしら?」

「お姉さんは撃ってもいいけどねぇ。僕は――この一郎、二郎でいくからさ」


 鉄の棒を二本持って言う。武器の名前だろうか? 可愛い所もあるなと思いつつも、頷く。


「いいわ。それじゃ中央でやりましょう」

「いいよぉ~~。やりたい事も、あるしねぇ」

「?」



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