聖女魔王、正体を明かす
「実は余は魔王なのです」
「はい? 今何つった?」
「ですから、余は魔王なのです。聖女になりたかったから今ここにいます」
「聞き間違えじゃなかったのかよ……」
超悲報。俺、特大級の地雷女のお守りを任された件について。
落ち着け。とりあえず一旦冷静になるんだ。
こういう時に思考を停止したり現実逃避するのは馬鹿だからな。
すー、はー、すー、はー。
よし、一旦状況を整理しよう。
まずはこいつ、新たな聖女様との出会いからだな……。
□□□
パラティヌス教国連合。それは聖パラティヌス教国を中心にした連合のことだ。
聖パラティヌス教国では国王とか貴族なんざいない。何故なら教会と主の教えを絶対とする宗教国家だからだ。代わりに教国で頂点に君臨するのは教皇、または女教皇になり、同時に主の代行者ともなる。
主の教えははるか遠い国でも信仰されてるから、教国の影響力は計り知れない。例えば少し離れた王国で王様が白と言ったところで教国が黒と言えば黒になっちまう。破門されればもう生きていけないってぐらいヤバい。なもので、国王が教国を恐れて教皇に跪いて頭を垂れる、なんざよくある話だ。
教会じゃあ聖女とかいう存在がとってもありがたがられてる。
なんでかって? そりゃあ神の奇跡を身に宿す、救済の代行者だからだな。
聖女の奇跡は人の傷を癒やしたり、災害を予言したり、瘴気を浄化したりと、凄いことばっか出来るみたいだ。記録を紐解いたら歴代の聖女は俺なんかが考えつかないとんでもないことをしでかしてるに違いないね。
聖女は一世代に複数人現れる。とは言え存命の聖女を合わせても両手の指で数えられなくなるぐらいまで増えた例はさすがに無いみたいだけどな。とにかく、教会はもうずっと昔からそんな救済者になるだろう少女を血眼になって探し回ってきたってわけだ。
聖女の素質がある奴が全員聖女になるわけじゃあない。厳しい教育と修行の果てに教会から認められることが条件だ。そんで偉大なる聖女として歴史に名を残すのはそん中でもほんの一握り。いやー、厳しい世界なものだ。
とは言え、聖女候補者を輩出したとなればとてつもなく名誉なことだ。教会から手厚い援助金が支払われるしね。だから一般庶民や貴族とか関係なく、あらゆる国、身分の少女が聖女候補者を育成する学院へとやってくることになるわけだ。
一方で、そんな聖女なんだが、人類にとっていなくてはならない存在だけあって、その守護者もまた特別な奴が担うわけだ。それが聖騎士と呼ばれる連中で、コイツ等はやっぱり同じ学院に通うことで聖女をお守りするに相応しいか試されるわけだ。
で、この聖騎士候補者なんだが、特に前提条件は無い。奴隷だろうが犯罪者だろうが一国の国王だろうが、誰でもなれる。その代わりそんな世俗の経歴や身分なんざ関係ねえとばかりに厳正にふるい落とされる。
なお、一応建前は、だけどな。このあたり振り返ってたらきりがないしな。
ここまでが前提条件。
俺、ニコロまたはニッコロは聖騎士を目指して教国にやってきた。
別に人類を救いたいだの聖女に剣を捧げたいだの、高尚な理由を掲げるつもりはねえよ。単に聖騎士になっちまえば莫大な給料が手に入るからだ。よしんば聖騎士になれなくなって聖騎士候補者として優秀な成績を修めてりゃあ騎士として引く手あまただからな。ま、安泰な就職先確保のためってわけさ。
まあそもそも俺って教国連合を構成するどこぞの国で貧乏貴族の三男ぐらいだったからな。一般庶民どもみたいに何としてでも成り上がりたいって根性もねえし、やんごとなき連中みたいに崇高な使命があるわけでもねえ。せいぜい生臭騎士として悠々自適な生活を送るべく、適当に頑張るとするわ。
そんな感じで聖女および聖騎士候補者を教育する教育施設、通称学院に入ったのはいい。ここですぐさま足切りされそうなカス共や逆に明らかに今後凄いことやりそうな奴らとは距離を置きつつ、学院生活を送ろうとしたわけだが……。
「あ、隣いいですか? いいですよね?」
そんな時にこいつ、ミカエラと出会った。
久々のハイファンタジーになります。
しばらくは毎日投稿します。