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#1 紅茶とティーカップ

この作品は、第四章で終わる予定なんですが、アドバイスやこうなって欲しい、という意見がありましたら、コメント欄で教えて下さい!

これは、雪の降り積もるころだった。山小屋の中は、ひどく冷めきっていて、薪ストーブを焚いても、窓には結露がついていた。


部屋の中は無駄に広く、窓から一筋の弱い光がかすかに二人の背中を撫でていた。部屋はもう何日も掃除をしていないようで、

歩けば、チリが舞い、ほこりがかすかに光の中を浮かび上がった。二人の中にはもう、会話という概念は残っていなかった。


でも、微かに、いやはっきりと見える運命の上を歩いているような感覚だけは確かにここにあった。結露で覆われ、もう何も外の景色を

うかがうこともできない、曇り切った窓を呆然と眺めながら、エレンはそっと口を開いた。


「紅茶、いるか?」


マフラーを巻いた、その人の瞳には何も映していなかった。しかし、その目は、何かを悟ったような、諦観した目をしていた。


ミカサはうつむく、マフラーがミカサの首を伝い、床に落ちかけるところで、慌てて、また、自分の首に巻きなおした。


「、、、いる。」


エレンは無言でティーカップの埃を拭き取り、慣れた手つきで、紅茶を入れる。


冷たい山小屋の中に、ほんのりと紅茶の香りが漂う。ミカサは、椅子に腰かけたまま、マフラーを強く握りしめたまま、じっと

床を眺めていた。視界の中に、エレンの靴が入る。そして、どんどん足音は近づいてきて、ミカサの目の前で止まった。


「ほらよ、、、。」


ミカサは、顔を上げる。ミカサの目が確かにエレンの瞳をとらえた。その瞳の奥は、何を考えているのかわからないような、不気味さと

何かにおびえる不安定さを感じた。コトッ、ミカサの目の前に紅茶が置かれた。エレンはミカサの向かい側に座る。


お互いそれこそ何を考えているかはわからなかったが、お互いに余裕がないことだけはわかった。


「こうやって、飲むのいつぶりだろうね」


ミカサは口を開いた。相手の名前を呼ぶのは震えるほど怖いので、会話の中に相手の名前が入ることはなくなった。


二人しかいない、寂しい山小屋の中で、二人は紅茶を目の前にして、止まっていた。


「飲まないのか?」


エレンが恐る恐る聞いてくる。目を細めて、ミカサの手元を追っている。カチッカチッ、時計だけが時を刻んでいる。


ミカサの手が、コップの取ってに向かう。ミカサの手は誰が見てもわかるくらいに、震えていた。二人の間に何か見えない


空気間のようなものがあった。太陽が顔を出したのだろうか、窓から入る光の面積がどんどん開いてゆく。二人の手元の中に、


光の中を漂う、塵が見える。ミカサの手がコップの取ってをつかんだ。と、その瞬間、ミカサの手が宙を舞った。コップは机からはじき出され、


パリーーン、と盛大な音が鳴り響いた。紅茶が床に散らばる。エレンは、微かに目を見開き、ミカサの真っ直ぐな瞳をとらえた。



ミカサは、エレンの目だけを見つめる。何か訴えるような、鋭いまなざしをエレンに向ける。沈黙が走る。



こんなことになるはずなかったのに、、、。




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