二人を探せ!
スコットは会場を一周した後、元の場所に戻ってきた。
「ダメだ、どこにもいない!」
「こちらも見当たりませんでしたわ……」
ジュリアとコハルも校舎の方を探してくれたが、エドガーを見つけることはできなかったようだ。
「どうする? エドガーに何かあれば、カーライル家と関係が悪くなってしまうぞ」
アーサーの言う通りである。ただでさえ、ギリギリの状態でデュオフィラ選抜戦に挑んでいるのに、カーライル家の恨みを買うようなことがあれば、より道は困難になってしまうだろう。
「こうなったら……」
しかし、スコットには秘策がある。それを全員に共有しようと思った、そのときだった。
「やってくれたな、スコット・クリストフ!」
スコットたちに詰め寄ってくる人物が。それは数名の男を引き連れた、スカーレットの擁立者、クレイン・ヴォルカだった。
「クレイン殿、どうされたのか?」
何やら凄まじい怒気をまとっているため、混乱するスコットだったが、クレインはそのままの剣幕で目の前に立った。
「どうされたのか、だと? 白々しいやつだ。まさか、子どもを使ってスカーレットを襲われせるとは、見損なったぞ!!」
「子どもを??」
「しかも、憩いの場として提供されている学生寮で攻撃を仕掛けてくるなんて、どこまでも卑劣なやつだ!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
子ども、というワードに嫌な予感を覚えながら、スコットは確認する。
「それで、スカーレット殿はどうなったんですか??」
「まだとぼけるか! 貴様の手先である子どもが手を引いて、街の方へ逃げ去ったという報告は聞いているぞ。彼女をどこにやった? どうするつもりだ!!」
「待ってくれ。本当に我々は何も……!!」
何もしていない、とは言い切れなかった。なぜなら、クレインの言う子どもが、エドガーであることは否定できないからだ。クレインは視線にさらなる殺気を込めて言う。
「裁定者の目があるところで争えば失格の恐れがあるが、俺はここで貴様らを皆殺しにしてやりたい気持ちでいっぱいだ。だが、すぐにスカーレットの居場所を教えれば、退いてやる。さぁ、どうする!」
「信じてもらえないだろうが、何も知らないんだ……!!」
スコットの訴えが、グレインにどれだけ響いただろうか。彼は瞳の中で怒りの炎を揺らしながらも、これ以上の問答は意味がないと判断したらしい。
「いいだろう。そっちがその気ならば、我々も血が流れることを厭わない。お前のロゼスも引き裂いてやる!!」
一瞬だけ、クレインはジュリアを見たようだったが、すぐに背を向けて立ち去ってしまった。重たい空気から開放され、真っ先にアーサーが口を開く。
「子ども……というのは、エドガーで間違いないだろうな」
「ああ、そうだろう。だけど、彼にスカーレットを襲撃する理由はあるのか??」
二人は考え込むが、すぐに答えは見つかった。
「まさか、狙われているのはスカーレットではなく、エドガーか?」
「ふむ。スカーレット嬢は巻き込まれた、と考えた方が良いかもしれないな」
「どういうことですの??」
事情を掴めないジュリアに、二人は説明する。エドガーが後継ぎの問題で叔父から命を狙われていることを。
「なるほど。恐らくですが、アイアン・スカーレットはファンを助けるため、逃亡を手助けしたことになりますね」
「うむ……。だとしたら、なぜクレインの保護を真っ先に受けなかったのだろうか?」
「グロリアスターはヒーロー性が命ですからね。かっこつけたかったのでしょう」
「そういうものか……?」
理解はできないが、やるべきことは決まっている。
「とにかく、エドガーがスカーレットと一緒に街の方へ向かったのは確実と考えていいはず。引き続き二手に分かれて、彼を探そう!」
スコットとアーサーは街の東側を、ジュリアとコハルは西側を捜索することになった。
「そうだ、アーサー」
さっそく街の方へ向かうはずだったスコットが足を止める。
「どうした? 早くエドガーを保護しなければならないのだろう?」
「いや、無暗に探すよりもいい方法があると思い出したんだ。できれば、彼女を巻き込みたくはないが……」
スコットの言う彼女が何者か、アーサーはすぐに察したようだ。
「なるほど、ファリスか」
スコットは頷く。
「アーサー、先に行ってくれ。僕はファリスに協力を頼んでくる」
「ああ、任せておけ」
二人は別々の方向へ歩き出すのだった。




