表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/64

親友の恋愛事情

 無事に運営委員会の人々との打ち合わせを終え、スコットは生徒会室を後にした。


「これで無事に開催は確定だ……」


 疲労感と達成感を揺れながら、大門の方へ向かう。が、そこに見慣れた姿を認める。



「嫌だー、アーサー先輩ったら!」


「ふふっ、本当さ。君ほど美しい瞳は他に見たことがない」



 間違いない。スコットの親友である栗色の髪の剣士、アーサー・グリムウッドだった。しかも、彼は学園の生徒を口説いているようである。



「君が俺の支えになってくれたら嬉しい。どうかな?」


「支えって……どういうことです??」


「ここ数日で十分伝えたつもりだったが……」


「ダメですよ、先輩。女の子はちゃんと口にして伝えてほしいときがあるんですから」



 スコットは思わず木の影に身を隠す。アーサーが女好きであることは知っていたが、こんな生々しい現場に遭遇するのは初めてだった。しかも、スコットの想像以上にアーサーは女子生徒と深い仲を築きつつあったようだ。悪いとは思っても、聞き耳を立てずにはいられなかった。



「分かった。では、このアーサー・グリムウッド。男として、剣士として、君に誓いを捧げよう。聞いてくれるか?」


「はい、先輩……。あっ!!」



 アーサーが片膝を突こうと腰を落としかけたとき、女子生徒は何かに気付いたようだった。



「先輩、ごめんなさい。私、門限が厳しいの。また今度ね!」


「む、むぅ。それは仕方ないな。気を付けて帰るんだぞ」


「はい、明日先輩に会うためにも、無事に帰ることを心がけますわ。では、ごきげんよう!」



 夕日に向かって走り去る女子生徒を笑顔で見送るアーサーだったが、彼女の背が完全に見えなくなると、ゆっくりと振り返った。



「覗き見とは趣味が悪いな、親友」


「……気付いていたか」



 ひょっこりと顔を出し、アーサーの方へ歩み寄る。それなりに距離もあったはずなのに、気配をしっかり察知するところはさすがと言えるだろう。



「まさか、僕が知らぬ間に女子生徒と関係を深めているとはな」



 スコットは思わず笑みを零す。アーサーが興味を持つ女性が久しぶりに現れたからである。彼の心が充実すると思うと、親友として嬉しかったのだ。



「まぁな。あれだけ素晴らしい女性が同じ学園にいると気付かなかったとは、俺の目もまだまだのようだ」


「名前は?」


「イーリア」


「美しい名前だ」


「そうだろ?」



 二人は一緒に帰ることにした。そして、スコットはこれからのデュオフィラ選抜戦について、状況を話す。



「カーライル家の子息を保護、か。確かに厄介ごとの気配がするな」


「ああ。前回以上に君とシラヌイ殿の力を借りることになると思う」


「俺のことを知りながら、そう言える君を尊敬するよ」



 自虐なのか微笑みを浮かべるアーサー。だが、スコットからしてみると、彼以上に頼れる人間はいない。そして、何よりも……。



「元から君のことを頼りにしているが、パートナーがいるときの君は誰よりも強いからな。先程の様子を見る限り、期待してもいいと僕は考えているが?」



 アーサーはただ微笑みだけを返してくる。これは自信があるのだろう。最強の相棒が最強の状態をキープできる日は近いかもしれない。カーライル家の子息を保護することで、どのような困難が待ち受けているのか、いまいち想像できていないスコットだが、きっと乗り切れるだろうと思うのだった。



「ただいまー」


 我が家の扉を開き、一日の疲れを癒そうと気持ちを切り替えた……そのときだった。


「いやぁぁぁー! お兄様ーーー!!」



 背後から妹の声があった。振り返ると、ファリスがこちらへ駆けてくるが、まるで何かから逃げ出しているように見えた。



「どうした!?」


「助けてください! ファリスを助けてくださいー!!」



 飛びついてきた妹の体を支えながら、スコットは周囲を警戒する。まさかデュオフィラ選抜戦に先駆けて何者かが仕掛けてきたのだろうか、と。すると、闇夜の中から何者かが屋敷に接近してくるではないか。



「ファリスさーん! お待ちになってー!!」


「……ジュリア??」



 ゴージャスな金髪を揺らしながら溌溂(はつらつ)と駆けてくるのは、スコットにとってデュオフィラ選抜戦を共に勝ち抜くパートナー、ジュリア・コウヅキであった。



「あら、スコット先輩。お帰りなさいませ。遅かったのですね」


「あ、ああ。今日は運営員会と打ち合わせがあって……いや、それより何があったんだ?? 敵か!?」


「敵??」



 ジュリアは首を傾げるが、ファリスがおいおいと泣きながら顔を上げた。


「違います、お兄様! この人です!!」


 とジュリアに人差し指を突き出す。



「はぁ? 何があったんだ??」


「ジュリアさんが練習のために、ゴーレムをたくさん出してくれって! もう私、魔力が底を付いているというのに、早く出せと迫ってくるのです!!」



 なるほど、とスコットは気が抜けてしまう。ファリスは魔法による土性のゴーレム精製が得意技である。ジュリアはそれをスパーリングパートナーとして利用したかったのだ。



「見てください、これ!」



 ファリスに引っ張られ屋敷の近くにある森へ行ってみると、ジュリアが設置したコノスフィアの中に大量のゴーレムが倒れていた。その無残な光景に、スコットは妹に同情するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ