表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/190

第6話 怪人、結束する4

 その後、ミコトちゃんに魔力の集結点に立ってもらい、建材を運び込むにはどれだけの大きさで開門すればいいのかを測定していく。

 セレナちゃんが得物である杖剣を物差し代わりにして距離を計算し、懐中電灯を手にした私が鉈でゴリゴリと地面に目印をつけていく。

 さっきの戦いでボロボロになっていて使い難いけど、お高そうなリオちゃんの槍で地面を掘るよりも気が楽だから仕方ない。


「うーん、拠点建材のサイズ的にこれで大丈夫だと思いますけれど……」


 スマホで細かく色々な計算をして考え込むセレナちゃん。


「開門ってそんなに厳密な計算が欲しいものなの?」

「はい。頻繁だったり大規模な開門は次元融解現象を誘発すると言う研究結果がでています」

「そうなんだ……。あまり気軽に使えるものでもないんだね」


 次元融解現象って言うのはダンジョンの階層や地上が次元の境界で繋がる現象のこと。簡単に言えば新しいダンジョンの階層と繋がる。

 テラーニアの時にミコトちゃんが開門したのを直に見たけど、一時的に次元の裂け目を作っているようなものだった。次元融解現象を誘発しても不思議はない。


「即座に誘発する訳ではないとは思いますけれど、リスクは少ないに越したことはありませんからね。可能な限り最低限の開門で済ませたいです。こりすちゃん、開門での境界はどんな形で開くものなんですか?」

「それは……ミコトちゃん、どんな形なの?」


 丸だよ。って、思わず答えそうになるけれど、よくよく考えたら私が開門を見たのはエリュシオンとしてだ。

 うっかり答えてしまうと色々怪しまれてしまうかもしれない。大人しくご本人に答えてもらうことにした。


「丸なのです!」


 両腕を目一杯使ってラジオ体操みたいに丸の形を描くミコトちゃん。あの動きはおっきいのもいけるぞってアピールなんだろうか。


「なるほど。では、猶予マージンと取り回しも加味してこれ位のサイズが必要ですね」


 セレナちゃんがポンと杖剣の先を地面に置き、私がごりごりと印をつける。


「宵月さん、円の半径がここまでだとして、開門はどれだけの時間維持できますか?」

「十分はいけるのです! 足元がふかふかだったなら更に倍は行けたのです!」


 むふっと意気込んで両手をパーにして突き出すミコトちゃん。


「安全に開けるのは五分ぐらいだって」


 あの感じだと少し時間を盛ってるかなって思った私は、セレナちゃんの横でさりげなく言う。


「じゅっぷん! ちゃんと開けるのです! こりす、信じて欲しいのです!」


 ミコトちゃんにもそれが聞こえていたらしく、ミコトちゃんがほっぺを膨らめて異議を申し立てた。


「わかりました。とりあえず五分あれば転移装置の素材は運び込めますし、残りは宵月さんの余力を見て決めましょう。リオさん、学園側の準備はどうですか?」


 セレナちゃんの呼びかけに、スマホで連絡を取っていたリオちゃんが手で丸を作った。

 向こうの準備も万端らしい。


「それでは宵月さんお願いします」

「わかったのです。十分、開くのです!」


 セレナちゃんが指示を出し、十分を強調した後、ミコトちゃんが目を閉じて鈴のついた紐を弄び始める。

 私の発言、結構根に持ってるみたい。ミコトちゃんが十分間開門してくれたら、ちゃんと謝った方がよさそう。


「セレナちゃん、ミコトちゃんの前で待機してた方がいいよね?」

「そうですね。ただ、最初に作業員の方達が降り立つ予定なので、少し距離を空けてください」


 言いながら、セレナちゃんが私のおへその辺りに杖剣を突き出して、ここで止まってと停止線代わりにする。

 更にそのまま杖剣がせり上がり、私の胸を下からむににっと持ち上げた。


「セレナちゃん!」

「ごめんなさい、こりすちゃん。ちょっと好奇心と欲望を抑えきれませんでした」

「こんな状況でそう言う悪戯は止めて」


 優雅に微笑んで誤魔化すセレナちゃんに、私は容赦なく苦情を入れる。

 待つ間は暇なのはわかるけれど、人前でするのは本当に止めて欲しい。いや、人前じゃなくても止めて欲しいけど。


「なんだなんだ。余に内緒で何を始める心積もりなのだ?」


 そんな騒ぎを聞きつけて、クロノシアとミレイもやって来る。

 丁度良かった。建材を運ぶのに人手は沢山あった方がいいもんね。


「ミコトちゃんが開門するから、拠点設営のための建材ユニットを運び込むんだよ」

「なんだ、あ奴そんな大層な芸当ができるのか。エセ巫女じゃなかったのか!?」


 驚いた顔でミコトちゃんを見るクロノシア。

 その目の前、ミコトちゃんの後ろで光の亀裂が入り、夜も明るいダンジョン学園転移室の風景が広がった。


「ご無事でなによりです。お嬢様」


 まず境界を越えて来たのは、白髭でタキシード姿のおじいさん。私も見慣れたセレナちゃん家のじいやさんだ。

 次いで、作業着にヘルメットの一団が転移装置のパーツを担いで降りてくる。


「ほら、こりっちゃん、ぼーっとしてる暇はないかんね。こっから門が閉じるまで超忙しいよ」


 その様子を眺めていた私の背中をばしっと叩いて、リオちゃんが発破をかける。

 その言葉に偽りはなく、投げ渡すように転移室から拠点用のユニット建材が放り込まれ、それを受け取ったリオちゃんが更に私へと投げ渡す。


「うわわ! クロノシア!」


 レベル持ちでないと即座にぺしゃんこになりそうな重い建材をなんとか受け止め、私もそれをクロノシアにパス。

 クロノシアが潰されかけてミレイが代わりにキャッチする。クロノシアって本当に耐久力極振りなんだ……。

 その後も次々と運び込まれる建材をリレーし、十分も経たないうちに空洞には堆い建材の山が出来上がった。


「ふーっ、死ぬかと思った……」

「足が痛くて集中するのがきつかったのです。無駄に魔力を消費したのです」


 建材の波状攻撃を耐え抜いた私が安堵の息を漏らし、きっかり十分耐え抜いたミコトちゃんが境界を閉じて、そのままくてっと倒れて足を伸ばす。

 開門時間ってコンディションに左右されるんだ。楽な格好でできないものなの?


「お疲れ様です。じいやに頼んで軽食を用意して貰ってあります、少しお行儀が悪いですけれどお夜食にしましょう」


 セレナちゃんの後ろを見てみれば、いつの間にかテーブルクロスの掛かったオシャレテーブルが設置されていて、じいやさんがサンドウィッチとかを並べていた。


「丁度よかった。走って運んでお腹ペコペコだったから」

「うふふっ、こりすちゃんのことぐらいお見通しですよ」


 楽しそうに笑うセレナちゃんにお礼を言って、皆を呼びに行こうと振り返る。

 と、そこには物欲しそうにじーっとテーブルを見つめるクロノシアとミレイの姿があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ