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86 キスは認めません!!


 八十六話  キスは認めません!!



 夏休みも終盤。 そろそろ優香の温もりを感じながら眠りたくなっていたオレは夜自室を出てこっそりと優香の部屋へと向かっていた。


 

 「ーー……ん、なんだ?」



 優香の部屋の前に着いて扉越しに耳を傾けると電話をしているのだろうか……中から優香の声がする。

 スマートフォンをポケットから取り出して確認してみると、もう日付も変わる頃。


 こんな遅くに電話するなんて相手は誰だ? ギャルJK星か??

 

 そんなことを考えながらも扉の取っ手に手をかけた……その時だった。



 「三好くんがそう言うならその……1回だけだよ」


 「ーー……!?!?!?!?!?」



 い、今……三好って言ったよな!?!? 三好ってあの三好……オレの奴隷の三好の兄のことだよな!?!?

 それになんだ今のワードはあああああ!!!



 オレはまるで忍者のように素早く自室へ帰還。

 スマートフォンを手に取りすぐに三好に電話をかけた。




 ◆◇◆◇




 『んーー……なにーー??」



 数コール後、ついさっきまで眠ってました感バリバリの声の三好が電話に出る。



 「おい三好!! 緊急事態だ!!!」


 『なにさ福田ーー。 学校ならもうちょっと先だよーー??』



 寝ぼけた三好が平和そうな……甘えたような口調で笑う。



 「目を覚ませバカやろおおおお!!! 今すぐお兄さんの部屋の前で耳を傾けろ!!」

 

 『なーーんでぇーー??』


 「なんかオレの姉ちゃんに電話してるっぽいんだよ!!!」


 『ええええええええ!!???』



 今のオレの一言で目を覚ましたのだろう……とてつもなくうるさい三好の叫び声がスマートフォンから聞こえてきたのだった。



 ◆◇◆◇



 三好に盗み聞きの命令を下した後、しばらくして三好から折り返すの電話が鳴る。

 


 「ーー……どうだ、なんか分かったか?」


 『うん。 私の聞こえたことが確かなら……お兄は明日、優香さんとどこか出かけるみたいだよ』


 「そうか……何するか聞こえたか?」


 『ううん、そこまでは。 福田は優香さんがなんて言ってたか聞こえたの?』


 「あぁ……確か、『三好くんがいいなら1回だけだよ』って……」



 オレの言葉を聞いた三好が一瞬黙り込み無音になる。



 「ん? なんだ? 三好??」


 『福田……それやばいかも』


 「え?」



 三好の声から緊張感が伝わる。



 「おい、三好。 何がやばいんだ?」


 『福田。 これは私の予想なんだけどさ……」


 「あぁ」



 ーー……ゴクリ。


 

 『優香さんの【1回だけだよ】って……もしかして、キスのことじゃないのかな』


 

 ーー……!?!?!?

 キ、キキキキキスだってええええええ!?!?!?!?



 「な、なに言ってんだよ三好。 冗談言うなって」


 『冗談じゃないよ!! じゃあ他に【1回だけ】って何があるの!?』


 

 何があるのって、そんなの簡単だろ。【1回だけ】を使う交渉で使われるのってそれはもちろんエッーー……



 「ーー……」


 『ん? 福田? おーーい』



 おいおいマジかよそんなわけないよな!?!?!?

 自分で答えを想像しといてあれだけど、さっきよりも強烈な不安が自分の心の中に一気に押し寄せてくる。

 もちろんキスなんてそんなもの認めません!!!

 

 もしかして優香の優しい心を利用してんじゃねーだろうなぁ三好のお兄さんよぉ!?


 これはオレが優香を守るしかない。

 オレのスマートフォンを持つ握力が一気に強くなる。



 「なぁ、三好……」


 「あ、電波悪いのかと思ったよ。 なに?」


 「ーー……行くぞ」


 「え? どこに?」


 「尾行するんだよ2人を!! 三好お前、お兄さんがオレの姉ちゃんと付き合っちゃったらどうすんだよ!!」



 オレは声を震わせながら結城に尋ねる。



 『え、でもそしたら優香さん私の本当のお姉さんになるんじゃん。 それはそれでありかも』



 三好が小さく呟く。


 ーー……は?



 「おい三好」


 『私、お兄応援しちゃおっかな』



 こいつ……脅さなければわからんやつかこの野郎。

 オレはスマートフォン越しにわざとらしく咳払い。 三好が黙るのを待つ。



 「三好。 オレの姉ちゃんがお前の姉になったらオレはお前の弟ってことになるぞ。 それが何を意味するかわかってるよなぁ」


 『ーー……!!!』


 「何歳になってもお風呂一緒に入って、夜は一緒に怖い動画を見ような」


 『は……はぁ!? 福田、あんた何言って……!!』


 「ちなみにそれはお前に彼氏ができたとしても続けるからな。 恋人? 知らないなぁ……だってオレはそれよりも深い仲の家族なんだから!!! 誰にも邪魔はさせないぜぇ!?!?」


 『ーー……!!!』


 「それが嫌なら明日オレに付き合いなさい」



 ◆◇◆◇



 翌日。 オレは優香を、三好は三好兄を尾行して後ろを着いていくと、町で大きめのショッピングモールで合流する。

 


 「ーー……で、三好お前何持ってんの」


 

 オレは三好が片手に持っているものを眺めながら指差す。



 「え、何って虫眼鏡じゃん。 なんか探偵っぽいし、こういうのあったほうが気合入らない?」



 三好はウインクをしてドヤ顔で虫眼鏡をオレに見せつける。



 「三好……」


 「なに?」


 「お前可愛いよな。うん、そう言うところ好きだぞ」



 「は……はぁ!?!?」


 「ーー……なに赤くなってんだよ。 ほら、行くぞ」



 こうしてオレと三好は2人と一定の距離を保ちながら様子を伺っていくことにした。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 可愛いと言われ照れる三好ちゃんカワユス
[良い点] 毎回チ○チ○に直球のイラストを描きますね どのキャラも魅力的です
[良い点] パンツ! すごい(語彙力喪失) 優香ちゃん!! どうしてそんな!!
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