表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/184

戦鎚聖騎士、騙され閉じ込められる

「勇者が魔王を封じたのが事実だとして、魔王がこの世からいなくなったならめでたしめでたしで変わりないじゃないですか」

「永久に封印し続けられたなら聖女ミカエラの仰るとおりなのですが、そうもいかなかった。魔王があまりに強大すぎて、過去にも何度か封印が解けかかったのです」


 今明かされた衝撃の真実。

 悲報、魔王は単に封じられただけで倒されていなかった。

 これ、聖地の市民ばかりか教国連合のどこにも絶対に伝えられないな。


「でも封印は解けてない。都度歴代の聖女が封印をかけ直していたから。それで合っていますか」

「そのとおりです。封印が破られる前に上掛けすることで処置してきました。そしてここ数年、急速な勢いで封印が解けかけていると分かったのです」

「成程。だから余に魔王の封印を解析して、改めて封印をかけ直してほしい、と」

「そのとおりです。聖女の出動を要請しようとしておりましたが、聖女ミカエラがいらっしゃった。これも神のお導きに違いありません」


 枢機卿も助祭も神に感謝しているようだが、俺は運命とかは信じてもそれが神の采配だとは思っちゃいない。あくまで選択の積み重ねで起きた結果、それが俺の持論だ。ミカエラも同じらしく、わずかばかり枢機卿を見る目が冷たく感じられた。


「さて、どうしましょうか?」

「え、応じる以外の選択肢があるのか?」

「余達は断って正式に派遣される聖女に任せてもいいでしょう。余は興味があるので応じたいですが、ニッコロさんが嫌なら考えます」

「別に急ぎの旅じゃない。俺はミカエラがやりたいならやるべきだ、と答えとく」


 小声で俺と相談したミカエラは枢機卿達に力強く頷いた。可愛らしくもあったが、とてつもなく格好良く、そして頼もしく見える。


「分かりました。不肖この聖女ミカエラ。務めを果たさせていただきます」

「おおっ。かたじけない!」


 枢機卿はたいそう喜ぶ。隣の助祭も安心して胸を撫で下ろした。

 そんな反応を他所にミカエラは色々と考え込んでいる。どうせどんな封印が施されているのか、封印された魔王がどうなっているか、を想像しているんだろうな。


 そんなだからか、この後あんな目にあうなんて俺達は想像もしていなかった。


 □□□


 善は急げ、とミカエラが言い出したため、早速俺達は封印の地へと案内された。なんと大教会の地下深くに封印されているんだそうだ。俺達は隠し階段から地下へと降りていった。案内は助祭が買って出てくれたため、彼とそのお付の神官達数名と同行する形で向かう。


「どうして聖地の中心に魔王を封印したんですか? もっと人が誰もいない山奥とかにすれば良かったのに」

「逆なのです。元は勇者様と魔王の決戦の地は草一本生えないほど荒れ果てていました。教会が封印された魔王を隠すためにこの施設を、そしてその上に教会を立てたのです。やがてここは聖地となり、人々が集まってきたわけです」

「へぇ~。魔王は移動させられないからやむにやまれず、今に至るってわけですか」

「そのとおりです。なので絶対に魔王の封印を解かれてはならないのです」


 助祭は決意がこもった強い口調で意思表示する。神官達も彼に同調して頷く。それに乗せられてこっちまで使命感にかられてしまいそうだ。俺はそこまで熱心な教徒でもないんだがな。


 かなり階段を降りた俺達の前には重厚で巨大な扉が立ち塞がっていた。助祭曰く、これはからくり機械を用いて外側からしか開けられない厳重な作りになっていて、万が一封印が破られても物理的に出られなくしているんだとか何とか。


「私共はここまでです。聖女様方が中に入られたら一旦この扉は閉じます。再封印を施した後にお戻りください」

「分かりました。でも復活した魔王が騙してくるかもしれませんね。何か合図を決めませんか? そうですね、二回長く扉を叩いて、二回短く叩いて、もう一回長く叩く、とかどうですか?」

「仰るとおりですね。では合図がありましたら扉を開きましょう」

「よろしくお願いしますね」


 神官達は総掛かりでからくり機械を操作、重々しく扉が開かれていく。石造りなのか金属の塊なのか、こんなに巨大な建物なんて破城槌でも持ってこないとぶっ壊せないだろうな。閉じ込められたら一巻の終わりだ。


 まずは俺が、次にミカエラが中へと入っていく。

 かなり古い作りのようだがところどころ朽ち果てているのが分かる。さすがに扉の内側まで手入れは出来ないか。

 そんな風に辺りを伺いながら進むことほんの十歩程度、俺は突然ミカエラに手を取られた。


「何を――」


 思わずミカエラ、つまり後ろを振り返って、ようやく気づく。神官共が慌てながらからくり機械を操作し、今にも扉が閉まろうとしていることに。

 飛び出してももう遅かった。無慈悲にも扉が目の前で閉まってしまう。


「くそっ! どういうことだ!?」

「ご苦労でしたな聖女様、聖騎士殿! 貴女方には再封印の礎となっていただく!」


 悪態をつくと向こうから物凄く小さな声でとんでもない返事があった。俺がその後いくら喚こうがそれ以上の反応は無い。


 俺達は、魔王封印の地に閉じ込められた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ