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95 突然の告白!


 九十五話  突然の告白!



 なんということでしょう。

 エマがオレのボディーガードを初めて大体1週間くらいだろうか。

 杉浦を含めた取り巻きによるオレへの嫌がらせの数が極端に減ってきているのだ。

 オレはその理由を多田から聞いて驚いた。



 「ほら、福田って休み時間とかになったらすぐに1組のエマって子がどこかに連れ出すでしょ? だからだんだんといじめる気が無くなってきたんだって」


 「まじ?」


 「うん。 あ、でも杉浦はまだなんか企んでるっぽいけどね。 ただ周りの子達が飽きてきてるのは本当っぽいよ。 なんかウチがこういうのもおかしいのかもしれないけどさ、よかったね」


 「ーー……あぁ」



 なんだろう、最初の方は取り巻きたちもエマに罵声を浴びせたりしていたのだが、エマ必殺の『難しい日本語ワカラナイ。 せんせーに聞くからもう1回言って』攻撃によりそれも少しずつ減少。 今ではエマが登場するともはや敵視さえせずに溜め息をついて諦めているくらいだ。


 まぁ……それは本当に良いことなのだが。

 オレにはどうしても我慢ならないことがある。

 それはーー……


 放課後。



 「ダイキーー!! かーえろーー!!」



 この時間も速攻で正義の痴女エマが登場。

 その姿を見た取り巻きたちはもはやオレに構うことなくささっとランドセルを背負って帰っていく。


 そう、これはいいんだ。

 問題は次なんだ。



 「くぅうううううう!!!!」



 エマに腕を引かれながら教室を出ていくオレを歯を食いしばりながら見ている女子が1人。

 ーー……ドSの女王・小畑だ。


 エマがオレを独占し出してからというものの、女王様によるご褒美もめっきり無くなってしまったのだ。

 理由はただ1つ、三好と多田が必死に抑えているから。


 この状況でオレの前に現れてみろ、きっとそんな強気な小畑を杉浦は欲しがり味方に組み込もうとするだろう。

 しかし三好や多田から聞いた話だと小畑は杉浦のことが嫌いーー……絶対に断ると断言。

 なんでも小畑曰く、杉浦は以前サニーズというアイドルグループのことをバカにした発言をしていたらしく、それ以来杉浦のことは遺伝子レベルで嫌いと言っていたらしい。


 しかしもし小畑が杉浦の誘いを断ってみろ?

 今おそらく一番イライラしている杉浦だ。 いじめの対象を小畑に切り替える可能性もないことはない。


 なのでオレはそれを三好と多田に話し、小畑に極力杉浦たちの前ではオレに近づかないほうがいいと説得してもらったのだ。

 

 ーー……オレも女王様の蹴りや罵りが恋しいぜ。


 そう思いながらもオレはエマに手を引かれながら下駄箱へ。

 今日も平和だったなぁと脳内で感想を述べながら自分の靴に履き替えていた……そんな時だった。



 「ーー……!? うぉ!?」



 突然後ろからランドセルをぐいっと引っ張られたオレは尻餅をつく。



 「ーー……え?」



 振り返るとそこには小畑。

 オレの耳元に顔を近づけてきて、妖艶に囁く。



 「いつものところきて」


 「ーー……!!!」



 それだけ伝えた小畑はすぐにその場から離れ、いつものところ……図工室前の女子トイレのある方向へと小走りで向かっていく。


 こ……これは!!! 我慢の限界なんですか女王様ぁああ!!!!


 オレの心臓が激しく脈打つ。

 小畑……やはりお前は将来有望な女王様だよ。


 無理やりオレを連れて行こうとするとその姿は絶対にエマに目撃されて失敗に終わる。

 だから一瞬の隙をついてオレだけにコソッと伝え、その後の行動を下僕……いや、オモチャたるオレに委ねるというのだ!!


 そんなの……そんなの行くに決まってんだろおおおおお!!!!!


 オレは即座に立ち上がりエマのところへ。



 「ん? どうしたのダイキ」


 

 エマがいつになく真剣な表情のオレを見ながら首をかしげる。



 「エマ、ちょっとオレはトイレに行ってくる」


 「え? あ……うん」


 「それと、少し長くなるかもしれないからその時は申し訳ないが先に帰っておいてくれないか?」


 「ーー……なんで? お腹でも痛いの?」


 

 エマがオレの腹部に視線を移す。



 「まぁちょっと」



 オレは軽くお腹を摩りながら再び上履きにチェンジ。

 このままエマと話していてもいつ杉浦の取り巻きが来てもおかしくないので急いでいつものところ……女王様がお待ちになっている聖域へと駆け足で向かった。



 ◆◇◆◇



 

 「あはっ、来たんだ。 偉い偉い」



 女子トイレの奥の個室の扉を開けるとそこには便座に足を組んで座っていた小畑。 にこりと微笑み立ち上がるとパチパチとオレに拍手を送る。



 「じゃあここ……私が座ってたとこ座って」


 「は……はい」



 オレはどきどきしながらさっきまで小畑が座っていた便座の上に腰掛ける。



 あぁ……小畑の体温が残っててほんのり温かい。 幸せ。



 「あ、そうだ、小畑さん。 下駄箱でエマが待ってるからその、出来るだけ早めにお願い……します」


 「なに? 福田あの子と付き合ってんの?」


 「いや……そんなわけでは」


 「好きなの?」


 「いや……好きは好きでも恋愛対象ではないっていうか」


 「じゃあ私とエマって子、どっちが好き?」


 「ーー……え?」


 「ねぇねぇ」



 小畑は妖艶に微笑みながら顔を近づけてくる。

 オレはなんと答えるのが正解か脳をフル回転させていた……その時だった。



 「あーあ、あのエマだっけ? あいつが現れてから杉浦くんの機嫌めちゃめちゃ悪くなったよねー」

 「わかる! なんか杉浦くんの私らに対する態度も悪くなってない? ちょっとムカつくー」



 この声は杉浦の取り巻きの女子……ブス2人の声だ。


 声を聞いたオレと小畑は互いに顔を見合わせる。

 ブス女2人は会話をしながらも別々の個室トイレへ。 入りながらも会話を続けている。



 「ーー……いいこと思いついた」



 小畑が小さく呟く。



 「え?」


 「あの声って斉藤さんと瀬川さんだよね?」


 「多分」



 確かそんな名前だったような気がする。 

 ブスの名前なんて覚えてるほど暇じゃないからな。



 「私、あの2人の杉浦に好かれようと必死になってるとこ嫌いだったんだよねー」



 小畑は斉藤と瀬川……ブス2人のいるであろう個室に視線を向ける。



 「そうなの?」


 「うん。 だからちょっとイタズラしちゃおうかな」



 そういうと小畑はオレの手を掴んで立ち上がらせ、そのまま静かに男子トイレへと移動。

 男子トイレ個室にオレを隠して少し待っててと言い残してその場を離れる。



 一体何するんだろうと考えていたオレだったが……



 「ねぇ知ってるー? 杉浦くんってぇー、斉藤さんと瀬川さん、どっちを彼女にするか悩んでるんだってー!!!! だからぁ、先に告白してきた方を彼女にするかもみたいなこと言ってたよぉーー!!」



 「ーー……!?!?」



 聞こえてきたのはかなり高めの声を出した小畑の声。

 驚いているとお腹を抱えた小畑が笑い声を漏らしながら戻ってくる。



 「ぷぷ……あははははは!!! 私の声聞いたあの2人、さっきまで話盛り上がってたのにピタって止んでやんの!!」


 「ちょ、ちょっと小畑さん、聞こえるって」


 「うるさい福田」



 小畑がその可愛らしい小さな手でオレの口を抑え込む。


 

 あぁ……!! 唇越しに小畑の手の感触だあああ!!!

 

 感激していると女子トイレの方から声が聞こえてきた。



 「は!? 私が杉浦くんと付き合うんだから邪魔しないでよ!」


 「待って!? 私の方が先に好きって言ってたんじゃん!! 私が先に告白するんだから!!!」



 ーー……うわぁ、一気に修羅場だよ。


 その後ブス2人は口論しながらどこかへ。

 このイタズラが余程満足したのだろう……いじめる気のなくなった小畑はその場でオレを解放し、ニヤニヤしながら2人のあとを追っていったのだった。


 それにしてもあれだよな……1回だけでいいから蹴ってくれても良かったのに。


 そう思いながらもオレは下駄箱へ。

 エマがまだ待っていてくれたので一緒に家に帰ることにしたのだが、その途中オレは衝撃の言葉を聞いてしまう。



 「あのさダイキ。 エマとダイキってさ、結構仲良くなったじゃん?」


 「うん」


 「じゃあさ、もしエマが今から変なこと言ったらダイキ信じる?」


 「ーー……なんだよ」


 「例えば、エマの見た目はこんな子供だけどさ、中身……つまり魂が他の人間のもの……とか」




 「なにいいいいいいいいいいい!?!?!?!?」




お読みいただきありがとうございます!

一気に物語が動き出しましたね!!

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感想やブックマークもお待ちしております!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 女王様、小畑ちゃん! どうして!蹴ってくれないの!! そしてエマからの爆弾発言。 まさかな……そんな……
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