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悪役令嬢に転生した格闘家、再び最強を目指す  作者: 葛西渚
第2章 英雄の意志を継ぐ薔薇
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◆スカーレット②

 あれから、お父さんをマナ・スクリーンで見ることは少なくなり、家にいる日が多くなった。その日も、お父さんは家にいて、畜音魔道具から流れる音楽を聴いているだけ。何をしているのだろう、と声をかけた。



「何を聞いているの?」



 お父さんがいることが少しだけ嬉しくて、私は音楽に興味を持ったふりをした。すると、お父さんも嬉しそうに答えてくれる。



「これはね、お父さんが作る新しいグロリアス団体のテーマソングだよ」


「テーマソング?」


「そう。いつか、誰もがこの曲を聞けば、最強と言う言葉を連想するようになるんだ」



 私は意味が分からなかったが、何度も繰り返し、その曲を聴いた。ただ、さらに数か月が経ってっも、私は相変わらず男の子たちにイジメられてばかり。



「やっぱり、グロリアスターの娘は弱いよな!」


「ウソの戦いばかりだから、立ち向かう勇気もないんだろ?」



 いつも助けてくれるクレインは既に倒れていて、私は小突かれるのをただ耐えるだけだ。



「さて、帰るか」


「ちょっと待て!」



 男の子たちは笑いながら立ち去ろうとしたが、クレインが彼らを呼び止めた。顔に付いた泥を拭いながら、クレインは言う。



「今日、アイアン・ロックスが新しいグロリアス団体の立ち上げを発表する。そこで、アイアンがグロリアスこそ最強だって証明するから……絶対見ろよ!」



 男の子たちは笑う。



「馬鹿じゃねえの? グロリアスターなんて、フィスト・クラフトのパンチを避けられねえ雑魚だろうが。新しい団体なんて立ち上げても、何も変わらないよ!」



 今度こそ、男の子たちが立ち去って、私とクレインはとぼとぼと帰った。そして、クレインが言った、お父さんの新団体発表をマナ・スクリーンで見る。お父さんは仲間数人とスーツ姿で現れると、リングの中央で宣言するのだった。



「我々はまったく新しいグロリアス団体、AFGを立ち上げます。AFGはアルドール・ファイティング・グロリアスの略で、本物の戦いを皆さんに披露し、グロリアスターの強さを証明する団体です。真剣勝負と言うものが、どういうものなのか。皆さん、ぜひその目に焼き付けてください」



 そして、お父さんと一緒に聴いた、新しい団体のテーマソングが流れて、AFGの第一回大会が始まる。それは確かに、これまでのグロリアスと違った。誰もが相手の攻撃を待たなかったし、絶対に避けられるような大袈裟な技も、無駄に飛び跳ねることもない。展開も速いし、本気で殴っているようだから、誰かが死んじゃうんじゃないかと心配になった。



「パパ……大丈夫かしら?」



 お母さんすら、見ていて心配になったらしく、クッションをぎゅっと抱きしめていた。それくらい、真剣に戦っているように見えたのだろう。お父さんの出番は最後で、相手に何度も蹴られ、投げ飛ばされて、やっぱりダメなんだと思ったけど……。



「アイアン・バスター!!」



 お父さんは相手を捕まえると、思いっきり持ち上げて、マットの上に叩きつけた。相手が動かなくなって、裁定者がお父さんの勝ちを宣言する。戦いが終わって、私は心の底からほっとしたけど、クレインは興奮しているみたいだった。



「すごい、アイアンはとんでもないことを始めたぞ! この瞬間から、グロリアスの……いや、世界の常識は覆ったんだ!!」



 次の日から、すべてクレインの言う通りになった。AFGは毎日のようにニュースとなって、多くの人の話題になる。


 そして、何よりも大きな話題になった瞬間は、お父さんのフィスト・クラフトの覇者が戦ったときのことである。


 誰もが不利だと予測し、偽物が本物に勝てるわけがないと、騒ぎになった。私も不安になって、戦いの前日、お父さんを止めようと、勇気を出して言った。



「お父さん……どうしてこんな危険なことをするの? フィスト・クラフトに殴られたら、死んじゃうかもしれないんだよ?」



 戦う直前にこんなことを言われたら、多くの戦士はモチベーションが下がってしまう、と今なら分かる。しかし、彼は穏やかな笑みを浮かべた。



「そういうわけにはいかない。お父さんはね、たくさんのグロリアスファンのために戦わなければならないんだ。夢を抱かせた責任を取るためにも……やれるところまで、やらないといけないんだ」


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