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戦鎚聖騎士、ドワーフの地方都市に到着する

「せっかくの出会いなので自己紹介を。私はダーリア。ドヴェルグ首長国連邦で竜騎士団の師団長を務めてるの。どうぞよろしく」

「ではこちらも。余は聖パラティヌス教国より聖女を拝命したミカエルっていいます。こちらはお供の聖騎士ニッコロ、勇者イレーネ、冒険者ティーナです」

「へえ! じゃあつい最近エルフの大森林を騒がせた邪精霊を鎮めたって聖女はミカエラのことね。聖地巡礼の旅ご苦労さま。目的地はうちの渓谷?」

「はい! なので当分の間はお世話になりますね」


 ドワーフ竜騎士部隊とドラゴンの戦いは決着が付いており、既に掃討戦に移っていた。破れかぶれに襲いかかってくるドラゴンを仕留め、逃げようとするドラゴンの背中に追い打ちをかけていく光景が見える。


 上空で旋回する竜騎士が何やら手旗信号を送ってきた。ダーリアもまた腰にさした手旗で返事をする。どうやら部下達が掃討完了を知らせてきたらしい。ダーリアもまた己の飛竜へと戻っていき、軽やかな様子で乗り込んだ。


「じゃあね。運があったらまた会いましょう!」

「あ、ちょっと待ってください!」

「何よ? まだ作戦行動中なんだけれど?」

「最近の情勢を教えて下さい。今回の戦闘についても交えて」


 呼び止められたダーリアは少し考え込み、やがて軽くため息を付いた。しかし面倒くさげではなくやれやれと言いながらもまんざらでもない様子。頼られたことが嬉しかったのだろうか。


「しょうがないわね。ここで会ったのも何かの縁。最寄りの地方都市に出向中だから、勤務時間外に訪ねてきたら応対してあげる」

「はい、その時はぜひ色々と聞かせてくださいね」

「それじゃあ今度こそ、またね!」


 ダーリアは飛竜と共に天高く舞い上がっていた。そして竜騎士部隊と合流し、ある程度の時間を置いた後、隊列を組んで帰還していく。大人入りした俺でも心躍るんだ、子供たちがこの光景を見たら憧れることだろう。


 それにしても、ミカエラが初対面の人に興味を持つのは珍しい。その時出会う人なんて数多なんだから、偶然再会する人こそ神のお導き、みたいな考えだったと思ってたんだがな。


「いえ、余個人は別にあのドワーフとまた会おうが会うまいが全く気にしませんよ。情報なんて教会でも冒険者ギルドでも収集出来ますし」

「じゃあ何でわざわざ声かけたんだよ?」

「イレーネとティーナがそうしてほしそうだったので」

「へ? イレーネとティーナが?」


 不思議に思いながら彼女らの方へ視線を向けると、彼女達はうんうん唸りながら頭を悩ませていた。二人が口にする独り言を聞く限り、昔を思い返しているようだ。しかし答えまでにはたどり着いていないようだが。


「うーん、彼女のあの感じ。どっかで会った気がするんだよなぁ……。でも彼女とは間違いなく初対面の筈なんだけどなぁー……」

「奇遇だね。僕もどこかで彼女と会っている筈なんだ。ただ心当たりがあるのが僕が活動してた頃だから、偶然似てるだけだろうね」

「そこを偶然で片付けちゃったら思考の停止だぞ。もしかしたら因果関係があるかもしれないじゃないか」

「もしそうでも結論付けられる手がかりが一切無いよ。もやもやを晴らしたいなら何度か会って見るしかないんじゃないかな」


 成程。二人がこんな感じなのを察して再び会えるように調整したわけか。まさかパーティーメンバーへの気配りが出来るようになるなんて、ミカエラも成長したんだなぁ。仕える聖騎士として俺も嬉しいよ。


「そんな妹の成長を喜ぶ兄貴みたいに微笑まないでください! 余はお姉ちゃんですからね!」

「それはそうと、ドラゴン族の魔物って一体一体が強力で熟練の騎士や冒険者でも決死の覚悟で臨まないといけない相手だったろ。ダーリア達竜騎士は害獣駆除みたいな感じに処理してたなぁ」

「ええ。魔王としての余も脅威に感じるほどの練度でした。攻め滅ぼすなら真正面からぶつからずに搦手で無力化する策を講じたくなりますね」

「物騒だなぁ。しかし竜騎士はドワーフの渓谷が本場だろ。首長国連合の端でああなんだから、中心地はもっと洗練された部隊なんだろうか?」


 と思いつきで感想を述べたものの、そうではない可能性もある。国境付近で魔王軍の侵攻を食い止め続ければ実戦経験の差で地方が中央を凌ぐようになってもおかしくないだろう。何にせよ、ダーリアの部隊だけ見ても何も分からんわな。


 程なく、ダーリア達とは別の竜騎士の部隊がやってくる。どうやら彼らは地面に落下して破砕したドラゴン共の死骸を処理する役目があるらしい。放置していては大地が腐り、瘴気が更に魔物を呼び寄せ、地獄絵図の出来上がりだ。


 俺達もいつまでも眺めてるわけにもいかないので出発する。それからは特に何事もなく日程を消化していき、予定通りに最初の地方都市へと到着した。

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