アルバートの意地
「絶対防御の盾!!」
迫りくる炎をスコットが魔法で防ぐ。光の盾が炎を遮るが、スコットの魔力は少しずつ失われていった。
「おのれ、スコット!!」
一息で放出できる魔力の量が切れたのか、アルバートの炎が止まる。そのタイミングで、アーサーが立ち上がった。
「アルバート・ウェストブルック! 我が親友の道を妨げるのならば、閃光のロベルトを退けた剣が黙っていないぞ!!」
アーサーの体力は残りわずかだ。それでも、彼の剣技であれば、アルバートの魔法を打ち破るだろう。しかし、スコットはそれを良しとしなかった。
「いいんだ、アーサー」
アーサーの肩を叩き、退がるように言う。
「アルバートは……僕自身が倒さなければならない。そんな気がするんだ」
血走ったアルバートの目。それは確かに、スコットに対する執念があるように思えた。
「……ふむ。正直、それが助かる」
アーサーは小声で言った。
「実は、さっき、ジュリア嬢の金で何事も解決しようとする態度を見たせいか、一気に萎えてしまった。たぶん、今は赤子も斬れないだろう」
「……そ、そうか。後で治療してやるから、今は休んでいてくれ」
引き下がったアーサーに、ジュリアが「何を話していたのです?」と質問するが、彼は首を横に振るだけで、大人しく休んでくれるようだった。こうなれば、後はアルバートと一騎打ちで決着を付けるだけである。
「炎の矢!」
アルバートが放った、細長い形状の炎は、まさに矢のようだった。再び光の盾を展開するスコットだったが、矢は強引にそれを突破してくる。どうやら、貫通属性を持った魔法らしい。盾を突破されると同時に、スコットは瞬時の判断で回避するが、矢が耳のすぐ横を通過し、後方で爆発した。顔面に当たっていたら、と想像すると背筋が凍る。
「そっちがその気なら! 風の斬撃!!」
空気にうっすらと緑色の魔力が宿り、それが風の刃となってアルバートを襲う。
「炎の刃」
それに対抗し、アルバートは炎の刃を作り出した。二つの刃が激突すると、爆風が起こったが、それを間近で受けたアルバートは視界を奪われる。
「聖なる拳!」
その間に、アルバートの横手に回っていたスコットが、魔力を集中させて光り輝く拳を放った。
「ぐうっ!!」
横腹に強烈な一撃を受け、よろめくアルバート。だが、彼の目は死んでいない。魔法の一撃は骨に到達するが、彼も魔力を集中させて、防御力を高めていたのだろう。アルバートは手の平を突き出し、すぐさま反撃に転じる。
「地獄の業火!!」
至近距離で放たれる炎の渦。しかし、スコットも反射的に光の盾を展開した。二人の間で炎が巻き起こる。
「跳ね返してやるぞ、アルバート!」
「やってみろ! その前に貴様を丸焦げにしてやる!!」
魔力と魔力のぶつかり合いに、二人は一歩も引こうとしない。
「俺は負けはしない!!」
その目に怒りと憎しみに燃やしながら、アルバートは叫ぶ。
「最初からすべてを持っていた貴様を、俺が完全に否定してみせる!!」
「……最初からすべてを? 君は、何を言っているんだ??」
数秒、拮抗する時間が流れたが、爆発が起こって二人は別の方向に弾き飛ばされる。先に立ち上がったのは、アルバートだ。
「炎の矢!」
立ち上がろうとするスコットに飛来する炎の切っ先。
「うわぁぁぁ!!」
もつれながらも、何とか回避するスコットだが、冷静にアルバートの動きを分析する。
(今のタイミングで、インフェルノ・アローを連続で撃たれていたら、僕は死んでいた。一度しかなかったということは……魔力切れが近いのか??)
スコットは再び光の盾を展開しながら、アルバートに向かって突進する。
「うおおおぉぉぉ!!」
「倒れろ、スコット! 地獄の業火!!」
放たれた炎がスコットの光の盾にぶつかる。それでも、スコットは突進をやめなかった。
「このまま、押し切ってやる!!」
アルバートの炎がさらに勢いを増し、スコットの盾が四散した。
「やった!」
勝ちを確信したアルバート。しかし、飛び散ったと思われた魔力の光が、鳥の形に変化した。旋回する四羽の輝く鳥。彼らは炎を避けるように旋回しつつ、四方からアルバートへ突進する。
「ば、馬鹿な!!」
回避するにも、魔力が尽きつつあったアルバートは足に踏ん張りが効かなかったらしい。そのまま、四方から迫る光の鳥が彼を捉え、その衝撃に彼は倒れるのだった。
「し、しかし……スコットは炎に包まれたはずだ!!」
炎に呑まれた宿敵の姿を確認するため、倒れたままの状態で、何とか顔を上げるが……スコットは盾を四散させたが、小さな光を手にして、炎を防いでいた。どうやら魔力を五つに分散させ、攻撃だけでなく、防御の分も残していたらしい。
所々に火傷は負ったようだが、彼は立っている。そして、アルバートに告げるのだった。
「僕の勝ちだ、アルバート!!」
こうして、残る戦いはジュリアとメイシーのプロヴィデンスのみとなった。
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