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期待できるのか?

プロヴィデンスの相手が決まった初日。昼食の時間にひと悶着あったものの、特に襲撃があるわけでもなく、スコットたちは無事に屋敷へ戻ってきた。


「さて、今後の方針だが……大きくは変わらない」


夕食の後、今後について話し合うことになった。まずはスコットが説明する。



「最も危険な時間である登校中は、できるだけ全員一緒に行動だ。放課後はすぐに門の前に集合。シラヌイ殿が迎えに来るまで、勝手に動かないように」



真っ先に不満を挙げたのはファリスだった。



「はぁ。また窮屈な日々が始まるのですね。こんなことになる前は、登校もお兄様と二人きりだったのに」


「いや、ファリス。俺もいたのだがな」



アーサーの指摘に反応せず、ファリスは兄の腕に絡みつく。



「お兄様、いつになったらあの頃に戻れるのですか? ファリスは毎日つらくてつらくて」


「それは説明しただろう。あまり僕を困らせるな」


「そうですよ、ファリスさん」



ジュリアが笑顔で窘める。


「つらいのは分かりますが、貴方のお兄様の夢を叶えるためです。皆で協力して乗り切りましょう」


ファリスは苦笑いを浮かべながらも鋭い目で応える。明らかに「お前には言われたくない」という気持ちが見えるが、当のジュリアは実の妹を愛でるように笑顔で頷くのだった。



「しかし、前回に比べると敵は悠長ですね」


今度はコハルが指摘する。


「前回は間髪入れず、何度も襲撃がありました。もちろん、大した敵ではありませんでしたが、今回は静かすぎるというか。それは逆に不気味と言えますね」



この疑問にスコットは頷く。



「アルバートは、グレイヴンヒース領に大きな影響を持つハイ・アリストスでしたから。情けない話ですが、ヒスクリフ家よりも動かせる兵の数も多かった。いわば地の利を活かして存分に戦っていたのです。しかし、今回の相手は領外からやってくる」


「つまり、自ずと動かせる兵の数は限られてくる、ということだな」



謳うように補足したのはアーサーである。いつも以上に上機嫌なアーサーを訝しがりながらも、今度はジュリアが言う。



「だとしたら、今回はプロヴィデンスまでは余裕と考えてよろしいのでしょうか? あくまでホームはこちら。アウェーの相手側よりも有利に進められる、と」


「もちろんだ、と言いたいが……」



スコットは頭痛を覚えたかのように額に手の平を当てる。



「僕はホームの環境を存分に活かしきれない。それに、相手側も数を用意できない分、質で勝負してくる恐れも考えられる」


「なるほど。確かに、わたくしも逆の立場であれば百の兵を引き連れるよりは、コハル一人の方が確実と考えますわ。向こうも、そういった手合いを準備すると考えられますわね」


「どちらにしても、やることは同じさ」



そう言って立ち上がったのはアーサーだ。



「誰が相手であろうが、どれだけの数を用意しようが、グリムウッドの剣は無敵。必ずや君たちを守ってみせよう。で、作戦会議は以上かな?」


「う、うむ。そうだな。夜も遅いし、解散とするか」



真っ先に立ち去るアーサーを目で追ったあと、ジュリアはスコットに耳打ちする。



「あの、アーサー先輩……どうしたのでしょうか? なんかいつもより余裕があるというか、悪く言えば地に足が付いていないような」


「ああ、そのことなら安心してくれ」



スコットは喜び半分、期待半分に答える。



「実はアーサーのやつ、彼女ができそうなんだ」


「彼女??」


「そう。アーサーは彼女がいれば安定して強い。いや、百人力と言っていいだろう。前回よりも安心して背を預けられるかもしれないぞ」



朗報を伝えたつもりなのだが、なぜかジュリアは子どもから答えにくい質問があったような表情で固まってしまう。



「ど、どうしたんだ?」


「……ちなみに、アーサー先輩のその辺りの勝率って、どれくらいなのでしょうか?」



スコットはしばらく黙って過去を振り返るが、ジュリアを安心させられるような言葉が出てこなかった……。



「あの、スコットさん」



スコットが固まっていると、話し合いが終わるタイミングを見計らっていたと思われるエドガーが声をかけてきた。



「どうしたんだい、エドガー」


「……大変なときだと分かってはいるのですが、一つお願いがあるのです」



これは厄介ごとに発展しそうだ。そんなスコットの予感はやはり的中するのである。


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