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第十二章 とある日常

レッド・ホークは、次の対戦相手である白濱 大我を、ビジネスホテルにて女性スカウトから資料と共に話しを聞く。能力は明かされないのがルールらしい。が、こちらは問題なく二回戦まで勝利している。

 ただ、どういう勝利の仕方をしたのかだけは記載されているので、ある程度は予測できるかも知れないと考える。持ち武器も書いてあるが……。



             ▼▼▼


「一回戦は殺して、二回戦は生かしている。持ち武器は……鉄の棒?」

「えぇ。特に一回戦の殺しは、斬殺らしいわ。これは教えてもいい情報らしいから言っちゃうけど」


 女性スカウトは足を組み、手鏡を持ちながら化粧に抜かりが無いかチェックしている。ビジネスの服装をしているのに、何処か若々しい。髪の毛はポニーテールにしている、なんともチグハグなスカウトウーマンだなと、レッド・ホークは思う。


「レッド・ホーク。貴女の持ち武器も向こうには知られているから、そのつもりで」

「分かっているわ。けど、持ち武器が鉄の棒……。これは、ブラフって考えられるかしら」

「どうかしら。私は正直、一回戦も二回戦も興味がなかったから見てないしぃ。ただ、レッド・ホーク。貴女の強さなら知っている。勝つのも負けるのも貴女次第だけど、応援はしてるから」

「ありがとう。けど、12才の子供が殺人者?」

「えぇ。世も末だよねぇ~~。昔の日本でも中学生くらいの子供が小学生を殺した~~なんてのがあったらしいし。むしろ、そっちの国の方が多かったりしてる?」

「どうかしらね」


 レッド・ホークは自身の国を明かしていない。ただ、外国人という事だけを伝えて、殺し屋というのも控えめに伝えて、例の石の前まで行って、力を授かっただけ。今は使えないけどある場所では使える、局地的にしか使えない能力。けど、この能力が常に使えるのであれば……心強いなんてものじゃない。

 欠片があれば使えるとの事だから欲しいが、その欠片は全て、白鳥警備会社が保管している可能性が高い。いや、今はそれしか考えられない。全く、困った問題だなと考える。


「どこ出身なのよぉ~」

「英語が喋れる国よ?」

「それ、日本でもありえるじゃん。ったく。まぁ見立て、アメリカ人かしら?」


 正解。だけど、ここは愛想笑いで済まそう、と直ぐに考えて実行する。そしたら向こうが、はいはいと言いたそうにしていた。同じようなやりとりは短い期間だがそれなりにやったので、分かっているのだろう。

 ……正直、このミッションをこなせられるか不安ではある。この戦いで命を落とすかも知れないが、依頼だけはこなさなければならない。でなければ……、


「それよりも、この子にも、容赦なくやってもいいのかしら?」

「そうね。可哀想だけど、容赦なくっていいわ。あら、マニキュアが」


 鞄の中を見ていた女性スカウトが、マニキュアが見つからないと言っている。レッド・ホークは女性スカウトの後ろにある机を見る。そこに可愛らしいポーチが置いてある。


「後ろにあるわよ」

「え?」


 女性スカウトが振り返れば、ポーチがあるのを見つける。立ち上がりポーチの元へ行き、取る。


「そっかそっか。入ってきた時に携帯と一緒に取り出したんだっけ? ありがとう、レッド・ホーク」

「いえいえ。忘れっぽいんじゃないの~?」

「若年性ってやつ? 怖いわぁ~」


 ポーチと共に戻ってきて椅子に座り、こちらを見て来る。


「にしても、カウボーイみたいな恰好しているから、やっぱりアメリカ人なんじゃない?」

「日本人から見たら、一発で”アメリカ人だ!!”って分かる服装を着る事で、本当はアメリカ人じゃないってのを指しているかも知れないわよ?」

「まぁいいけどね。バイクは何処から調達したのかしら?」

「こっちに知り合いがいるのよ。その人から借りている……というか、貰ったのよ。ただ管理を任せているだけね」

「っそ。じゃあもし死んじゃったら、私が伝えてあげるから、遺言状にその人の住所を書いておいてよ」

「あら? 日本人は冷たい人種って聞いたけど違うのね?」

「最初だけと、リスペクトの気持ちがなければ冷たくなるだけよ。あとは~~、まぁ合理性がないとか? いろいろね、いろいろ」

「っそ。後で遺言状を書いておくわ」

「ありがと」


 そんな会話をしながら、レッド・ホークは大我の情報と写真を見る。


「(この子を見つける事が出来れば、少しは有利に進められるかしら? ちょっと、探してみようかな)」



            ▼▼



「みてみて、紀美代さん。この人、おっぱいデカいよ」

「……それ、私が小さいって言いたいのかしら? ってい」


 いつもの白嵜公園にて、既に用意されていた椅子に大我と紀美代が座り、情報に載っているレッド・ホークの写真を見て、正直な感想を言う大我と、それについてツッコむ紀美代。


「いったいなぁ」

「痛くないでしょ? 軽くやったんだから」

「分かってるよぉ~。にしても、この人は相手を殺してるんだねぇ。一回戦と二回戦ともに」

「持ち武器は……スナイパーライフル!? ちょっと危ないじゃない!」


 前回は持ち武器の項目には何もなかったが、今回は銃、相手を殺す道具だ。これには流石に、紀美代は驚いた。ただ大我は、ふぅ~~ん、と鼻で答えるだけ。


「これ、遠距離攻撃って事だよね?」

「え? あ、そうね……。コロシアムによっては場所を考えないといけないわね。そうそう、前の戦いでは映像を見ていたけど無茶苦茶に暴れていたわね」

「単純に、相手が武器を持ってない事に疑問だったんだよ。それに犯罪歴が盗みだから、それに起因する何かだと思って、殺す勢いでやったんだ。でも全部吸収というか盗まれたね、威力を。受け止められた時に、下に衝撃がいかなかったから分かったんだ」

「……そこまで考えての行動だったのね」

「僕は甲我お兄ちゃんみたいに馬鹿じゃないからね。ちゃんと考えてるよ」


 にぱっと笑う大我に、小さく笑う。ふと、二回戦で腕を蹴った後の映像が映し出されてなかったのを思い出した。


「そういえば、耕三さんを蹴った後、どこに行ってたの?」

「ん? あぁ、あれね。三階だよ。三階まで瓦礫を踏んだり、壊れた床を掴んで上ったんだ。そして真ん中へゆっくりとこれから何をしようかなって考えながら、二階に降りたんだ。多分確認の為に、二階に来るだろうなって」

「なんで二階に来るって分かったの?」

「単純に、瓦礫の量を確認するのに三階やら四階やら屋上には行かずに、二階から天上を見た方がいいでしょ? って考え。もし外れたとしても、階段から落として瓦礫の方に追いやってた。あの時はおじさんが注意深い人で助かったよ。一つやるべきことをやらなくて済んだんだからね」

「成程……。確かに私でも、二階から見ちゃうかも。けど、よく三階まで飛べたわね」

「今だけだよ。もう少し成長したら難しくなるかも~~」


 嫌だなぁ~~と言いながらテーブルに突っ伏す。こちらとしては、次の対戦相手が銃を使ってくるというのが怖い。ただ、向こうのスカウトマンに会いに行くのも気が引ける。そもそも、ルール違反にはならないのだろうかと考える。

 ……後で聞いてみようか。


「けど銃かぁ。また色々と可能性を考えないといけないのかぁ~~って感じ。銃で出来る事って考えられるけど……持ち武器がスナイパーライフルねぇ」


 大我は何かを考え始める。紀美代は、スナイパーライフルで得られる能力という部分を考えるが、銃で出来る事と言った大我の言葉に、紀美代は考える。絶対に当たる攻撃とか、威力が高い攻撃とか、砲弾みたいな弾を撃てるとか――考えるだけでも疲れる。

 紀美代は紅茶を一口飲み、ゆっくりと深呼吸をする。戦うのは紀美代ではなく、大我だ。お願いした身とは言え、死んでは欲しくない。いくら、人殺しだったとしても、だ。


「何の集まりかと思えば、大我か」

「あ。剣司お兄ちゃん」


 剣司お兄ちゃん? と頭に疑問を付けて振り返る。そこには、一人の男性が歩いてきている。不思議な格好をしている男性だ。

 黒いスーツに、黒いネクタイ、白いワイシャツという喪服を想像させる服にトレンチコートを羽織った男性、剣司。左手には――


「(あれって、日本刀?)」


 紀美代は、日本刀を持っている剣司を見つつ、少し慌てながら立ち上がる。


「始めまして。千波 紀美代と申します」

「白濱 剣司です。お話しは伺っています。どうやら、殺し合いのコロシアムにご参加されているんだとか」

「あ、はい。といっても死なない場合もありますが……。こんな小さい子供を巻き込みたくはなかったんですが……えっと」

「大丈夫です、甲我からも聞いています。最終的に決めたのは大我ですから、こちらからは何も言いませんよ。いや、本来なら言うべきなのか……。まぁいい」


 剣司が日本刀をテーブルの上に置き、大我が見ている紙を見る。


「ほう? 相手はスナイパーか、大我」

「うん。剣司お兄ちゃんならどうする?」

「そうだな。……近付いて斬る、しか出来ないな」

「剣司お兄ちゃんはねぇ~~。僕も色々と考えないと。ちょっと訓練してくれる? 多分、剣司お兄ちゃんの速度が役に立ちそう」

「いいぞ。こっちも今は仕事が休みだからな。今日と明日、明後日だけだが」

「よぅし!!」


 そう言って紙をテーブルに置き、鉄の棒を持って椅子から降りて少し離れる。紀美代は椅子に座り、剣司が何も持たずに大我と対峙する位置まで歩き、構える。日本刀はないが、まるで突くような構えをしている。


「それじゃ紀美代さん。合図お願い!」

「え? え?」


 突然任された事に少しだけ動揺するが、剣司は何も言わずに深呼吸をしている。紀美代は溜息と共に、ここの人達は不思議な人達という括りでは言い表せない集団だなと思いつつ、右腕を軽く上げて、


「よ~い、スタート!」


 右腕を下げた。



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