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悪役令嬢に転生した格闘家、再び最強を目指す  作者: 葛西渚
第2章 英雄の意志を継ぐ薔薇
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待ち受ける敵

 そして、プロヴィデンス当日の朝。スコットたちは余裕をもって出発の準備を済ませた。


「よし、行こう!」


 スコットの声にその場にいた全員が頷いた。メンバーはスコットのほかにアーサー、コハル、ジュリア、そしてエドガーである。



 ファリスがいれば、敵の接近を早々に察知できるかもしれないが、彼女の魔法は消耗が激しいという問題点もある。いつ現れるか分からない敵に対し、ずっと魔法を使い続けて、倒れてしまうことがあれば、今度は彼女を守らなくてはならないため、待機すべきと言う結論に至った。



「……やはり、トライアンフ学園側の戦力は限られているようだな」



 屋敷を出ると、数名の男女が倒れていた。恐らくは朝方の襲撃を狙ったのだろうが、セシリアのセキュリティ引っかかったらしい。スコットの言葉にアーサーが同意した。



「昨日の夜に比べると数が少ないな。わずかな希望に縋って、なけなしの戦力を投下した……という印象すら受ける」


「そう思わせるためのブラフでなければいいが……」



 シャドーボクシングで体を温めながら、ジュリアが言う。



「どっちにしても、コハルとお二人がいれば、わたくしたちは安心ですわ。ねぇ?」



 同意を求められたのはエドガーである。しかし、彼はどういった表情を見せればいいのか分からなかったらしく、曖昧に頷くだけで、これにはジュリアも複雑な笑顔を浮かべるのだった。気まずい雰囲気を消すためにも、スコットが黙って歩くコハルに話題を振る。



「それにしても、シラヌイ殿。今日は前回よりの装備が増えた……ように感じるのですが」



 コハルは背中にパウダーカノンを二丁、ナイフを二本、腰にカタナを一振り、さらには反対側の腰にポーチを下げていた。



「それほどまでに相手は強敵なのですか?」



 スコットの質問にコハルは答えず、目を伏せたように、淡々と歩を進めるだけだ。気まずい空気をどうにかするつもりが、余計に微妙なものになってしまう。



「先輩、申し訳ございません。コハルは今、集中力を研ぎ澄ませているところなので、代わりにわたくしがお答えします」



 ジュリアの視線がやや鋭いものになった。



「ええ、敵はかなり危険な人物のようです。コハルがここまで気持ちを抑え込まなければならないなんて……わたくしも信じられないですわ」


「そ、そうか……」



 スコットはコハルがどれだけ強いか理解しているつもりだ。だから、彼女が瀬戸際の戦いを強いられるような相手が存在するとは思えなかったが、ジュリアが言うのだから間違いないのだろう。



「さて、このまま問題なく学園に辿り着ければ、開会式の一時間前には到着する。だとしたら、既に裁定者たちも会場入りしているはずだが……」



 裁定者が会場入りしていれば、参加者たちの身の安全は確保される。時間通りに学園に辿り着けさえすれば、後はジュリアにすべてを託すのみだが、トライアンフ学園側による襲撃の気配は見られなかった。市街地に入ったころ、スコットが呟く。



「このまま、何事もなく到着するのだろうか」


「そう願いたいところですわね」



 ジュリアも不安なのか、少し落ち着きがないように思えた。もし、市街地を抜けられたら、後は学園につながる緩やかな山道を進むだけ。順調に進むかと思われたが……市街地も半分は過ぎたであろう地点で、コハルが足を止めた。



「お嬢様」


 振り返るジュリアにコハルは一礼する。


「しばらく、お嬢様の護衛から離れます」



 ついにそのときがきたのだ。警戒心を高め、周囲の気配を探るスコットだが、彼には何も感じられなかった。混乱するスコットだが、ジュリアは笑顔でコハルの離脱を後押しする。



「ええ、許します。しかし……先日交わした約束は、必ず守るのですよ」


「…………」



 コハルは「守る」とは言わなかった。頷くこともない。ただ、微笑みを浮かべると、学園とは別の方向へ駆け出してしまった。



「彼女らしくない。そう思うのは……僕だけか?」


 その問いに、ジュリアは小さく頷いた。


「いつもの彼女です。いつもの彼女であれば……誰にも負けませんわ」



 スコットはジュリアが信じるコハルを信じるしかなかった。市街地を抜けるころ、どこからか爆発音が聞こえ、スコットは振り返る。コハルに何かあったのではないか、と。しかし、ジュリアは一瞥することもなく、前へ進んだ。



「スコット、行こう」



 アーサーに促され、スコットも頷く。そして、山道を進んであと少しで学園も見えてくるだろうところで、ついに彼らが現れた。



「……クレインとイーリア。やはり、ここで待ち受けていたか」



 クレインとイーリアは道を阻むように、立っている。その目からは、何をしてもこの道は進ませない、という覚悟が見られるのだった。

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