真の敵は!?
瞳を輝かせるジュリアだが、スコットには覚悟のない乙女が夢うつつの喜びに浸っているだけにも見える。隣のアーサーも「やめるなら今の内だ」という視線を送ってくるではないか。
ただ、彼女しかいないことは二人とも分かっている。スコットは後戻りは考えまい、と覚悟を決めた。
「ならば、ぜひお頼みしたい。ジュリア嬢! 私と一緒にデュオフィラを目指してくれ」
スコットはジュリアの前で片膝を突き、手を伸ばす。
「これは誓いだ。ジュリア嬢、貴方がデュオフィラとして咲き誇るその日まで、僕は君の盾となり、あらゆる障害から守護してみせる。だから……誓いを返してくれないか?」
「ええ、もちろん誓いますとも。このジュリア……死力を尽くして、必ずやロゼス候補として選抜戦を勝ち抜いてみますわ」
伸ばされた手に、ジュリアは自らの手を重ねると、スコットは誓いの口づけを受け入れる。スコットは照れくささに頬を赤くしながらジュリアを見上げたが、彼女の方は自信満々に頷くのだった。
「さ、さて。じゃあ、我々はお暇するとしよう」
気恥ずかしさを誤魔化すようにスコットは席を立つ。
「詳しいことは、明日学園で話すから、生徒会室にきてくれ」
「承知しました。外までお見送りしますわ」
ジュリアとコハルが廊下を先に進む。薄暗い中を歩きながら、アーサーの方が疑問を口にするのだった。
「しかし、こんなおんぼろ……ではなく、なかなか歴史を重ねた住まいに、コウヅキ家の令嬢が本当に住んでいるとは意外だったなぁ」
「うむ。しかし、先程の部屋は丁寧に掃除されているようだった」
二人の素直な感想にジュリアが答える。
「それはですね、引っ越してきたときはもっと酷い有様だったのですが、このコハルが私の生活空間だけでも、と綺麗にしてくれたのです。本当にコハルは頼りになる使用人ですわ」
「もったいないお言葉。ジュリア様のためなら、この程度のこと当然です」
二人の信頼関係は固いらしい。だが、アーサーの疑問はそれだけで晴れたわけではなかった。
「とは言え、コウヅキ家であればもう少し上等な屋敷を用意できたのでは? 何て言ったって、ストームフォール領で一番のアリストスなのだから」
それに答えたのは、ジュリアではなく、コハルの方だった。
「もちろん、ご主人様はもっと立派なお屋敷を用意してくださいました。しかし、ジュリア様が断ってしまったのです」
なぜだろう。アリストスの令嬢であれば、こんな幽霊屋敷で生活するなんて、想像もできないはずだが……。ただ、その疑問を投げかけることなく、コハルが説明を続けてくれた。
「そんなところに資金を投入するくらいなら、他の女子生徒にロゼス候補としてエントリーしないよう、賄賂を渡したいから、ぼろ屋敷でいい、と。そのせいで、毎日掃除と修繕作業に追われる日々。いかに優秀なメイドの私でも、腰が痛くて堪りません」
「……なんだって??」
耳を疑うスコット。確認するスコットに、コハルは的外れの説明を返す。
「ですから、掃除と修繕作業で腰が」
「いや、そこではない。賄賂がなんだって……?」
「ああ、そちらですか。ですから、ジュリア様は自分が選抜戦に出るため、実力があってやる気もある女子生徒に、夢をあきらめるよう賄賂を渡して回っていたのです。その成果もあって、このようにスコット様がお屋敷に足を運んでくれたわけですね」
絶対に聞かれてはならない話だったはずだが、ジュリアの方は冷静だ。
「こらこら、コハル。余計なことは言わなくて結構ですのよ。まぁ、スコット先輩から誓いのキスをいただいた以上、過去のことなど、どうでもいいことではありますが」
何事もなかったように振る舞うジュリアとコハル。では、お気をつけてください、と送り出そうとするが、スコットにしてみれば、そうは行かなかった。
「お、お、お前のせいだったのかーーー!!」
ロゼス候補が見つからなかった理由。それはライバルであるアルバートの妨害と思われていたが、まさか真の敵に自分から泣きついていたとは、スコットにしてみると夢にも思わない事実であった。
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