表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

白昼夢とシナリオ——✘✘✘✘✘、口が滑る

作者:夜明け前
雪深い山の奥。
エレンとミカサは、戦いを逃れたふたりきりで暮らしていた。
薪を割り、紅茶を淹れ、静かな時間を積み重ねる。
外界から隔絶された小屋の中で、二人はようやく“幸福”を手にしたように見えた。

けれど、奇妙なことがある。
ミカサが目を覚ますたび、同じ朝が繰り返されている。
同じ雪、同じ湯気、同じ言葉。
「おはよう、ミカサ」「おはよう、エレン」
その声のやりとりだけが、壊れた時計のように続いていく。

やがてミカサは気づく。
この山小屋は、**エレンが死の間際に思い描いた“記憶の牢獄”**だと。
彼の意識は、死の直前に「幸せな最後」を願ったまま凍りつき、
その中に“ミカサの像”を閉じ込めてしまった。

つまり、ここにいるミカサは現実の彼女ではない。
エレンの記憶が作った、彼女の“残響”だ。

それでも彼女は毎朝、同じように言う。
「おはよう、エレン」
それが、彼を救う唯一の祈りだから。

時間の輪が少しずつ歪みはじめる。
エレンは、何度目かの朝に、ふと涙を流す。
「……この日々は、夢なんだな」
ミカサは笑って頷く。
「うん。でも、もう少しだけ見ていたい夢だね」

外では雪が止み、光が差し込む。
エレンが目を閉じると、ミカサの姿がゆっくりと消えていく。
その手には、彼が遺したマフラー。


――春の風が吹いた。
ミカサは目を開け、冷たい墓石の前で微笑んでいた。

雪の小屋も、夢の記憶も、すべてはエレンの終わりを包む幻想だった。
だがミカサはまだ、彼の“夢の続き”を信じて生きている。
第一章 白日
#1  マーレの夜
2025/11/10 17:03
#2 正夢、逆夢
2025/11/10 17:06
#3 彼の背中
2025/11/10 17:07
#4 ティーカップ
2025/11/10 17:08
#5 いさな
2025/11/10 17:09
#6 白日
2025/11/10 17:10
第二章 白昼夢、逆夢
#2 ロストガールズ
2025/11/10 17:15
#3 カメレオン
2025/11/10 17:39
#4 森の露
2025/11/10 17:40
#6 白昼夢、幻
2025/11/10 17:42
#7 逆夢と居場所
2025/11/10 17:43
第三章 シナリオ
#1 紅茶とティーカップ
2025/11/10 17:45
#2 三酸化二ヒ素
2025/11/10 17:46
#3 強盗と花束
2025/11/10 17:46
#4 靴の花火
2025/11/10 17:47
#5 シナリオ
2025/11/10 17:47
第四章 来世
#1 前世と君
2025/11/10 17:51
#2 済んだ夜空の奥深く
2025/11/11 10:55
#3 思想犯、1984
2025/11/12 09:46
#4 アルジャーノン
2025/11/14 18:59
#5 仮面、嘘月と嘘つき
2025/11/16 11:31
#6 準透明少年
2025/11/16 14:45
#7 白昼夢とシナリオ
2025/11/24 15:10
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ