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悪役令嬢に転生した格闘家、再び最強を目指す  作者: 葛西渚
第2章 英雄の意志を継ぐ薔薇
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強いぞ

 コハルがビクターと死闘を繰り広げていたころ、スコットとアーサーも最後の壁と対峙していた。



「イーリア、お前は剣士の方を。僕がスコット・ヒスクリフを相手する」


「承知しました」



 そう、クレインとイーリアである。まず、イーリアはクレインの指示に従い、アーサーを牽制する。クレインの方は、ただ道を塞ぐようにスコットの前に立ちはだかるのだった。



「ジュリアとエドガーは離れているように。後方の注意だけは怠らないでくれ」


「分かりましたわ」


「スコットさん、頑張って!」



 ジュリアとエドガーが距離を取るが、彼らは積極的に追うようなことはなかった。



「……俺を殺しに来たか、イーリア」


 アーサーの問いかけに、イーリアは黙っていた。


「君が敵と知ったときはショックだったが、それも仕方がないな。さぁ、始めようじゃないか」



 腰に下げた剣の柄を握るアーサー。しかし、それを抜く様子はなかった。イーリアは魔法の杖を取り出すと、彼女の背後に巨大な氷晶らしきものが複数浮かび上がった。氷属性の魔法を放つ前触れのようらしい。



「死になさい、アーサー・グリムウッド!」


 すべての氷晶が巨大な氷柱に変化したかと思うと、矢のように放たれ、一斉にアーサーを襲う。


「これは……かなりまずい!!」



 アーサーは後ろに飛び去るが、上手くステップが踏めなかったのか、そのままひっくり返ってしまう。



「アーサー!!」


 倒れた親友を貫こうと、空中に発生する巨大な氷柱を見て思わず声を上げるスコット。


「えーい、容赦がない!!」



 アーサーは仰向けに倒れていたが、素早く体を返して、虫のように地を這いながら、氷柱の落下から免れる。大地に突き刺さる氷柱を見る限り、直撃していたら胴に大きな穴が空いていただろう。



「ふぅ、危なかった」



 立ち上がり、服に付いた汚れを払いながら、イーリアは忌々しげに眉を寄せた。



「あのときの強さはなんだったわけ? 本当に弱いじゃない」


「説明した通りさ。俺は良い女に応援されなくては、剣が振るえない体でね」


「ふざけるんじゃないわよ!」


「ふざけてなど……うわっ!?」



 襲い掛かる氷魔法を躱したかと思えば、目の前に現れたイーリアに蹴り付けられ、ぶっ倒れたアーサーは後方へごろごろと転がった。そのあと、地面に突き刺さったままの氷柱に頭を打って「ほげぇ」と情けない声を上げる。そんな調子を見てスコットは額を手で押さえた。



「やっぱり、ダメだったかぁ……!!」


 それでも、アーサーは焦った様子もなく、ゆっくりと立ち上がった。


「逃げ回るな、この雑魚剣士! とっとと死になさい!」



 イーリアはどこか苛立ったように、氷晶を自らの周囲に展開するが、アーサーはやはり落ち着いた様子で、指を一本立てて見せた。



「その前に、一つ聞きたいことがある」


「……答えるものか。死ね!」


「うわっ!!」



 アーサーを追い掛け回すように、氷柱が連続で放たれる。だが、アーサーもしぶとく逃げ回りながら、叫ぶのだった。



「イーリア、なぜ戦う! それを教えてくれ!!」


「デュオフィラ選抜戦に勝ち上がるため。他に理由があるか!!」


「いや、命がけの戦いだからこそ理由があるはず。教えてくれないか!?」


「だったとしても、敵のお前には関係ない!!」



 アーサーの逃げ道を塞ぐように、彼の目の前に巨大な氷の壁が発生する。急停止できず、壁にぶち当たって、すっ転ぶアーサーだったが、仰いだ天に巨大な氷柱を見た。



「なんの!」



 ごろごろと地面に転がってやり過ごすが、どんどん氷柱はアーサーを襲う。



「待て、イーリア。やつは魔力切れを狙っているかもしれないぞ」


「は、はい!」



 クレインの指示に攻撃を止めるイーリア。その間に、アーサーは立ち上がると、爽やかな笑みを浮かべながら乱れた髪を整えるのだった。



「ならば、君が戦う理由……この俺が当ててみせようか?」


「……何を言っている?」



 動揺なのか、イーリアの視線がわずかに動く。それを、アーサーは見逃さなかった。



「愛する男のため、違うか?」



 小さく肩を震わせたイーリアを見て、アーサーは人差し指を彼女に向け、それをゆっくりとクレインの方へ。その意味を、この場にいる全員が理解したことだろう。当のクレインに関しては、やや驚いたものの、表情には出さないよう努めているようだった。



「男のためなら、命をかけてスパイもやる。なかなか泣かせるじゃないか」



 押し黙るイーリアに、アーサーは言うのだった。


「イーリア……君は良い女だ」


 呟くようなアーサーの声は、イーリアの耳に届いただろうか。



「私が戦う理由なんて、どうでもいい! 私と戦え、アーサー・グリムウッド!!」



 巨大な氷柱が放たれた。が、それはアーサーに到達する直前で、真っ二つに割れている。音を立てて氷柱が地に落ちる向こうで、アーサーがいつの間にか剣を抜いていた。



「私と戦え、か……」


 そして、アーサーは剣の切っ先を驚愕の表情に固まるイーリアへ向ける。


「良い女から戦うよう頼まれた俺は……強いぞ?」

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― 新着の感想 ―
本当にバトルシーンがバラエティ豊かで飽きない! 前のコハルvsビクターも、針や毒など様々な小道具が出てきて驚いたけど、こちらは全然違う雰囲気でアーサーらしさが際立っていて面白いです。普通のバトルシーン…
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