第十九章 三回戦 vsレッド・ホーク5
レッド・ホークは、女性スカウトから見ても、司会者から見ても、監視室の者達から見ても、チートと言われてもおかしくない能力と性能をしている。それは、レッド・ホーク自身分かっている。だからこそ、冷静に対応している。怖い接近戦にも対応して見せている。
にも関わらず、その対応に対して先読みして対応してくる大我という子供が、恐ろしい。
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「(何故、崩せない! 何故、私が追い詰められている!)」
接近戦を仕掛けたが迎撃に近い事をされ、接近してきた。左足による蹴りを両腕で受け止めるが、威力がある。マズい! そう考えた時には、足元に投げていたマガジンを蹴り、大我の背後に出現し、そのまま前に撃ち離れる選択肢をとった。
「(私の強みは、この移動できること。だからこそ、ここまで――)」
心の中でこれまでの戦いを思い出しながら、前に移動した。
「っぐふ!?」
声が漏れた。それも、ただ漏れたのではない。左脇腹に一撃を貰っての声の漏らしだ
「ヒット!!」
その言葉と同時に、右へと吹き飛ばされる。だが、レッド・ホークは空に撃ち空中に出現、真上から見下ろす。大我が、仕込みである鉄の棒を振り回し、それを一つにした瞬間が見えた。
「(やられた!! 後ろ姿を見せた私の責任だ!)」
今の打撃は、こちらが背後に回避すると予想しての行動、神憑り的な横薙ぎによる打撃。ただ、当たったのが鉄の棒で良かった。仕込み刀の方なら、私は斬られていただろう。それは糸も同じだ。運がいい。
……本当に運が良かったのか? それすらも見えていたら? どうなる?
「お姉さんの能力は、チート能力だと分かるよ!! けど僕を倒せる殺せるどころか、一発も当たっていない!! これにお姉さんはこう考えるはずだ!! 僕の能力は空間把握能力系統だと!!」
しまった、喋られている。そう考えた時には、一つの言葉が心に刺さる。
「違うとしたらどうする!! お姉さん!!」
「(違ったら困るのは私なのよ!! 大我君!!)」
両腕にマシンガンを出現させて持ち、構える――時には、鉄の棒が伸ばされて真横から飛んできた。
それも、刃がある方向が上行きで、
「(やっば)」
あの仕込み刀の切れ味は感覚で分かる。このマシンガンでは受け止め切れない――から、一発下に向けて撃ち、下に出現する。汗を流すレッド・ホークだが、途中で大きく軌道が代わり、真上から落ちてくる。その軌道が変わる速度も、上から落ちてくる速度も、もはや音が聞こえる程に。
無意識に真横へ撃ち移動しホッとするが、落ちた箇所の地面が轟音と共に大きく陥没する。
「――」
そのままレッド・ホークは地面に着地し、大我は仕込み武器を元の一つに戻して、レッド・ホークの元へと歩いてくる。
「(私の集中タイムの時間切れ。回復しなきゃ)」
「お姉さん、僕の事を考えて行動してくれているけど、それは逆も然りで、僕もお姉さんの能力を考えてたんだ」
そう言って大我はレッド・ホークの前で止まり、鉄の棒を握りながら一定のリズムで振る。
「僕の見立て、お姉さんの能力は『武器を作り出す』という単純な能力じゃない。『作り出した武器を、作り出したタイミングによって作り出し続けられる能力』なのかなって」
「……なぜそう思ったのかしら?」
「撃ってきた弾のタイミングが、全て一緒なんだよねぇ。発射音と撃ってきた数が。しかも、維持できるんでしょ? 何発撃ったかの状態を、いくつかストックする方法を考えたんでしょ」
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司会者が女性スカウトを見れば、頭を搔いている。
「合ってる?」
「使い方はともかく、能力としてはドンピシャに近いですねぇ~~。ただ後半は私も知りませんでした」
「おいおい……。あの中で撃った音の数を聞いて覚えてたってのか? しかも今の言い方だと、何個か推測しておかなきゃいけない状態だろ」
『そうよ。けど、三発撃った、五発撃った、七発撃ったハンドガンの三パターンがあったとしても、それら全てが同じようにされているわけではないのよ。それはどうやって対処したのかしら?』
モニターからレッド・ホークの声が響く。大我は口許を笑みにして、
『撃たれた弾の数を把握しなくても、全て回避する事に専念すれば、ハンドガンだってマシンガンだって、バルカンだって避けられる』
『……簡単に言ってくれるわね。それにバルカンの弾を避けるだなんて、普通はありえないわ。空間把握能力だとしても、それを可能としている身体能力が恐ろしいわ。本当に子供なのかしら?』
『嫌だなぁ、子供だよ。けど、バルカンによる地上総攻撃は笑ったなぁ~~。本当に子供なのか聞いている人のやるような事じゃないよ』
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「それをやってのけるから! やったんでしょうよ!」
つい監視員の女性が言葉にしてしまった。だが、誰も止めない。この戦いは、明らかにおかしい。
『じゃあ教えてほしいんだけど、いいかしら?』
『何を?』
二人の会話に全員が注目している。レッド・ホークは呼吸を整えながら、大我を見る
『貴方の能力は、空間把握能力系統。そうね……五メートル以内に入った何かしらが侵入した場合、自動で身体を動かす事が出来る……ってところかしら?』
『へぇ~~、成程ね。そう考えるんだ、お姉さんは』
『どうかしら? 能力の細かい部分は当たってなくても、系統は合ってると考えているわ』
『うぅ~~~~~ん』
そこで大我が腕を組み、何かを考える素振りをする。これには監視員達が固唾を飲んで見守る。無論、所長も見ている。
『そうだね。お姉さんがここまで頑張ったご褒美に、教えてあげるよ。どうせこれって、あの所長さんや……上の人達にも見られている事だろうからね』
そう発言した大我は、ある方向を見る。それは、モニターが映しているであろうドローンがある位置。
『お姉さんの言う、空間把握能力系統かどうか。それは……』
そう言って両手で鉄の棒を引っ張り、仕込み武器を取り出し上に高く掲げる。
仕込み武器を、交差させて。
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『違いまーーーーす!!!』
とある部屋にて、二人の戦いがリアルタイムで流されている。その部屋での大我の対応に、一人の男が葉巻を圧し折り、テーブルを叩く。
「なんなんだこのクソガキは!! 大人をおちょくっているのか!!」
「……こればかりは、擁護できません」
眼鏡を掛けた男性が首を横に振る。一人の男性は、嬉しそうに言っている大我を見て……本当に嬉しそうに言っている大我を見て、つい笑ってしまった。
「何を笑っている」
「いや、なに。この子は強かに、私達を呼び出したいらしい」
「……何? 俺達を呼び出したい? どういう事だ」
「分かっているんですよ、この子は。上層部である私達四人が、白鳥警備会社のとある部屋にいるのを」
「いやいや、それはないですよ。だってここは、外界とは隔絶された――」
『外側と内側が違う場所に隠れている引きこもり四人と同じくらい、違いま~~~~す!!』
『……引きこもり四人?』
『っそ。偉い人、偉そうな人、真面目だけが取り柄無そうな人、こき使われてる人の四人』
その発言に、一人の男性以外の三人が目を見開く。驚かなかった一人の男性は、
「どうやら、探られていたみたいですね」
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「その四人を潰すのが、僕自身が決めたこと。紀美代さんのお願いは紀美代さんの願いで叶えるけどね」
「……空間把握能力系統じゃないっていうんだったら、どんな事をしたらあんな神業が出来るのよ!!」
「お姉さん自身が認めたじゃん!! 僕がいったいどうやったのかって!!」
レッド・ホークは思い出す。別パターンの撃った銃の数だけ。それをやってのけたと。だったらなに? 私の右目で見ていた映像は全て――
「お姉さんが見ていたのは全て、僕の素の動きだよ」
「!?」
「なんで見ていた、なんて言えるのか? 視線を感じたんだよねぇ~~。僕が一生懸命マシンガンの弾から逃げている間も、ずっと感じてた。だから踊る様に避けたでしょ? それで照準が”僕の狙い通り”に動いてくれたから、凄く避け易かったよ」
その発言に、困惑した。そんな事が実際に可能なの? そんな事が、可能な筈がない!! そう心の中で叫ぶレッド・ホーク。ふと、レッド・ホークはある事実に直面する。
先程、四人の引きこもりだと言っていた。それが見ているんだと。それはつまり、
「まぁまぁ。それよりも、僕はもう一つ、お姉さんのデメリットを探してたんだ」
「――私の?」
「そう。お姉さんの能力のデメリット。それが分からなかったんだけど、今のお姉さんと戦っている時のお姉さんの違いを見て、一つ仮説を立ててみたんだ」
「あら? 今度は私が狙われる立場ね。何かしら?」
大我は笑顔のまま、二つの鉄の棒を一つにし、真剣な顔で鉄の棒を見る。
「それは、精神の乱れ」
その言葉に、眉をピクリと動かす。
「この能力は神経をすり減らす能力。色んなパターンを作って、タイミングを見計らって、撃った弾からマガジンを作り出し新たな武器を作ってって、凄く大変な作業を一人でこなしている。そんなお姉さんは、一度でも精神が乱れると武器の生成は出来ない。つまり、移動できない事に繋がる」
「なんでそう思ったのか、聞いても?」
「バルカンだよ。どうして走ったのかな? どうして態々、バルカンの床を走ったのかな? その場で消えて別のバルカンの場所にいれば良かったのに」
「……色々と作戦があるのよ」
「嘘だ」
「嘘じゃ――」
「僕が空間把握能力系統は違うと言ったら精神を乱してしまった。そして今はその回復に努めている、と考えた時に~~どうして必要なのか考えた。それは、この能力の強さの代償だからだよ」
真剣な顔で、口許だけを笑みにする。レッド・ホークはすぐさま肺にある空気を抜き、ハンドガ――
「遅い」
作りかけのハンドガンが斬られた。それも、仕込み武器による抜刀にて。レッド・ホークはそのハンドガンを背後へと捨て、回転しながら移動、真上に撃って移動、二丁作り出し、大我がその場から動いていないのを確認して構える。
「お姉さん、ここからは僕が攻めていくから、逃げてよね」




