対戦相手は、もしかして?
「どうして、こんなところに??」
当然の質問をアーサーが投げかけると、イーリアは恥ずかしいのか頬を赤らめながら答えた。
「私、このすぐ近くに住んでいて……毎日この辺りで朝の魔法練習を続けているんです」
アーサー曰く、敵の襲撃を受ける最中、影から様子を窺っているイーリストと目が合ったのだとか。彼女も怯えているようだったが、アーサーに気付くと合図を送るように頷き、魔法による援護を決意してくれたのだ。
アーサーは彼女の頬に手を伸ばし、爽やかな笑みを浮かべながら感謝の気持ちを伝える。
「とにかく、助かった。よかったら一緒に学園へ行こうじゃないか」
「はい、喜んで!」
そこから、四人はヒスクリフ学園へ向かう。すぐに市街地へ入ったため、先程のような襲撃の心配もなくなったと言えるだろう。何よりも、イーリスの存在が大きい、とスコットは思う。なぜなら、魔法を使える仲間が増えたようなものなのだから。
「ここまでくれば安心だ。エドガー、大丈夫かい?」
「こ、怖かったです。でも、何とか……」
エドガーは震えているが、それでも自らの足で歩いている。少年ながら恐怖に打ち勝って進んでいるのだろう。それにしても……。
「エドガー。君はこんな危ない目に遭ってまで、プロヴィデンスを見たいのか??」
詳しい話を聞いていないが、彼は叔父から命を狙われているらしく、グレイヴンヒース領に訪れている中で襲撃される、と察していたようだった。それにも、プロヴィデンスを見なければならないとは、どれだけの想いがあるのだろうか。だが、エドガーは首を横に振る。
「ですから、プロヴィデンスの観戦に興味があるわけではありません」
「ああ、そうだったな。応援しているロゼスがいるんだったか。名前を聞いても?」
「……アイアン・スカーレットです」
「確か、その名前は……」
スコットたちが参加するAブロックに、その名前があった。アルドール領のロゼスだったはず。
「グロリアスターだったよね?」
「はい。アルドール領はプロヴィデンスより、グロリアスが盛んな地域ですから、彼女はそこで英雄と呼ばれています」
「英雄か……」
その会話が終わってから少し経って、アーサーが耳打ちしてきた。
「アイアン・スカーレットと言えば、いま子どもに人気なグロリアスターではなかったか?」
「……つまり、エドガーは流行りものに食いついている、ということか?」
「だとしたら、とんでもない子どものわかがままに付き合わされることになるな」
アーサーのシニカルな意見を聞きながら、スコットは頭の中で首を傾げる。エドガーからは力強い情熱を感じた。ただの流行りものを好む子どもとは思えないが……と。そんな話をしている間に、無事学園へ到着する。
「スコット先輩! ジュリアのために、間に合わせてくれたのですねー!」
スムーズにジュリアとコハルに合流できたため、スコットは心の底から安心できた。
「あら、こちらの方は?」
ジュリアは真っ先にイーリアに目を付けた。紹介するのはもちろんアーサーだ。
「彼女はイーリア・シェフカ。俺の親しい友人さ。いや、深い仲になるだろう友人、と言うべきかな」
「深い中になる、だろう??」
理解できずにいるジュリアに、スコットが横から小声で補足する。
「つまりはお付き合いの直前と言える仲、ってことだ」
「あらあら! まぁまぁ!!」
なぜかジュリアが照れくさそうに、手を頬に当てる。お互いの紹介が済み、照れくさそうに微笑んでいると、マイクによって園内放送が流れてきた。
『間もなく、デュオフィラ選抜戦、ロゼスの部、トーナメント決定抽選会を行います。参加者の皆様、報道機関の皆様は、中庭までお集まりください』
どうやら、思った以上に直前だったらしい。全員が真剣な面持ちで視線を交わし合い、最後にスコットが頷いた。
「よし、行こう!」
全員の気持ちが一つになったように頷き合い、中庭の方に向かうのだが、隣を歩くエドガーを横目で見ながらスコットは思った。
まさか、ジュリアの第一トーナメントの相手が、彼が応援するアイアン・スカーレットではないか、と。
そして、彼の嫌な予感は……見事に的中してしまうのだった。




