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9番 サード

作者: リトルムギ

 グローブに収まらなかったボールが転がっていく。もうどれだけ頑張ったところでアウトにすることはできない。またエラーしてしまったのだ。少しだけ残っていた楽しい気持ちが体からすっと抜けていく。ボールを拾ってピッチャーに返せば、わずかな時間のはずなのにたくさんの情報を拾ってしまう。エラーに呆れ驚くほどなで肩になっているピッチャー、交代を考えているのかコーチと仕切りに話す監督、何回目?練習しろよと目で訴えかけてくるファースト、もう知っていたというふうに口を一文字に結んでうなずくキャッチャー。小学生の時は怒鳴っている父の顔が、これでもかとアップで映し出され怯えていたのに、中学生になるとそれだけでは済まず、いろいろな人の情報が映し出されるようになっていた。

 今、当時の僕の視力を考えると、監督の出すサインが見えるか見えないかというほどのものだった。目から見える世界なんて知れているはずだった。なのに全てが見えた。グランド上にいる人はもちろん、遠くで応援する保護者の顔さえも見えた。僕の心は、救いようのないほどに愚かだった。

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