第3話 勝手過ぎるんだけど?
第3話 勝手過ぎるんだけど?
多くの女子からの告白を断り続けて
3年目、少しずつ滝都が断る理由の、
「好きな人がいるので。」
が噂になっており、学校中の女子で
誰を好きなのかという捜索が始まってきた。
「原谷くんの好きな人って誰なのかな。」
「まさかとは思うけど、あの幼馴染み
かな?」
「いやいや、ないない。お互い距離ある
し、あんま一緒にいるとこ見たことない。」
「たしかに〜。」
ちっ!好き勝手言いやがって。俺の好きな
人は誰にも教えてやるかよ。
「流石に嘘なんじゃない?」
「え〜。皆んなに言ってるのに?」
「逆に皆んなに言ってるからよ。」
「ああ。」
とまあ、色々と捜索が行われているが
誰一人として本人に聞き出そうとする
人はおらず、難航している。そうしている
内に男性教師に
「この中学の女子と先生が全然勉強に集中
いないから放送室でも借りて発表して
やれよ。俺らが困るんだよね。悪いな。」
と言われ、渋々承諾した。
「なあ、Eさん。昼に放送室借りても
いい?」
「え、あ、うん。良いよ。原谷くんなら
いつでも貸すよ。」
こいつ、心の声うるさ!俺にドキドキして
めっちゃ早口で喋ってるわ。
「そうか。ありがとう。そんな時間
掛けないから。」
恐ろしいことに昼休みになる頃には、
滝都が放送室を借りる事が知れ渡っていた。
昼休みになり、珍しく男女とも教室で
大人しくその時を待っていた。
滝都が話し始める。
「ええ、3年3組の原谷滝都です。
こんな事普通はわざわざ放送する事では
ありませんが、特別に放送します。
皆知っていると思いますが、俺は
学校中の女子及び女性教師から求愛されて
います。」
各教室がざわめき出す。
「お、おい、今先生って言わなかったか?」
「ちっ!モテ自慢かよ!」
「わざわざ発表する事か?」
滝都が続けて、
「その際毎回断っていますが、その理由を
好きな人がいるからとしています。」
女子がざわつく。
「そ、そうよ。好きな人って誰なのよ!」
「や、やっと聞けるのね。」
「絶対その女より良い女になって好きに
なってもらうんだから!」
そして、
「その好きな人なんですが、この中学に
います。」
さらに教室がざわつく。
「その人は、」
急に教室が静まる。
「……、その人は3年5組の…。」
3年5組の女子が色めき出す。
「私?」
「うちよ!」
「あんたわけないわ!私よ!」
3年5組以外は、
「嘘。」
「そのクラスってあの幼馴染みがいる
クラスじゃないの!」
気絶する女子まで出た。
そして、
「その人は3年5組の金原日菜未さん
です。私からは以上です。」
学校中が女子の叫びに包まれる中、
「勝手過ぎるんだけど!」
と呟き、日菜未は教室を飛び出した。
学校中叫びが止まった頃、女子は3年5組に
集まった。滝都の意中の人、"金原日菜未"の
顔を拝む為。しかし、もうすでに走り去った
後であるため誰も見る事は叶わなかった。
日菜未を知る3年は、
「嘘でしょ!?」
「あの幼馴染みなんて!」
「あり得ないわ!」
など、受け入れられない様子であった。
男子には金原ファンが数十名くらいいるので
男子も男子で沸き立っていた。
日菜未は放送室へ走りながら、
「なんなのよ!勝手に言って!私を
揶揄ってるの!?」
と愚痴をこぼしていた。
滝都は言う事を言い終えたので放送部の人に
放送室を返した。
「ありがとうね。」
放送部員の女子は泣きながら、
「本当ですか?今の。」
と縋るように言った。
「ああ。紛れもない事実だよ。ごめんな。」
謝られるとバツが悪くなったのか、
「い、いえ。別に原谷くんが謝る事
じゃないよ。」
と涙を拭きながら答えた。
「はぁはぁ。滝都、ちょっと来なさいよ。」
息を切らしながら、日菜未が言った。
「ひっ、日菜未!?」
思わず驚いた。
「と、とにかくついてきなさいよ!」
「あ、はい!」
他に女子がついてきてないか気にしながら
日菜未についていく滝都。
女子に見つからずに学校近くの公園へきた
二人は話し始めた。
「あれ、なんなのよ?」
日菜未が少し落ち着いた感じで聞く。
「あ、あれか。あれは事実を言っただけ
だけど?」
日菜未はそれを聞いて少しキレそうに
なったが、抑えた。
「勝手なことしないでくれるかな?」
「悪い。でも先生に言われて仕方なく。 」
「は?こんな時に先生に負けるの?超人の
くせに?」
そこでそれを言うかよ。
「先生に歯向かえば学校生活は危うく
なる。」
「すでに危ういじゃないの?」
「まあ、たしかに。」
「たしかにじゃないわよ!この後どうする
のよ!」
あ、これのあとどうするか決めてなかった。
このままここに居ても午後の授業をサボる
事になる。俺は良いけど、日菜未はダメだ。
しかし、お互い学校中から狙われている。
「うーん。戻ろう。」
「はあ?」
想定外の答えに驚きを隠せない日菜未。
「どうゆうことよ!」
「戻るしかないだろ?普通。」
ここに来て普通を取り上げる滝都。
「普通って……、この状態は普通じゃない
わよ!」
日菜未の意見を理解しつつ淡々と答える。
「そりゃあそうなんだけど、授業は大事
だし、それにこのままサボれば明日から
学校に行けなくなる。」
「たしかにそうね。」
正論に頷くしかない日菜未。
「色々言われるかもしれないけど、
ごめんな。一緒に耐えてくれないか?」
少し照れた顔で言う滝都。
「前から色々言われてるから平気よ。」
滝都の言葉にキュンとしてしまった日菜未。
「行こうか。」
「うん。」
2人は手を繋ぎながらもう少しでチャイムが鳴る学校へ急いだ。
なんだかんだで雨降って地固まるといった
感じで丸く収まった告白。次回俺だけ超人な
世界第4話優しすぎるんだけど?
第3話 完