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勇者魔王、後ろから競争相手を強襲する

申し訳ないですがep115「戦鎚聖騎士、グランプリの強制参加が決定される」が丸々抜けてました。

先にそちらをお読みいただきますようお願いします。

 サウザンドドラゴンがもはや競うもののいない中でスタート兼ゴール地点を横切ること一回、二回、次第に観客のざわめきが怒声へと変わっていく。ふざけるな、なめやがって、お前なんぞ返り討ちにしてやる、など言いたい放題だ。しかしどれも口だけで虚しいばかりだった。


 しかし、いよいよゴールに差し掛かろうとしたその時だった。


「超竜軍の諸君!」


 会場にそんな声が轟いた。


 凛として堂々とした高い声はもはや暴動寸前にまで興奮を増したドワーフ達を黙らせ、更には騒動の元凶であるシルヴェリオすら視線をそちらに向ける。


 上空を飛んでいたのは飛竜を駆るダーリアだった。

 部下は連れていない。単騎で彼女はゴールの向こう側にいた。

 腕を組んで絶対の自信が伴った笑みを浮かべる姿からは頼もしさを感じた。


「我らドワーフは貴方達の到来を歓迎する! 繰り返す、盛大に歓迎しましょう!」


 それは恐れを一切感じさせない宣誓だった。


 人間の俺ですら圧倒されたぐらいだ、ドラゴンの脅威を改めて思い知らされたばかりのドワーフ達にとってはいかばかりか。首長嫡男のように僻む者もいるだろう、あまりの輝きに嫉妬する者もいるかもしれない。しかし、きっと多くのドワーフにとっては闘志を奮い立たせる喝入れになったに違いない。


 ダーリアは言いたことを言うと踵を返し、本戦選手控室の方へと戻っていく。シルヴェリオはその後にゴールをくぐったが、彼の視線はダーリアへと向けられていた。どうやら彼女は千年竜の意識を自分に向けることに成功したらしい。


 □□□


 第二レースのスタート位置、先程までとは段違いの緊張感が伴っていた。これまで仲間内では打ち解けたり試合への意気込みを顕にしたり精神集中したりだったが、今回は選手一人ひとりが対戦相手全員に注視していた。


「今度はどいつが超竜軍の刺客か探ってるってところか」

「少しでも情報を集めないと次は自分の番だって思い知ってるんだろうね」

「で、イレーネはどいつがドラゴンが化けてるって分かるか?」

「分からない。出た所勝負だよ。それにもし分かってもやることは一緒さ」

「ちょっとスタートを遅らせて最後尾から見定める、だろ」

「そう。けれど先頭からはあまり離されないようにね。本戦に出場出来なかったら意味がないから」


 スタートの並びはこれまでの大会の実績などを加味して決められるらしく、無名の俺は当然ながら最後列。レースには不利なんだが目的を達成するためには好都合だ。あとアーマードワームの飛び方が特殊なので、実は固まってない方がいい。


 緊迫した空気の中、第二レース開始の幕が切って落とされた。飛竜が次々と空めがけて飛んでいく中、いち早く先頭に躍り出た竜騎士と飛竜の様子が何やらおかしい。俺の目が確かなら竜騎士と飛竜の身体が蠢き……なんだか合体してないか?


「成程ね。今度の刺客はいきなり先頭に出て追走を許さない作戦で出てきたのか」

「ありゃ一体なんだ? ドワーフじゃねえのは確かだけどさ」

「ドラゴンライダーもどきって僕は便宜上呼んでたけれど、正式名称は別にあったと思う。竜の胴体から人型の何かが生えてるらしい。幻獣魔王が勇者に負けたのをきっかけに竜騎士に対抗して進化? 自己改造? したのがきっかけだそうだね」

「文字通りの人馬一体ってやつか。ともかく化けの皮を自分から早々に剥がしてきたんだ。とっととご退場願うとしよう」


 アーマードワームは闘気を迸らせてから後方へ一気に噴射。急加速し始めてスタート広場を端から端まで助走し、床を蹴り上げて上昇を開始した。速さはみるみるうちに増していき、強烈な空気抵抗に襲われていく。


 少し経つと最後尾の集団に追いついてきた。そのまま一気に追い抜こうと少し進路を変えたが、相手はさせじと行く手を遮ってきた。下は河で両側は断崖絶壁、上に抜ければコースアウトで失格だ。アーマードワームは図体が飛竜よりもデカいから、避けて通るのは極めて困難だろう。


「馬鹿だねぇ。妨害が許されるなら前に飛び込んでくるなんて自殺行為なのにさ」

「え?」

「さあ、今回も頼むよ」


 イレーネのつぶやきが聞こえた直後、アーマードワームの口から何かが放射された。すると急激に冷えてきたのですぐにそれが凍気だと分かる。この鎧の竜、ドラゴンのようにドラゴンブレスまで使えるのかよ。しかも属性付与されたやつ。


 凍気の吐息は瞬く間にドワーフの竜乗り達へ襲いかかった。大半は吹雪に襲われて飛竜の制御を失い、河に落ちたり崖に激突していく。勿論高速で飛んでる俺や耳にそんな情報は入らない。あくまで想像の域は超えない。


 かろうじて回避できた者もいたが、そんな奴にはすれ違いざまにアーマードワームの爪が襲いかかる。餌食になったドワーフが悲鳴と血しぶきをあげて墜落していくのが視界の端に映った。


「完璧にやってることが悪役だなオイ」

「魔王だった僕に今更何を言ってるんだろうね」

「まあいっか。俺達は限られたルールの中で死力を尽くしたってことで」

「この勢いで有象無象の連中はふっ飛ばしちゃおっか」


 まあいい。この勢いで前を飛ぶ奴らを一網打尽にして超竜を仕留めるとしようか。

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