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悪役令嬢に転生した格闘家、再び最強を目指す  作者: 葛西渚
第2章 英雄の意志を継ぐ薔薇
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英雄の帰還

 民家の屋根に立ち、戦場を見下ろすスコットたちを見て、ジュリアもアーサーもほっと息を吐く。が、仲間であるはずのコハルから放たれる異様な気迫に、ジュリアは顔をこわばらせるのだった。



「お嬢様、お待たせしました。ここからはすべてコハルにお任せください」



 ふわり、と屋根から飛び降り、ジュリアの傍らに着地するコハルだったが、ドンッと地を蹴って敵陣へ一気に突っ込む。そこからは、悲鳴が響き、血の赤が撒き散らされた。もちろん、コハルの活躍だけではない。



「お兄様、左斜め前方に敵が隠れています」


「よくやった、ファリス。風の斬撃エアリアル・スラッシュ!」



 路地に隠れていた敵にスコットが魔法を放つ。二人の援護によって、コハルの強さがさらに際立ち、しまいには敵は一人残らず逃げ出すのであった。



「助かりましたわ、スコット先輩」



 一段落ついてジュリアはスコットに頭を下げる。



「いや、遅くなってすまなかった。だが、シラヌイ殿と合流できたおかげで、優位に戦えたからよかったよ」


「ええ、そうですね。コハル、よくやってくれました」


「……とんでもございません、お嬢様」



 上品なお辞儀を見せるコハルだったが、ジュリアは彼女の振る舞いに違和感を覚えたのか、少しだけ眉を寄せて訊ねた。



「コハル……何かありましたの? 珍しく怪我もあるようですが」


「……いえ、何も。怪我も護衛に影響するものではありませんから」



 二人のやり取りに心の中で首を傾げるスコットだったが、隣に立つアーサーは別のところに関心を向けていたようだった。



「さて、君たちはどうするつもりだ?」



 アーサーの問いかけは、スカーレットとイーリアに向けられたものだった。スコットはイーリアがいることに驚いたようだったが、手にしたナイフとスカーレットを守るような立ち位置にすべてを悟ったらしい。アーサーは言う。



「俺たちはここでやり合うつもりはないが……この通り、君たちに勝ち目はないと思うぞ?」


「スーカーレット殿、クレイン様のところへ戻りましょう」


「……そうだね。でも、その前に」



 スカーレットは敵であるスコットたちを前にしても、襲われる恐怖など少しも感じていないのか、堂々とエドガーの前に立った。



「エドガーくん。私はプロヴィデンスで最高の戦いを見せる。だから、応援してくれるかい?」


「……当然だよ! アイアンが最強だって、世界中に分からせてやってよ!」


「うん。君が……君たちが応援してくれるから、私は頑張れる。最強を証明できる」



 スカーレットは、エドガーの頭に置いて微笑みを見せる。



「そして、絶対に勝つ! 私のグロリアスを……見ていろよ!!」


「うん!」



 二人が頷き合った後、スカーレットはゆっくりとジュリアの方に向いた。その目は闘志に満ちている。誰であろうが、前に立つ者は叩き潰す、というロゼスの目だ。



「おい、お嬢様」


「なんでしょうか?」



 それを受けるジュリアも同様に不敵な笑みを浮かべていた。



「てめえ、さっき……私を。いや、グロリアスのことを本当の戦いを知らないショーだけの腰抜けと言ったな?」


「ええ、言いましたわ。震えている貴方があまりに情けなかったので、仕方ないでしょう?」


「確かに、あのときの私は情けなかった。だが今は違う。分かるな?」



 頷くジュリアにスカーレットは宣言する。



「プロヴィデンスでは、グロリアスが最強であることをお前に分からせてやる。腰抜けと言ったことを後悔させてやるから……楽しみにしておけよ」


「ええ。ええ、ええ。とても楽しみですわ。誇り高きグロリアスターの魂を打ち砕いてこそ、ロゼスとしての格が上がるというもの。私も最高のコンディションを整えて挑ませていただきます」



 二人が詰め寄るように向き合う。この場で、戦いが始まるのではないか、という距離にイーリアは引き止めようと一歩前に出たが、アーサーが遮る。


 実際、二人は殴り出すわけではなく、ただお互いの拳をコツンッと合わせて離れるのだった。



「アイアン!」


 立ち去ろうとするスカーレットをエドガーが止めた。


「これ、忘れているよ」



 それは、彼女が放り投げたメガネだった。彼女が放り投げたときの衝撃のせいか、亀裂が走っている。それを目にしたスカーレットは、再び微笑んでエドガーに言うのだった。



「やるよ。私にはもう……必要のないものだからな」


「……うん! 一生の宝物にするよ!」



 スカーレットは力強く頷くと、今度こそイーリアと共に立ち去って行く。その後、カーライル家が放つ刺客は現れなかった。どうやら、多くの戦力を失ったため、グレイヴンヒース領でエドガーの命を奪うのは不可能と判断したらしい。


 プロヴィデンスまで、残すは五日。残す敵は、トライアンフ学園の面々のみとなった。

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― 新着の感想 ―
スカーレット覚醒…!エドガー目線で応援しました!でも、彼女がジュリアと闘うんですよね?敵の好感度を最高に上げといて主人公と対決させるなんて、やはり作者は鬼畜……!!
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