94 ロリコン魂!!
九十四話 ロリコン魂!!
エマに案内された場所はリビング。
これは親登場かと思い少し気合いを入れて中に入ったのだが、中にそれらしき人物が見当たらない。
「あれ、親は? 仕事?」
いるのはエマと、エマの妹の金髪幼女……天使のみだ。
「親は仕事の関係上ほとんどが海外なんだ。 だから基本的には家政婦さんが平日に来てくれて、掃除や洗濯みたいな家事はやってくれてるんだよね」
「へぇー」
家政婦さん雇うとかめちゃめちゃ金持ちじゃねえか。
「あ、ていうかさ……」
オレは少し前のことを思い出す。
「なに?」
「なんでオレが来た時そんなに焦ってたの?」
なんかかなり急いでたように見えたけど。
「あー、それは当たり前じゃない」
エマがまっすぐオレを見つめる。
「ーー……なんで?」
「この家にはこんなに可愛くて幼いエマの妹がいるって分かったらどうなるものか。 変質者はどこにいるかも分からないのよ?」
エマが惚れ惚れした表情で天使を見つめる。
「ーー……そんなことあるの?」
「あるわよ! 実際あの子、フランスに住んでた時は1回誘拐されかけたことだってあるんだし!」
「えええええ!?!?!?」
あの天使の可愛さはやはり全世界共通らしい。
ーー……そりゃそうだよな。 あんだけ可愛いんだ、我慢できずに手を出そうとしてくる輩がいてもおかしくはない。
「まぁそれが理由でこっちに引っ越してきたんだけどね」
「そうなのか?」
「えぇ。 だって世界的に見ると日本って一番犯罪率が少ないのよ? だったら妹のために引っ越すのは当たり前よね」
エマがフフっと微笑みながら天使に視線を移す。
「確かにオレにもあんな可愛い天使がいたら後先考えずに安全な土地に引っ越すかも」
「でしょ?」
「ーー……てかお前さ、なんでさっきから妹ちゃんのこと名前で呼ばねーんだ?」
オレは天使を指差しながらエマに尋ねる。
「え?」
「さっきから『あの子』とか『妹』とか。 名前で呼んであげろよ」
「いやよダイキの前だもん!」
「は?」
エマは少し顔を赤らめながらオレを見る。
「なんでだ?」
「まだそこまで仲良くもなってない人の前でプライベートのエマを見せたくないってこと!」
エマが少し前のめりになりながらオレを軽く睨みつける。
ーー……!! チラリまでもう少し!! 惜しい!!
「エマおねーたん、どちたのー? ちょっとこわいよぉ?」
オレがエマの胸元に視線を集中させていると少し離れたところで話を聞いていた天使がテチテチとエマのもとへ。
そのままバスタオル姿のエマに横からぎゅーっと抱きつきにかかる。
ピャアアアア!!! 金髪美人に金髪幼女……!!
見てるだけで癒されていく……この百合的状況最高ですわああああああ!!!!
天使の抱擁にキャラを演じているらしいエマも鼻の下が伸びている。
あれがエマの本性なのか?
そう思いながら観察しているとポケットに入れておいたスマートフォンが振動する。
「ーー……ん?」
確認してみると優香からのメール通知。
【受信・お姉ちゃん】ダイキ、帰り遅いけど大丈夫?
「ーー……!! やっべ、もう帰らないと!!」
「え、そう? わかったバイバイ。 あ、お菓子ありがとう」
オレのことを忘れていたのであろうエマがキャラを演じながらオレに手を振る。
「そうだエマ、最後に……」
「なに?」
オレは最初の方から気になっていた疑問をエマにぶつける。
「なんでオレを助けようとするんだ?」
まったく接点のなかったオレを助けて守ろうとして……エマにはなんのメリットもないようにみえるが。
するとエマは天使の頭を優しく撫でながらゆっくりと口を開く。
「あー、これもフランスでの出来事なんだけどね……この子、これだけ可愛いから幼稚園の時から周りに除け者にされたりいじめられてりしてたんだ。 その時は私が守れる時は守ってあげてたんだけど……」
「うん」
「なんか重なっちゃったんだよね妹とダイキが。 それでいても立ってもいられなくなったって感じかな、ざっくり説明すると」
「ーー……オレそんな子供じゃねーぞ」
「いいじゃないそこは。 エマが守りたいだけなんだから、ありがたく受け取っておいてよ」
「……わかったよ」
でもまぁしかし、ボディーガードというのも悪くない。
こいつ見た目完全に外国人だし杉浦たちもあまり反抗できそうになかったしな。
「えーと……じゃあよろしく」
「うん」
そうしてオレはリビングを出て玄関へ。
家に帰るためにしゃがみながら靴を履いていた……その時だった。
あの天使が可愛い歩幅でオレのもとへ駆け寄ってくる。
「だいき?」
「ん? なーに?」
オレの周囲に見えない花が一斉に咲き始める。
天使は少しもじもじしながらもオレを見上げると、優しい微笑みをオレに向けた。
「またぁ、きてねー?」
ズッキュウウウウウン!!!!!
まさに癒しの塊。
この歳、この体になってもなおオレのロリコン魂は死んではいなかったらしい。
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