思わぬ援護!
次々と魔法による攻撃が飛んでくるため、スコットは守りに徹するしかなかった。
「このままでは、僕の魔力が尽きてしまう。どうする!?」
「馬車から降りて、俺が戦うか??」
アーサーが剣を掲げてみせる。その鋭い目つきに、スコットの期待も高まった。
「行けそうなのか??」
「いや、行ける気配ない」
「……行けそうになったら教えてくれ!!」
馬車が大きく揺れる。もう少しで市街地に入るはずだが、それまでスコットの魔力が持つかどうか。そんな状況で馬車が急激に失速していく。
「あれ? 御者殿、スピードが落ちていないか!?」
アーサーが確認しようとすると、御者台には誰もいない。むしろ、馬車を引っ張る馬すら消えているではないか。
「悪いな、兄さんたち!」
声はやや前方から。御者の男が馬に跨り、スコットたちから遠のいていく。
「命あっての仕事だ。俺はこれ以上付き合えないぜ! 無事に帰れたら、また利用してくれ!」
そう言い残して、御者の男は瞬く間に消えてしまった。残されたキャビンは余力だけで走っているようだが、止まるのも時間の問題だろう。
「ある程度スピードが落ちたら飛び降りて、そこから走って逃げよう。エドガー、行けるか?」
「は、はい……」
「よし。じゃあ、アーサー。僕が最初に降りて盾になるから、君がエドガーを連れて行ってくれ」
「任せておけ」
間もなくして、スピードがかなり緩やかになる。
「行くぞ!」
スコットが飛び出し、着地と同時に光の盾を展開する。続いてアーサーとエドガーが飛び降りるのだが……。
「ダメだ、スコット!」
アーサーはエドガーの手を引いて逃げ出すこともできなかった。なぜなら、着地したときには、既に彼らは囲まれてしまっていたからである。敵は絶対的に有利でありながらも、高い警戒心を持ってスコットたちの様子を窺っていた。
「武器を持っているようだ。このままの距離を保って、魔法で押し切るぞ」
どうやら、敵はアーサーが持つ剣に気付き、遠距離の攻撃で対処するつもりらしい。もちろん、そんな確実な方法を取らなくても、今のアーサーは彼らにとって脅威ではないのだが……。
「二人とも、僕から離れるな!!」
スコットは光の盾を展開し直したが、四方から炎の渦が押し寄せてくる。
「ダメだ、これじゃあさっきより状況が悪化したようなものだ!」
馬車で走っていたときは、一方向からの攻撃だったが、今は四方からの攻撃だ。これでは、スコットはより広範囲に盾を展開する必要があり、魔力の消費も激しくなってしまう。
「こうなったら、僕が彼らの目を眩ませてみせる。アーサー、この子を頼んだぞ」
「……スコット」
永遠の別れ。そんな雰囲気を醸し出す二人の間で、エドガーは悔し気に顔を歪めた。
「スコットさん、アーサーさん……申し訳ありません。僕のわがままのせいで、二人を巻き込んでしまって!!」
君のせいではない。スコットはアリストスとして、誇り高い態度を維持するつもりだったが……。
「それでも、僕はどうしても彼女のプロヴィデンスを見なければならないんです! どうにかしてください!!」
「どうにかって!!」
エドガーの無茶にスコットは驚愕しつつも、彼の言うことは一理ある。どうにかしなければ、一巻の終わりなのだから。
「でも……どうすれば!!」
魔力切れが近付いているのか、スコットは眩暈を感じ始めている。しかし、彼の力が尽きかけた、そのときだった。
「スコット、運がこちらに傾くかもしれないぞ! 攻撃に転じる準備を!」
「どういうことだ??」
アーサーの発言に混乱するスコットだったが、それは起こった。敵の集団の頭上に、巨大な刃のような煌めきが大量に降り注いだのである。
「な、なんだ!?」
思わぬ強襲に彼らは混乱しつつ、スコットは巨大な刃の正体を確認した。よく見れば、それは魔法で作られたと思われる氷の刃である。これには彼らが跨る馬も動揺し、スコットたちに対する攻撃も中断された。
「今だ! 風の斬撃!!」
スコットの魔法は、敵数名に傷を負わせる。これなら、一気に形勢逆転も可能と思われたが、敵も馬鹿ではないようだ。
「撤退! 体制を整えるぞ!!」
「逃がすか!!」
スコットは追撃の魔法を放つが、素早く立ち去る敵を一人たりとも仕留められずに終わってしまった。
「助かった、のか……」
ひとまずの安全に一息吐くスコットだが、逆転のきっかけを与えてくれた氷の刃は誰によるものだったのだろうか。
「アーサー先輩、大丈夫ですか!?」
どこからか名を呼ばれ、振り返るアーサー。すると、そこには……。
「……イーリア??」
そこには、魔法の杖を手にした、アーサーの恋人候補、イーリアが立っていたのだった。




