第十七章 三回戦 vsレッド・ホーク3
レッド・ホークの能力による銃撃を全て回避する姿を、所長は天狗と称した。楽しそうに避け続ける姿には、上層部の者達も見ているだろうなと所長は考える。だからこその、この戦い。
大我はジグザグに進みながらも、下へ上へと飛んでいる。銃弾だけで木々が倒れないのを時々確認しているようで……いや、確認する余裕を持っていると見て取れる。
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「レッド・ホークとの距離は離されているが、それでも避け続けているぞ大我選手!」
「やっば……。普通に人間じゃないの見たわ。これって能力ですよね先輩」
「分からないわ。大我君は何も言わなかったから……」
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レッド・ホークは、慌てている。避け続けられているだけじゃない。もう右目では追い付けられない程に速度を――木を蹴飛ばして離れる速度が上がっている事に。
「(どうして離された? どうして追い付けない? 銃弾の速度は人間のそれを超えているのよ!? なのにどうして!)」
一瞬だけ、大我の姿を見失った。が、黒い物体が右下から左上へと飛んでいった、のを確認した。それを当てた。当てたが、それが太い木である事が直ぐに判明した。すぐに周りを確認するように縦横無尽に撃ち続けているが、”全ての弾から確認をした”が、大我がいなくなってしまった。違う、見失った。
右目を開けて、中央から離れるように下へと滑りながら降り、森林の中へ。森の中へ入るのは危険だが、相手がこちらを見つけられる。両手にリボルバーを生成し、ゆっくりと深呼吸をする。
「(さてと、深呼吸……深呼吸……。大我君の動きを見る限り、空間把握系だと考えるべき。最初の十六丁にも及ぶハンドガンの連射全てに対応したであろう動きと、こちらへ飛んできたにも関わらず私が上へ移動し構えた時には、私の方を見て振り被っていた。それも前に進みながらタイミングよく、螺旋回転の軌跡に構えた腕を狙って。そしてさっきの、マシンガンの連射。あの動きは空間把握系と見て間違いない――と考えて、ならばその場合の対処をどうするかを考えないといけない)」
周りの音を聞く。環境音の中には、歩いてくるような音はない。いや、さっきのを見る限り、木々を移動してきたように、猿の様に動いていた。ならば、上か? そう考えて上を見た。
「お! やっと気付いた!」
「――」
眼前に、鉄の棒を木に刺してこちらを見下ろしている大我を見つけた。そしてもう一つの鉄の棒――、
「(じゃない! 仕込み刀!?)」
リボルバーを即座に構えたが、その瞬間には銃身を斬られていた。
「(落ち着け!)」
その場で消えたレッド・ホークは、頂上に置いてあるスナイパーライフルに現れ、マガジンを作りながら空に投げ、再びその場で消え、ハンドガンを持った状態で出現した。それを空中に投げ、両手である物体を作り出す。それは――ガトリング砲、バルカンである。
「そこだぁ!!」
人間が撃てるように無理矢理調整したわけでもないが、そこは能力。大我が居た場所に向けて弾を放ち、地面を土煙にする。右目を閉じて大我がいる場所を見つける。そこは――、
「(下山している!? 流石に恐れて――)」
ふと、腹部に衝撃が走る。その衝撃により右目を開け撃つのを止める。そして見るのは、当然腹部。そこには、鉄の棒が食い込んでいた。
「(にゃろぉぉぉぉ!!)」
痛みを我慢して鉄の棒を掴んで投げ捨てようとするが、掴んだ瞬間に――引っ張られた。バルカンを手放し、真っ直ぐ大我が下山した方向へと。斜め下に急降下している。
「おりぁ~~!!」
声がした方向を見れば、仕込み武器である鉄の棒――ではなく刃がこちらに振られていた。
「――」
レッド・ホークは、精神を抑えつけて無理矢理安定させ、刃が当たりそうになる瞬間に消え、頂上よりも高い位置で捨てたハンドガンの元へ移動し、地面に落ちたバルカンの元に移動する。
「――――ぷはぁ~~~……」
抑えつけた物を吹き出した。二酸化炭素を。そして吸い込んだ。酸素を。
「今のはヤバかった……。遠距離攻撃者を接近戦に連れ出してくるなんてやるじゃない、大我君。けど今の所分かったのは、空間把握系であるという前提で考えるとして、仕込み武器である鉄の棒、そして見えない糸のような物があった。空間系統ならば、私の真上に居たのも、マシンガンの嵐を回避できたのも、ハンドガンの弾を回避したか対処したかも分かったわ」
バルカンが消滅し、落ちてきたハンドガンも地面に落ちると消える。こちらの場所を把握されている可能性があるわよね…と考え、スナイパーライフルを置いて大我が居た方向とは反対側へと走り、降りる。
「(空中に居たら私の居場所を教えているようなもの。ならば、こちらから探り出して――空間を潰していく。それしかないわ)」
向こうが力技で来るのなら、こちらも力技で行くしかない。のなら! と考えたレッド・ホークは、斜面に身体を預け、右手でマガジンを作り前に向かって投げると、マガジンが意志を持ったように空中へと駆け上がる様に、右、左、右、左と飛び跳ねながら上へと目指す。左手でマガジンをその場で作って落とし、空中に現れる。それは先程よりも高い――能力が発動出来る限界値まで来た。
下にいる司会者、女性スカウト二名が見える。ここまでが球形で、高さの上限!!
「(本当はここまではやりたくなかったんだけど、やるしかないわ、ね!!)」
勝つのだ。勝つしかないんだ。だからここで、負ける選択肢は取らない。そう願い、レッド・ホークはバルカンを再び出した。それも――空一面に。
「ってーーーーーーーーーーーーー!!!」
そして、放たれる。バルカンによる地上襲撃が、
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監視室では、今目の前で起きている事に目を見開き、言葉を失っている。今目の前で起こっているのは、火力による暴力だ。頂上も、山も、地形も、あったもんじゃない。全て破壊されていく。
いくら能力で作られた地形だとしても、圧倒的過ぎる。このレッド・ホークという女性の能力を甘く見ていた。本気を出せば、能力が使用出来る限界高度まで飛び上がり、そこから真下に向かって撃ち続けられる。何よりも、彼女の能力がそれを可能とさせている。
「いや、能力の力だからって……子供相手にこれほどの火力は……」
一人の女性監視員の言う通り、これは一人の子供にやるべき……いや、人間にすべき事ではない。これは当たれば即死で、ミンチになってもおかしくない。死んだのかすら分からないのだから。
それは他の監視員も似たようなことを考えていた。これは、
大我の敗北であると。
しかし、所長だけは自分の席で、違う映像を三つ並べてみていた。
「……これは」
一つ目は、頂上にてハンドガンの嵐に巻き込まれた映像。
二つ目は、マシンガンの嵐を楽しそうに駆け抜けている映像。
三つ目は、バルカンに撃たれながらも鉄の棒をレッド・ホークに当てた映像。
これら三つの映像を超スロー再生で見る。すると、それら全てが何かしらの能力ではなく、全て空中で身体を動かして回避している映像が映し出された。これは――、
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「いくらなんでもまずいだろ!? レッド・ホーク!」
「先輩!」
「大我君!!」
目の前では轟音と共に、地形が変わっていく姿が見えてしまっている。このままでは、マズい。生きて帰って来てほしいと願ったのにも関わらず、これでは死んでもおかしくない。流石の紀美代も、頭がクラクラしてきそうになった。
『司会者』
「しょ、所長! これはもう試合を止めるべきじゃ!? 明らかに勝敗は決して――」
『今すぐ映像をレッド・ホークに向けろ!』
「レッド・ホークに!? なんで!?」
『早くしろ! 私の考えが正しければ、レッド・ホークが恐れている事が起きる!』
その言葉に三人が、司会者が映像を操作してレッド・ホークの元を映す。撃ち続けており、弾が無限に撃ち続けられている状況を見る。この映像に何があるのか? そう考えた。
その瞬間だった。
一個、また一個と、バルカンが破壊されている映像になるのを。それにはレッド・ホークの表情が辛そうになった。まるで嫌な予感が的中したかのように。
「はぁ!? え、え!?」
「…………いやいや、有り得ないわ、それ」
「な、何? 何が起きてるの!?」
司会者と女性スカウトだけが理解して、紀美代だけが理解していない。
「ちょっと司会者さん!! 何が起きているのか説明して!!」
「わぁっと揺らすなって!? ちょっと待ってろ!! これは司会者としての名誉の為に、絶対に探し出して見せるぜ!!」
そう言って映像を両手で色々と押したりずらしたり、拡大や縮小を繰り返したりしている。バルカンの弾が降り注ぐ映像の中を。
そして見つける。女性スカウトが指で居場所を指して。
「いた!!」
「!」
司会者がその映像を目の前にやり、人影が一瞬見えたのを確認して、その人影に人差し指で押して固定させる。そこには――、
「大我君!!」
大我が、バルカンの弾を打ち返している映像が流れている。それも笑顔で、楽しそうに




