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トーナメント抽選会

 中庭は多くの人で賑わっていた。多くは新たなデュオフィラ誕生を国中に発信するため訪れた報道陣だが、ロゼスを中心とした学園の代表たちは放つ気配が違う。彼女らは今にも爆発しそうな魔力の渦のようなのだ。


 ライバルが……いや、人生を奪い合う相手が集まっているのだから、殺伐とした空気になるのも仕方ないだろう。ただ、エドガーは純真な喜びから興奮しているようだった。



「あ! アイアン・スカーレット」



 さっそく、お目当てのロゼスを見つけ、駆け寄ろするが、素早くアーサーが制止した。



「下手に近付かない方がいい。不審者と判断されたら、大変なことになるからな」


「す、すみません。でも……!!」



 エドガーはもっと間近でアイアン・スカーレットを見たいらしい。そんなアイアン・スカーレットがどのようなロゼスなのか、スコットも一目見てみようと思った。



「す、すごい筋肉だな。そして、派手だ」



 アイアン・スカーレットはツインテールの髪を右側は赤に、左側は青に染めていた。そして、何よりも盛り上がった筋肉が凄まじいパワーを感じさせる。まさに、グロリアスターといったスタイルではないか。ただ、そんな印象を忘れさせるくらい、その姿は美しく、表情も凛としたものがあった。


「あの見た目で、どんどん悪役グロリアスターをぶん投げるらしい。人気も頷けるな」


 アーサーの補足にスコットはが自然と頷くと、ジュリアが「ほう」と呟いた。



「グロリアスターということは、プロレスラーですね。なるほどなるほど。スコット先輩は、あれくらい筋肉質な方が好みでしょうか。わたくしも、もう少し筋トレに力を入れるべきです?」


「僕の好みは関係ない! ただ、あれだけ強そうなロゼスが相手になってしまったら、君もパワー負けしてしまうじゃないかって心配しただけだ」


「確かにパワーでは勝てませんね。しかし、スピードは各段にわたくしが上ですから、問題ありませんわ」


「だと良いが……」



 そんなやり取りをしていると、再びマイクにるアナウンスがあった。


『それでは抽選を行うので、ロゼスの皆様は壇上までお越しください』


 さっそく抽選が始まるらしい。スコットとジュリアは頷き合う。



「では、行ってまいります」


「ああ、他のロゼスに気圧されないようにね」


「もちろんですわ」



 壇上に八人のロゼスが並ぶ。進行するスタッフの説明によると、ロゼスたちは中央に置かれた箱から順々に番号が書かれたカラーボールを取り出すらしい。そして、一番と二番が、三番と四番が……といった形でプロヴィデンスの相手が決まるようだが、ジュリアは開催領のロゼスと言うこともあり、順番は最後のようだった。カメラのシャッター音とフラッシュが光る中、順々に組み合わせが決定し、ついにエドガーが注目するアイアン・スカーレットの順番が回ってきた。



「きた、アイアン・スカーレット!」



 拳を握りながら立ち上がる彼を見て、スコットは「大人びているようだが、やはり子どもらしいな」と少しだけ笑みを零した。一方、壇上ではアイアン・スカーレットが一歩前に出て、ギャラリーから飛んでくる声援に応えるごとく、両腕の上腕二頭筋を強調するポーズを取っている。



『アイアン・スカーレットさんはアルドール領で大人気のグロリアスターでしたね。第一トーナメントでは、どのような相手をお望みですか??』



 スタッフが訊ねると、スカーレットは彼女が手にしていたマイクをもぎ取って答えた。



『グロリアスは最強だ。ゆえにグロリアスターである私が最強! このトーナメント、誰が相手であろうと構わない。なぜなら! 地上最強の戦士、グロリアスターである私が勝つからだ!!』



 同じようなセリフを繰り返しているだけのようでもあったが、その強気なマイクパフォーマンスに会場も沸き、エドガーも嬉しそうに「アイアーン!」と声援を送っている。スコットもこの空気に「ジュリアは勝てるのだろうか」という不安を覚えずにいられなかった。



『物凄い気迫ですね! では、アイアン・スカーレットさん。クジを引いてください!』


 スタッフに促され、スカーレットが箱の中に手を突っ込む。


「私の相手は……こいつだぁぁぁーーー!!」



 叫びながら引き抜いた手に握られるカラーボール。そこには……。



『はい、七番ですね! ではアイアン・スカーレットさんは七番にお座りください』



 スカーレットは後ろに並ぶ、トーナメント表が書かれたセットの前に置かれた椅子に座る。その後ろには七番と大きく書かれ、プロヴィデンスの相手となる八番の席にはまだ誰も座っていない。



「スコットさん! スカーレットの相手はどんなロゼスになるのでしょうか!? 誰が相手であろうと、彼女の言う通り、彼女が勝ちますよね??」


「ははっ、そうかもな」



 話を合わせつつ、この辺りからスコットの不安は膨らみ始める。次のロゼスがクジを引いても、スカーレットの相手は決まらない。このままだと、彼女の相手はジュリアになってしまうのではないか……。そして、その瞬間は来た。



『と、言うことで、残る番号は八番のみとなりましたが……開催地であるヒスクリフ学園の代表、ジュリア・コウヅキさん。クジをお願いします』


「承知しました!! わたしくしも相手が誰であろうとぶっ飛ばすのみ。さてさて、その対戦相手は、どなたかしら!」



 勢いよく前に出て、箱の中からボールを取り出すジュリア。もちろん、そこには八番の文字が。スタッフは明るい声で言う。



『決まりました! 第一トーナメント、最後のプロヴィデンスは、大人気グロリアスターのアイアン・スカーレットと開催地を代表するロゼス、ジュリア・コウヅキさんです!! まさに、開催地であるAブロックの最終プロヴィデンスに相応しい組み合わせと言えるでしょう!!』



 スコットは壇上に目を向けていたが、気まずくてエドガーの方に目を向けられそうにない。ただ、エドガーからは強い眼差しを感じ、余計に目のやりどころに困ってしまうのであった。

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