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第6話 怪人、結束する6


「こりすー! 起きるのです!」

「ぐえっ!?」


 翌日、ベッドで寝ている私の上に、胸からミコトちゃんがダイブしてきたことで目を覚ます。


「おーきーるーのですっ!」


 私がまだ起きていないと思ったのか、ミコトちゃんが胸と胸を押し付け合うように、ぎゅむぎゅむと私の上で動いて発破をかける。


「起きてる! 起きてるよ! ミコトちゃんが乗っかって動けないだけだから!」

「おおおー。言われてみればそうなのです! こりす、おそようなのです!」


 もぞもぞっとベッドから離れると、ミコトちゃんがキラキラと明るい顔をして挨拶してくる。


「う、うん。おはよう。ミコトちゃんは朝から元気だねぇ」

「ちょっと雲行きが怪しそうだったので、起こしに来たのです! それと、もう朝じゃないのです!」


 雲行きが怪しい? なんだろう。って言うか、朝じゃない?

 不思議に思って、枕元のスマホで時間を確認すれば、既に朝を通り過ぎて完全にお昼だった。そんなに!?


「うっ、うああああっ!?」


 なんて穀潰し! 役立たずの食事吸引機! 猫より動かないダメ人間!

 早起きして作業員さんのお手伝いをしようと思ってたのに、一度寝ればこのぐうたらぶり!

 昨日寝るのが遅かったなんて言い訳ができない時間だ。情けない、我ながらあまりに情けない!


「あ、ありがとう、ミコトちゃん! おかげで超ド級穀潰し一歩手前で踏みとどまれたよ! 急いで準備するから外で待ってて!」

「わかったのです。皆はラウンジに居るから、準備出来次第こりすも来るのです!」


 言って、ミコトちゃんは敬礼っぽいポーズをして部屋を出ていく。

 私も急いで着替えて部屋を飛び出せば、既に空洞の壁も地面も確認できない。ちゃんと建物の中になっていた。

 洞窟におかれたプレハブ小屋みたいだった寝る前の面影は全くない。SF映画でよくある、目を覚ましたら未来だった人みたいになってしまった。


「あわわ……。ラウンジ、どこ?」

「ラウンジは左の廊下を道なりですぞ」


 部屋の入り口横、セレナちゃん家のじいやさんが教えてくれる。


「あ、ありがとうございます。……もしかして、私が寝てたから待っててくれました?」

「お嬢様から不埒な輩を近づけぬよう厳命されておりますからな」


 ほっほと愉快そうに笑うじいやさん。

 私としては笑いごとじゃなかった。各方面に多大なご迷惑をお掛けしてた事実に涙目だ。


「この老いぼれのことは気にせず、こりす様は急いだ方がよろしいかと。きな臭い雰囲気が漂っておりますぞ」

「わ、わかりました!」


 これ以上皆に迷惑はかけられない。私はじいやさんに頭を下げると、急いでラウンジへと向かうのだった。


「おはようございます、こりすちゃん。そんな絶望的な顔をしてどうしたんですか?」


 程なくして、私は拠点の一角にできたオシャレ空間を発見し、急いでやって来た私を発見したセレナちゃんが私を笑顔で出迎えた。

 セレナちゃんやリオちゃんだけでなく、黙々とお菓子を食べているクロノシア達も居た。


「お、おはよう。寝坊したら、浦島太郎さんになってたみたいな気分だよ……」

「私が起こさなかったら夕方コースだったのです!」


 ひええっ、夕方コース! 想像するだけで恐ろしい!


「うん、ミコトちゃんのおかげで本当に助かったよ。でも、本音を言えば皆が起きる時に一緒に起こして欲しかったな……」

「そうなんですか? ごめんなさい。こりすちゃんの場合、寝て食べるのは回復の兼ね合いもありますから、昨日の戦いで消耗しているのかと思いました」


 あえて魔力回復と言わず回復と言葉を濁しつつ、申し訳なさそうに指先を合わせて眉根を寄せるセレナちゃん。

 私が変身していない時の魔力消費なんてゼロに等しいんだけど、それはセレナちゃんにはわからないよね。起こしてねって、私が先に頼んでおくべきだった。


「ううん、今回の件は私のニート気質が招いた悲劇だから、セレナちゃんは何も悪くないよ。それで、雲行きが怪しいってどうしたの?」

「昨日の夜からずっとナナミと連絡がつかないんよ」


 むっつりとした顔でスマホを見つめていたリオちゃんが、ちらりとこちらに視線を向けて教えてくれる。


「つまりもうダン特の人達はダンジョンに潜ってて、昨日の夜から紅葉林に居るってこと?」

「普通に考えればそうなる。ナナミ、ダン特の任務中は緊急じゃない連絡は全部切ってるし。ただ、助けを求める緊急配信は欠かさず目を通してるからさ」

「昨晩リオがした緊急配信、ネットで結構話題になっているようなのです!」

「……緊急配信で逃げてたリオちゃんからの連絡、無視するとは思えないってことだね」


 私の言葉にリオちゃんが重々しく頷く。

 私が初めてナナミちゃんと会ったのも、ダン特の任務中に緊急配信を見て駆けつけて来た時だ。

 そんなナナミちゃんの性格を考えれば、今の今までずっと連絡がつかないとは考えにくい。その時は忙しくても、折りを見てリオちゃんの無事を確かめるはずだもんね。


「緊急連絡に出られない状態だからこそ、緊急連絡に出てくれるといいんですけれど……」


 セレナちゃんが両手の指を合わせながら困ったように言う。

 矛盾しているけれど本当にそうだ。本当に紅葉林でトラブルが起きているのなら、この拠点に逃げ込むと言う選択肢が増えるのは大きい。


「一応、鳳仙長官からも緊急連絡入れるよう頼んだんだけどさ。あっちもあっちで中々捕まらない人で、今さっきようやく頼めたとこ」


 なんであの人しれっと長官に返り咲いてるんだろ。と小声で付け足し、リオちゃんが小首を傾げる。

 捕まえるのを頑張ったリオちゃんの前で、セレナちゃんが手引きしてお外に出したなんて言えるはずもなく。

 私は不思議だねぇって、わざとらしく愛想笑いするしかなかった。


「ふむ、ならば連絡が来るのはもうすぐか? 今から戦闘準備をしておいた方がよいぞ。今のここで出会うトラブルは大方察しが付く、クロノス社のマシンアーマーかウサギ人形共のいずれかだろう」


 そこでケーキを食べる手を止め、クロノシアが剣呑とした表情で言う。

 シリアスな表情だけど、そのほっぺには白いクリームがついている。クロノシアって、こう締めるべき時に締められないタイプだよね……。


「ちょっとクロちゃん、ウサギ人形ってなにさ。もしかして、紅葉林に出没している場違いモンスターの正体、メカサンドバッグ総統じゃないん!?」

「当然であろう。脅威があれ一体であれば、余とてミレイを連中に渡しはせぬぞ」

「ウサギ人形、クマ人形、今の紅葉林はヤベー場違いモンスターがわんさかうろついてるにゃ。しかも、人形共はラフィールの手足として動く忠僕なのにゃ」


 お代わりのロールケーキをお皿に取りつつ、ミレイがクロノシアの言葉に付け足す。


「マジか! クロちゃん、そう言うことは早く言ってよ!」


 リオちゃんは慌ててスマホを手に取り、ダメ元で再度緊急連絡を入れようと試みる。

 と、それよりも早くリオちゃんのスマホが震えて宙に浮き、


『リオ! アンタ、無事なの!?』


 アップで画面に映ったナナミちゃんが開口一番そう叫んだ。

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