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聖女魔王、正体を表す

「それでミカエラ。願いは叶えられそうなのか?」

「願い……。リザレクションですか。掴めそうで掴めないもどかしい状態が続いてますね。何事も無かったら覚えられないままかもしれません」

「そうなったら二周目突入するか? それとも別の聖地にでも行くか? 魔王城に戻るんなら言ってくれ。引越荷物はまとめたいからな」

「……ええ、ええ! そうですよニッコロさん! 我が騎士には地の果てまで余についてきてもらわなきゃいけませんからね!」

「当然だ。今更何言ってんだって」

「ええ、本当。今更ですよね。ですが余はそれを実感する度に嬉しくなるんです」

「そうか……それは光栄だ」


 何にせよ最後の聖地に行けば一旦区切りがつく。その後のことはその後で考えればいいさ。ミカエラと一緒にな。


「警戒。こっちに何か来る」


 異変にいち早く気付いたのはティーナだった。いつの間にか籠の上で立って弓を構えており、一方向を注視する。俺とイレーネはそれぞれ馬車と馬から降りて得物を構え、ダーリアは空を哨戒してた飛竜を呼び寄せて騎乗、最後にミカエラが降り立つ。


 開けた大地の向こうからやってくるのは……鉄のゴーレム? 全力疾走でこちらに向かって走ってくるな。表情は見えないがとても必死そうなのは伝わってくる。あれはこちらに襲撃をかけるんじゃなく、何かに追われてるのか?


「アレは……魔影軍の副長ですね。軍長に背いて離反した正統派側です」

「なら仕留めていいかー? この距離だったら余裕だぞー」

「いえ、どうも様子がおかしいですね。しばらく待機してください」

「はいさー」


 ティーナは引き絞った弓を緩めて警戒態勢に戻る。


 距離が近づくに連れ、ゴーレムは後ろから攻撃を受けているのが分かった。魔法や弓、斬撃も飛んでくる。流れ弾はこっちに向かってきそうにないが、俺は盾を掲げて成り行きを注視する。


 ゴーレムは一定の距離で立ち止まった。どうやらそれ以上踏み込めば俺達が迎撃に移ると判断してだろう。実際その通りでイレーネが前傾姿勢になって今まさに飛び込もうとしてた。


 何をするつもりだ、と思っていたら何とゴーレムは跪き、大地に額を打ち付ける勢いで頭を垂れた。

 そして、とんでもないことを口走りやがった。


「申し訳ございません魔王様! 我の力及ばず、勇者めに敗北を喫しました!」


 俺は瞬時に状況を理解した。

 コイツ、ミカエラに何もかもなすりつけやがった!


 後から追ってきたのはなんとラファエラやグローリア達勇者ご一行。ということはあの優男が話に聞く勇者ドナテッロか。……やはりヴィットーリオの姿はない。彼がラファエラの元から離れたのは本当だったのか。


 魔影軍副長が勇者一行に追われて追い詰められ、苦し紛れにミカエラに縋ったってところか。もしくは魔王のミカエラにラファエラ達を対処させてまんまの逃げおおせる算段でも立てたか?


 案の定ミカエラは不機嫌さを全く隠さずに魔影軍副長を見下ろす。慈悲はない。


「魔影軍を割っての独断専行。正統派、でしたっけ? 貴方達にとって魔王はルシエラなんでしょう? 追い込まれたからって擦り寄るのは都合が良すぎませんか?」

「い、いえ! 我は改心致しました! これからは魔王様に忠誠を誓う所存です!」

「それでルシエラの方が有利になったらまた手のひらを返すくせに。そんな恥知らずはルシエラはおろか余にも不要です」

「お、お慈悲を……!」


 どうやらミカエラにとって一番許せなかったのは日和見したことだったようだ。ルシエラに忠誠を誓うままだったら妹思いのミカエラは猶予を与えたかもしれないが、あの様子だとまたルシエラを裏切らないとも限らんからな。


「シャイニングアローレイ!」


 逃げ出す魔影軍副長の背中めがけてミカエラは光の刃を放って一刀両断。鉄くずへと姿を変えて大地に散らばった。そんなあっけない裏切り者の最後を見届けずにミカエラはラファエラ達を見据えた。


「ミカエラ……」

「お久しぶりですねラファエラ。ヴィットーリオをその手にかけたって聞いてましたが、元気そうでなによりです」

「っ……! そんなことより、さっきのは何?」

「何って言われましても。ただ裏切り者を粛清しただけですよ」


 あっけらかんと言い放つミカエラに驚くラファエラ。次第にミカエラが何を言っているか理解したようで、ラファエラは表情を厳しくしていく。それは絵画の題材にもなる討ち果たすべき相手と対峙した聖女のものだった。


「貴女が魔王なの?」

「はい、そうです」


 ミカエラはこんな状況でもいつものように連中に微笑む。


「余が魔王ミカエラです」


 そして、堂々と正体を暴露した。


 あーあ、出会っちゃったか。

 選ばれし聖女と勇者。選ばれなかった魔王。

 結末がどうなろうとこの先はもう元には戻らないな、という確信があった。

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