表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

分配された恋

ラブ・インストラクション

作者: あい

第一章:国家が決めた恋の相手


2031年、結婚出産義務法のもと、22歳以上の未婚者には国家によって配偶者が割り当てられる社会。

性交未履行には期限があり、一定日数を超えると“性行為指導官”による立ち合い/レクチャーが義務化される。


LOVEYOUの**サブリーダー・楓(かえで/24)**にも、その日が来た。


> 【通知】あなたの割り当てパートナーは「一ノいちのせ りょう

年齢:20歳/大学生(社会福祉学科)




「……年下? しかも大学生って……」


しっかり者で、恋愛を“避けてきた”楓にとって、それは最も扱いづらい相手だった。



---


第二章:イケメンで素直、でも子ども


遼は人懐っこく、無邪気に笑う青年だった。


「えっ、楓さん? 本物? めっちゃ嬉しい!子どもの頃から見てました!」


「……あのね、これは仕事じゃないし、“夢”でもないからね」


彼の好意を“ファンの感情”として受け取る楓。

けれど遼は、本気だった。


「俺、ちゃんとパートナーになりたい。義務だからじゃなく、俺自身が」


だが楓は、過去に芸能活動と恋愛を秤にかけて失った経験から、一歩も進めなかった。



---


第三章:警告と“レクチャー指導”の通達


> 【警告】性交履行期限:残り2日

【補足】履行未遂につき、指導官によるサポート介入が決定しました。




「レクチャー……って、どういうこと?」


翌日、自宅に現れたのは国家性教育局の女性指導官・綾部指導官。


「交わるとは、命を繋ぐだけではありません。心の準備、相互理解が必要です。

楓さんは、自分を“役割”として切り離しすぎているのではありませんか?」


彼女の言葉は、楓の心の鎧を静かに突き崩した。



---


第四章:指導の夜、触れ合いの予感


指導官はその夜、静かに2人の間に座り、会話を促す。


「手をつなぐことさえ、“仕事”にしてきたんです。私には……“好き”って感情が、わからない」


楓の震える声に、遼が言う。


「じゃあ……“好き”ってどうなるのか、今から一緒に見つけていこうよ。俺、ずっと隣にいるから」


“初めて”を経験したのは、期限の前夜だった。

静かに重なった体温は、“義務”ではなく、“希望”だった。



---


第五章:命が宿り、彼女は変わる


妊娠が確認され、楓は一時的にアイドル活動を休止。

LOVEYOUの中で、誰よりも支えてきた仲間たちが背中を押してくれた。


「あなたが背負ってきたもの、今度はあたしたちが背負うよ」


遼は変わらずそばにいた。

テキストもレポートも赤ちゃんグッズと一緒に持ち歩く彼に、

楓は少しずつ、年下の彼に“守られている”ことを受け入れていった。



---


最終章:制度の外に、未来を描く


第二子出産後、国家から通知が届いた。


> 【通知】義務完了。婚姻継続は任意となります。




ある日、楓は指導官・綾部と再会する。


「あなた、本当によく頑張りましたね。心まで義務にしなかったから、救われたのです」


帰宅後、遼が彼女にそっとリングを差し出した。


「今度は制度じゃなくて、俺から。楓さん、結婚してください。俺と家族になってください」


楓は、初めて自然な涙を流した。


「……うん。“サブリーダー”じゃない、ただの私で、生きていいんだね」



---


―完―


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ