アーサーの直感
「敵は二人か……」
アーサーは敵の数を確認した後、いまだに大きい体を縮こまらせたスカーレットを見る。
「今ならファンの期待に応えられるかもしれんぞ? どうする?」
そんな問いかけにも、スカーレットは反応しない。アーサーは笑みと同時に一息吐きながら、腰に下ろした剣に触れた。
「仕方ない。どうやら、グリムウッドの剣を見せるときがきたようだ。イーリア」
「はい!」
反射的に返事するイーリアの愛らしさに目を細めながら、アーサーは注文する。
「君がいれば、俺も戦えるはず。何か声をかけてくれないだろうか」
「声を、ですか?」
「ああ、つまり……応援してくれ」
「もちろんです、アーサー先輩。頑張ってくださいね! 私も魔法で援護しますから」
満足そうに頷くアーサー。剣の柄を握り締め、外へ出ようとするが……。
「どうしたのです??」
いつまでも動かないアーサーに、イーリアは首を傾げた。
「いや、なんだか妙な感じがするんだ」
「妙な感じ?? あ、敵がきてしまいますよ!?」
「気にしている暇はない、か。アーサー・グリムウッド、出る!」
勢いよく空き家から出ていくアーサー。彼の剣技が敵を打ち払うと思われたが……。
「せいやっ!!」
敵の一人が突然前飲めるに倒れる。どうやら、アーサーではない何もかが、背後から不意打ちを仕掛けたらしい。もう一人の敵も振り返るが、少し遅かった。
「もう一丁!!」
さらなる不意打ちによって倒れる敵。結局、アーサーが剣を振るうことはなかった。そして、突然現れた援軍は……。
「ジュリア嬢!」
「やはり、アーサー先輩でしたか。運よく合流できましたわね!」
別でエドガーを探していたジュリアだったが、偶然合流できたらしい。ただ、彼女と一緒にいるはずのコハルの姿がなかった。
「シラヌイ殿は?」
「トラブルで別行動です。スコット先輩は??」
「スコットも別行動だ。が、エドガーは確保したところだ。ただ、敵の襲撃が続いてな。どうすべきか、迷っていたところだ」
ジュリアは空き巣の中を確認する。
「あの派手な頭は……まさか、アイアン・スカーレットですか??」
アーサーが頷いて肯定するが、ジュリアは混乱したようだった。
「どういうことです?? 彼女がいれば、あの程度の敵は撃破できたはず。逃げ回らないで、会場に戻ればよかったのに」
「それがだな……」
アーサーはスカーレットのメンタルについて説明すると、ジュリアは珍しく嫌悪感を見せた。
「はぁ? 怖くて動けない、ですか??」
やや挑発的な響きが含まれているが、それでもスカーレットは動かない。そんな彼女にジュリアは容赦なかった。
「どんなに怖くても、敵に立ち向かうのが戦士と言うもの。それがファンの前ですら強がれないなんて、グロリアスターとしての誇りはないのでしょうか?」
やはり動かないスカーレットにジュリアは呆れたように肩をすくめるのだが、すぐに鋭い表情を取り戻す。
「アーサー先輩、まだ安心できる状況ではないようですね」
「ああ、これは参ったな……」
どうやら、敵は先程の二人だけではなかったらしく、いつの間にか空き家は男たちに囲まれていた。
「あの、アーサー先輩。先程から気になっていたのですが、そこにいるのは例の女性では?」
「ん? ああ、イーリアのことか」
「彼女がいる、ということは……先輩は全力を出せる、という認識で間違いありませんか?」
「……いや、それがだな」
何かを言い聞かせるアーサーだったが、何かを察知したように、急に俊敏な動きを見せた。ジュリアの背後に向かって、手を伸ばしたのである。
「やはり、トライアンフ学園側の人間だったか」
アーサーがジュリアの背後に向かって問いかける。何があったのか、とジュリアが振り返ると、そこには……イーリアが立っていた。しかも、彼女の手にはナイフが握られているではないか。
どうやら、背後からジュリアの命を狙おうとしていたらしい。
「な、なぜ……分かった?」
完璧なタイミングによる一刺しを見抜いたアーサーに驚愕した様子のイーリア。それに対し、アーサーはほのかに微笑むのだった。
「理由はたった一つ。君に応援されても、俺は全力で剣を振るうことができなかった。……それだけさ」




