アナザーストーリー 良き答え
アナザーストーリー 良き答え
第5話「恐ろしすぎるんだけど?」より、
同じ高校に進学し、いちゃつきながら
青春を謳歌し、同じ大学に入り支え合い
ながら滝都は首席で、日菜未は普通に
卒業した。滝都と日菜未はそのまま結婚し、
滝都は27歳で起業する。滝都の会社、
「株式会社超都」は起業後瞬く間に
成長し5年も経たずに年商1500億を超える。
社員は滝都が直々に選抜した精鋭200人。
滝都と日菜未はかなり裕福な生活を送ること
となった。から。
ある日の夕飯の会話。
「どうする?」
ご飯を食べながら難しい顔をする日菜未。
「日菜次第よ。」
主語がない質問も心を読めば簡単に分かる。
悩んでいる事は子供を作るかどうかである。
正直、2人とも欲しいと思っているが懸念
材料がある。それは[滝都の超人能力]である。
「もし持ったら怖いよね。」
子供が超人能力を得る、もしくは父親が超人である事でいじめに遭うのではという2つの
悩みがある。
「そうなんだよね。俺みたいに後天的なら
いいんだけど、先天的だった場合は…。」
「そんなの嫌よ!」
滝都の言葉を遮るように訴える日菜未。
「……ご、ごめん。」
いきなり声を荒げた事を恥じた日菜未。
「い、いや。そりゃあそうだよね。」
超人能力がある子供が産まれるのが嫌=超人能力を持つ滝都に警戒心がある。という事で
あることに気づいた滝都。
「べ、別に貴方の事は嫌じゃないのよ?」
明らかにしょぼんとした滝都を気遣う
日菜未。
「やめようか?」
この会話は結婚してからずっとしている。
親からの孫見たいプレッシャーが強まり、
かなり焦り出している。しかし、お互い
納得いかなければ意味がない。
「今日はやめよう。」
この話はこの日はもう出さなかった。それ
どころか会話さえしなかった。
お互い夜の営みが嫌いではない。というか
むしろ大好きである。しかし、毎回避妊
している。妊娠を怖がっての事である。
良き答えはなんなのか。分からない。
「おはよう。」
朝、寝起きの日菜未を笑顔で迎える滝都。
朝食を作っている。
「おはよう。あなた。」
寝起きだが、見た目がきっちりしている。
起きてすぐに身なりを整えたのだろう。
いつもの事だ。俺が早く起きた時のみ
日菜未の寝癖を見れる。俺ら夫婦は
新婚の頃から寝起きではイチャつかない。
お互いいい思いをしなかったからだ。
ある程度見た目を整えてからの方が
お互い心地よいと気づいたからだった。
俺は社長だが決していわゆる重役出勤は
しない。何故なら仕事が好きだし、部下に
示しをつける為でもある。
「おはよう。」
もうすでに起きていた滝都は朝食を作って
いた。滝都の作るご飯はとても美味しい。
さすが超人と言ったところだろうか。
「おはよう。あなた。」
私はいつからか、滝都をあなた呼びして
いた。新婚旅行の時のおふざけで呼んだのが
最初だったけど、なんとなく楽しくなって
癖になったのだろう。まあ、嫌じゃないし。
相変わらずかっこいいな。結婚してもう
5年近く経つのにまだドキドキしてる。
超人能力の一つかな?だからこそ、
寝癖とかのだらしない姿は見せたくない。
でも今日は見られた。恥ずかしいけど
ちょっと嬉しいかも。滝都はいつも早く家を
出る。社長なんだからもうちょっと遅くても
誰にも怒られないのになって思う。もっと
朝に話したいし。でも仕事だから仕方ない。
浮気なんて疑った事ないけど、会社でも
モテてるだろうなと思う。だって中学、
高校でどれだけ思い知らされたかって感じ。
でも、やっぱり気になる。
「おはよう。」
と、すれ違う社員に言う滝都。
「おはようございます。社長。」
と、慌てて返す社員たち。
歩きながら社長室へ向かう。会社がある
ビルは8階建。社長室は4階にある。
エレベーターは完備されているが、社長は
一度も使った事がない。社員の仕事の中で
多くの荷物を運ぶ事があるので身軽な社長は
使う必要がないというポリシーである
らしい。このビルは少し特殊で、社長の
お客様用のエレベーターと階段がある。
それはどちらも社長室がある4階に直結して
いる。4階は社長室の他、待合室や秘書室等、
普通の社員は入らない階になっている。その
ため専用のエレベーターと階段がある。
お客様が来られない時は社長はより多くの
社員と会うため、普通の階段を使っている。
無論、普通の階段と専用階段は交わらず4階
で鉢合わせることもない。社長室は1番奥にある。扉の前には受付がいる。彼女は社長が
今社長室にいるのか、いないのか。入って
いいのか悪いのかを伝える役である。内線で
社長室へ繋ぐ事もある。社長室の隣には
小さめの部屋がある。秘書室である。小さめ
と言いつつも社長室に比べてなので普通に
大きめである。1人で使う部屋とは思えない。
そう、秘書は1人ではない。3人だ。決して
社長の趣味とかではなく会社にとって必要で
あるとなっているからだ。それぞれ、
スケジュール管理などを担っている。
3人の秘書のお陰で社長は(超大手の企業の
割には)あまり忙しくしていない。
「おはようございます。社長。今日の
スケジュールを確認致します。」
秘書の1人、天野奈々はスケジュールを
社長に伝える役である。
「そうか、分かった。ありがとう。」
スケジュールを確認して、秘書に感謝する。
「いえ。仕事ですので。」
少し照れ気味に謙遜する天野。
「失礼します。」
社長室を後にし、秘書室に戻る天野。
「社長、失礼します。」
「どうぞ。」
「社長、今回のプレゼンによりうちが
通りまた儲かりそうです。」
新しいプログラムを他社へプレゼンに行った
結果を伝えにきた秘書、坂木真弥。お金が
増えることに対して目がない。
「そういやらしい言い方をするな。」
いつもの事だと分かっているが笑って注意
する。
昼になり、仕事がひと段落したのでご飯に
しようと考える滝都。
「社長、失礼します。」
「どうした?」
「あ、あの。お昼ご飯はまだ食べてない
ですよね?」
確認をしてきたのは秘書の笹田奈美。
ご飯担当という訳ではないがいつも彼女は
ご飯情報を持ってくる。
「今日は、ここから徒歩5分の和食屋さん
です!」
和食屋か。悪くない。
「そこにしようか。」
「ありがとうございます。みんな呼び
ますね。」
ん?皆とは?
「天野さん、坂木さん!」
あ、秘書たちか。
「呼びました?」
「お金儲けですか?w」
「ご飯ですよ!たまには皆で行きましょうよ。」
「何処に行く気ですか?」
「ちょっとやばいじゃないですか?」
「何がです?」
天野は秘書3人と社長の組み合わせで
ご飯屋さんに行くことに対し懸念がある
そう。
「社長の奥さんとか、会社の雰囲気とかに
悪いじゃないですか?」
「まあ、たしかにな。」
「えぇ!私は一緒に食べたいですよ〜。」
「行くタイミングを一緒して、席と会計は
別にしよう。」
天野の意見はごもっともだ。だから、笹田の
気持ちを尊重しつつ、このアイデアにした。
「仕方ないですね。」
さすが笹田だな。美味いご飯屋さんだ。どう
やってみつけてくるんだか。
「社長、何食べました?」
会社に戻るやいなや質問する笹田。
すすめただけあって確認したいのだろう。
「豚の生姜焼き定食だ。」
「あ、やっぱりですか?」
「おう。」
「あれ、生姜焼きのタレが美味しいん
ですよ!」
まあ、確かにな。
「よし、そろそろ帰るか。」
時刻は20時前。他の社員の大半は帰って
いる。残りは残業したい人のみだろう。
車に乗り、まっすぐ帰宅する。
「ただいま。」
滝都の声を聞き、玄関へ急ぐ日菜未。
「おかえり。」
少し息を切らしている。そんなに急がなくて
いいのにな。
「おつかれ。」
「あ、ありがとう。あなたもおつかれ様。」
「良い答えってなんだろうね。」
そうだな。子供の必要性と危険性の
バランスが取れればいいんだけどな。
「難しい。でも、日菜のために早く
決めないとね。」
30年後
「何でそうなったの?」
と、日菜未嘆いたのは結果、
秘書3人と日菜未と一夫多妻状態に
落ち着いたからであった。無論、子供は
なし。
アナザーストーリー 完
アナザーストーリーまで読んでいただきありがとうございました。これで完全に「俺だけ超人な世界」は終了です。是非別の作品も読んでいただけると嬉しいです。