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戦鎚聖騎士、妖魔を仕留める

「お前達はここでグリセルダ達を抑えておけ! その間に私は本懐を成す! 何人かは私に続け!」

「「「お任せください、ヴェロニカ様」」」


 クィーンラミアの姿になったヴェロニカは店の奥へとその身体を滑り込ませた。逃がすまいとグリセルダ達が向かおうとするも、他のラミア達に阻まれて足を止めた。さすがに襲わないのはラミア達にとってグリセルダも一応上司だからか。


「貴女達。こんな騒動を起こしてただで済むと思っているのですか?」

「残念ですよ。軍長は魔王様と昔から親しかったですから、いつかはこうなると思っていました」

「つまり、退くつもりは無いのね?」

「くどい! 正統なる後継者こそが我々の主に相応しい! 何故軍長はそれが分からないのですか……!」


 グリセルダの呼びかけはおそらく最後通告か。しかしラミア達はヴェロニカと同じく今の魔王を魔王と認めないようだ。話は平行線、説得は無駄だと判断したグリセルダの目が据わった。


「そう、なら仕方がないわね。ここでわたくし共が――」

「あー駄目です駄目駄目! こんな町中で騒ぎ起こさないでくださいよ!」


 妖魔同士の戦いが始まろうとする間際、成り行きを見守っていたミカエラが大声を張り上げた。グリセルダは驚いた様子で慌てて頭を垂れ、ラミア共は完全に見くびった感じに鼻で笑ってきた。


「何だ人間。邪魔をするならお前から食らってやろうか?」

「いいですかグリセルダ。聖地で暴れた魔物は退治しなきゃいけません。絶対に正体は現しちゃ駄目ですからね」

「成程……畏まりました、我が主」


 侮るラミア達を完全に無視したミカエラの呼びかけに、グリセルダは慇懃に優雅に、そして上品にお辞儀をした。メイド達、多分グリセルダが従えた妖魔なんだろう、は困惑したようだが、グリセルダに続いてミカエラに頭を下げた。


「き、貴様、一体何者だ……!?」

「通りすがりの聖女です!」


 ただ事ならないと感じ取ったラミアが狼狽えながら発した問いかけに、ミカエラは待ってましたとばかりに言い放つ。


「フォトンアームド!」


 ミカエラは権杖を上へと掲げる。すると権杖から光の粒子が溢れ出てミカエラ、そして側にいた俺を包みこんでいく。俺達が着ていた市民服は光となって消え、代わりに聖女の祭服、聖騎士の全身鎧が形作られていった。


 無力な一般庶民として生活する勇者が暴力を行使する敵の前に立ちはだかって、光の武具を身に纏う変身、格好良く名乗りを上げる。そんな子供向けの芝居に感銘を受けたミカエラは武装の奇跡を頑張って習得した。


 それがフォトンアームド。別の場所にしまっていた武具と今着ている服を入れ替える効果があるらしい。街の中で面倒事に巻き込まれてもこれで対処できる、とミカエラは自慢気に説明してくれたっけ。


 おかげで万全の状態で戦える。


「聖女ミカエラ、参上ー!」

「その護衛聖騎士ニッコロ、推参!」


 だからってこの名乗りは必要ないんじゃないかなぁ、と思わなくもない。

 ふ、決まった。とドヤ顔なミカエラが可愛いから付き合ってるけれど。


 で、名乗り口上を終えてすぐに俺は敵に突撃する。完全に不意をついたからかラミアの反応は遅く、とっさに回避行動を取ろうとする頃には俺は大蛇になった下半身へ戦鎚を振り下ろしていた。


 肉を骨ごと粉砕する生々しい感触と共に鮮血が飛び散った。絶叫をあげるラミアにとどめを刺そうと戦鎚を振り上げようとするが、その前にラミアへと背後から次々に矢が突き刺さる。


「マジックアロー」


 それがグリセルダ達が放った魔法の矢だと気付いた頃にはラミアは息絶え、その巨体を床へと沈めていく。


 他のラミアやスキュラ、スピンクスといった妖魔達は仲間の敵討ちとばかりに殺意を漲らせて俺へと襲いかかってくる。ラミアが俺に巻き付こうと素早く動くがここは屋内。障害物を上手く使ってかいくぐる。直後にスピンクスが俺を蹴り殺そうと襲いかかるが、盾でいなしてラミアの方へ投げてやった。


 俺が妖魔共と正面から戦っている間もグリセルダ達が攻撃魔法を仕掛ける。魔法の矢を放つマジックアロー、氷の弾を放つフリーズブリット、風の刃を放つウィンドカッターなど。全てが初級魔法ながらも複数名が精度良く連射するならそれは弾幕と化す。次々と妖魔達は仕留められていった。


「おのれ、小癪な……!」


 ラミアの一体がミカエラへと飛びかかるが、そんなのさせるわけねえだろ!


 一気に踏み込んだ俺はラミアの背中を足場に上半身に向けて疾走、奴が振り落とそうと身体を震わせる直前に跳躍した。そして全身のバネを最大限活用して渾身の一撃をラミアの頭に叩き込んでやった。


「さすがです、我が騎士」

「ま、これぐらいなら騒ぐほどでもねえな」


 仕留めたラミアの飛び散る血肉を避けたミカエラは歯を見せて笑ってきた。俺も手を振って答え、次の獲物に向かっていった。

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