第十八章 三回戦 vsレッド・ホーク4
レッド・ホークは舌打ちをする。考えられた結果ではないにしろ、弾を撃ち返す? カートゥーンみたいな事をしてくるじゃない、本当に。空間把握系だと考えてたけど、そんな事も出来るのかしらね!
心の中でそう考えながら、次々とバルカンが壊れていくのを確認する。そのたびに補充はするのだが、無計画で返し壊しているわけではないと、レッド・ホークは気付いた。
ただ、遅かった。気付いた時には、レッド・ホークが隠れていたバルカンが壊された。
映像には、見つけた、と口を動かす大我の姿が、監視室と司会者のモニターに映し出されていた。
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「(集中――)」
レッド・ホークの前にバルカンが出現するが、即座に破壊される。それでも作り出すが、再び破壊される。
「(集中――出来ない!)」
バルカンを足蹴にして走り出す。下から見えているのか、走り抜けて足場にしているバルカンがことごとく壊されていく。ならば、次の作戦!
そう考えた時には、バルカンからの攻撃を一斉にやめ、能力を発動。身体を預けていた斜面……いや、地面に出現しハンドガンを握り、走りながらでも右目を閉じて場所を確認していた箇所へ向けて一発撃つ。が、それを打ち返したのかどうか分からないが、高い音が響いた。
周りは土煙のせいで全く見えない。が、
「(場所は合っている。一発で当てた。今のはマグレ。分かってる。だけど向こうには発射音と、空間把握で分かられている。こうなったら、覚悟を決めるしかないわね)」
平地……というよりも、もはや陥没を軽くしたような斜面を降りたり上がったりして近付く。その間に深呼吸で精神を整える。
「(土煙に紛れて撃つ? いや、バルカンのように打ち返される可能性を考えなければ、こちらに打ち返してくる可能性がある? 人間辞めてるって言いたいわね、打ち返してくるって考え方が出て来る時点で。そもそも、弾を打つってどういう発想よ、全く)」
そう考えながらもう片方の手にハンドガンを出現させて、神経を研ぎ澄まさせて両目を閉じる。
「土煙邪魔だから、一旦消し飛ばすかぁ~~」
大我の発言が前から聞こえた。直後、ある映像を察知したレッド・ホークが思い切り飛ぶ。
前から振動が発生したかと思えば、とある場所を中心に土煙が周りへと吹き飛び、その行動を行なった人間がレッド・ホークの目に留まる。
思い切り地面に鉄の棒を叩き付けている大我の姿だ。これにはレッド・ホークは驚愕。一撃で、この広さの土煙を消し指す風力を発生させたというの――!?
「見つけた~~ぞ!」
その言葉が聞こえた時には、右から鉄の棒が飛んできた。鉄の棒に刃物が付き、目に見えない糸がある。攻撃の判断が早い――!!
レッド・ホークは身体を下げてハンドガンで数発、大我に向けて撃つ。それを大我は手に持っている鉄の棒の刃で斬っているような描写が見える。回避して斬って、こちらを見ている。
「(荒野の戦場、こちらは銃器で向こうが接近戦用武器。離れて攻撃すればこちらが有利なのは間違いないんだろうけど、それを勝手に考えたらいけない。ここは……心を殺してやるしかないわね)」
思いっきり深呼吸をして数回行い、目の光を無くす。ハンドガンは軽く握り、右目は閉じ、ゆっくりと大我へと近付く。その大我は鉄の棒を一本に変えて、レッド・ホークの雰囲気が変わったのを感じ取る。
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「レッド・ホークには驚かされてばかりだが、大我選手も大概驚かされる事をする。お嬢さんも、ただの子供じゃないのをあてたな。けど今回はヒヤヒヤさせられる」
「こっちの選手、普通に強いと思うんですけど、こうまで人間離れやられると、人間と能力の相性によってこんなにも変わるんだなと考えさせられますよ」
司会者の出している映像を見ながら二人が紀美代を見て発言する。紀美代は頷きながら、確かにと思う。
「(未だに大我君の能力が分からないけど、あの動きは……)」
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「あれが能力じゃない? それってどういう事ですか、所長」
「いや、これは私の勝手な想像だが、大我選手の能力ではない気がするんだ」
監視室では、事の一部始終が司会者の映像からも流れている。だからこそ、バルカンの一斉掃射も見たし、打ち返して破壊している映像も見た。
「空間把握能力だとしたら辻褄が合うんですよ? これまでの戦いが。なのに、それが能力ではない? だとしたら、彼の能力はいったい?」
「使っていない、とするとどうなる?」
所長の言葉に、監視員達が静まり返る。使っていない、ここまで一切、使っていない?
「ちょちょちょ、ちょっと待ってください? 所長。もし仮に、仮にですよ? 一切能力をしようしていないとしましょう」
一人の監視員が、大我の映像に指で示す。笑顔になっている大我の映像を。
「だとしたら、この子が異常者という結果になりますよ!?!? 一回戦も、二回戦も! 今のこの三回戦も!!! 全てがこの子の身体能力って事になりますよ!?」
「そうだ」
「そうだって……。――それじゃ、まるで化け物じゃないですか、大我選手が」
「現に能力を使用している様子が見当たらないだろう」
「いや、今までのが空間把握能力系統だとしたら――」
「そう言いたいのは分かる。君の意見も最もかもしれない。私が言った事は忘れてもらっていい。ただ、これは私の想像でしかない」
所長は額から汗を流す。
「私もね、自分の発言を信用しているわけではないんだよ。だが、そうと考えた場合というのも考えなくちゃならない立場だからね。許してほしい」
「い、いえ。決して責めているわけでは……。こちらこそ興奮してしまい申し訳ありません」
一人の監視員が頭を下げてきた。上げてくれ、と一言。そう、所長だって彼に謝りたい気持ちがある。しかし、どうにもおかしい部分がある。それが見つからない、その違和感に、眉をひそませる。
「(紀美代君。君はどう見るかな? 私は彼を、妖怪の類だと考えているよ)」
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「お姉さん。この三回戦で僕は、一回戦以来の遠距離攻撃をしたよ。けどそれを回避した。凄いなぁ~~」
嬉しそうな顔に、レッド・ホークは真顔。こちらに近付いてくる動作がされたのを確認して一発、右ハンドガンで撃つ。が、同じタイミングで鉄の棒により弾かれる。
「危ない危ない。いきなり撃つんだもんなぁ~~」
「(こちらの動きをよく見ている。能力もバレているけど、それがどこからなのかを把握は出来てなさそうね。けど土煙からの一発を弾いた高い音は、さっきと同じ音だった。方向が分かっている? なら撃つタイミングはどうやって分かった? いや、そんな事は今はどうでもいいわ。今の私に出来る事は……ヒット&アウェイ、これしかないわ)」
斜め左右に一発ずつ撃つと、大我の左右から数発のハンドガンが撃たれる。が、それを全て回避する。
「(回避した! しかも今の回避は、ある程度弾が領域に入った時に動き出したように見えた。つまりは空間把握系統の能力で間違いなし。そして、その力を有しながらも動ける身体には感服するわ。だからって負けるわけにはいかないわ。家族の為に……!!)」
大我の背後に向けて二発撃つと、大我は動かない。が、背後でハンドガンが撃たれる音がする。直後、レッド・ホークは一つの決心をする。その空間把握系統を崩すには――、
「(私が自ら前に出なければならない!)」
大我の前に逆さで出現し、額にハンドガンを付けて一発撃つ。が、それを軽く身体を反らして回避した。その回避した大我の背後からハンドガンによる射撃が行われるが、態勢を変えて動きながらの回避と共に仕込み刀による一閃がレッド・ホークの首筋に――、
「!」
当たらずに三メートル離れた位置にショットガンを構えて出現し、連射する。大我はそれを、斜め前に向かって飛び込むように走り出し回避、レッド・ホークの銃を動かす速度よりも早い動きで接近する――ので、一発適当に撃ち、ショットガンの弾が全てショットガンに変わり、一斉に連続で放つ。
それを大我は空中に飛びながら両手で鉄の棒を持って完全に仕込み刀を出した。それを見た、大我の背後に出現していたレッド・ホークは、ハンドガンを連射する――のを見越していたように空中で回転して仕込み刀で全ての弾を斬った――のを確認したレッド・ホークはその場で消え、斬られたハンドガンの弾達が全てマシンガンに代わり乱射する。
その乱射を見た大我は、いつの間にか地面に投げて刺していた鉄の棒の糸を掴み、斜め下に回避、乱射するマシンガンの弾を避ける――先にレッド・ホークがおり、ショットガンを構えていた――のを見越していたのか、もう一つの鉄の棒をレッド・ホーク目掛け投げていた。
「(!)」
鉄の棒がレッド・ホークの腹部に直撃する寸前に、マガジンを途中まで作り、その真横に無理矢理移動して回避する。が、落ちてくる大我の左キックが襲い掛かってくるのを、レッド・ホークは両腕で受け止める。
「(崩れない! まだ崩せない! もっと! もっとやらなくちゃ!)」




