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81 夏といえば①


 八十一話  夏といえば①



 「ねぇ、オレガチで行きたくないんだけど」



 オレは暗闇の中隣にいる陽奈に声をかける。



 「いいやんこういうのって夏しか出来んけん! ほら、お腹のここら辺がキュってしない?」


 「しねーよ、てかここら辺ってどこだよ!!」


 

 そんな会話をしているオレたちが今いる場所ーー……それは墓地。

 「夏と言ったら肝試しでしょ」って話になりオレは半ば強引に陽奈に連行されてきたのだ。


 ちなみに優香と結城は家にいるぞ。

 なんでも夏休みの特番で有名なアニメ映画をやってるんだとよ。 オレはあまり大衆向けの映画は好まないからよくはわからんが。


 ーー……それにしてもあれだ、夜の墓地って本当に静かでひんやりしてるんだな。

 ここはお化け屋敷とかそんなネタで作ったような場所ではない。 ガチな墓地……ガチ墓地なのだ。

 そんなの絶対出るに決まってるじゃないか。 



 「ちょっとダイきち、手ぇめっちゃ震えてるよ!」



 陽奈がケラケラと笑いながらオレの手を強く握る。



 「し、仕方ないだろ! オレはもう、こういう場所には行かないって心に決めてたんだよ!!」



 夜になって眠る時、今でもたまに思い出すんだ。

 あの日のことを……そう、優香に結城、ギャルJK星と行ったお化け屋敷で遭遇したオバケの顔を!!

 あああああ、今思い出しただけでも全身の鳥肌が勢いよくスタンダップしちゃうぜ。



 「そういや陽奈、お前どこ向かってんだ?」



 肝試しってなんか色々ルール的なやつがあるよな。

 例えば奥にある祠に置いてある饅頭を取ってくるとか、奥の境内の鐘を鳴らす……とか。

 

 そんな問いを受けた陽奈がオレに顔を向け、まさかの回答をする。



 「いや? 適当だけど」



 「は!?!?!?」



 思わず真顔で突っ込む。



 「じゃ……じゃあいつゴールするんだよ!!」


 「それはあれ! 陽奈が満足するまで♪」


 「はい却下ーー!!!!」



 こんなバカな遊びに付き合ってられない……ていうか先に聞いとくべきだったな。

 オレはくるりと体の向きを変える。



 「え、ダイきち!?」


 「帰る」


 「ちょっと待ってって!! なんで!?」


 「んなもん決まってんだろ!! 付き合いきれないからだよ!」



 オレは陽奈の手を払い一歩前に進む。



 「ーー……ん?」



 周囲を見渡すも、どこも墓、墓、墓、墓……。

 視界は夜ということも重なりかなり見えづらく、モヤのようなものまでかかっている。



 「おい陽奈」


 「なに?」


 「帰り道どっちだ」


 「そんなのわかんないよ。 なんたって陽奈、気の向くままに歩き進めてただけやけん!!」



 陽奈がドヤ顔を決めながらオレに親指を立てる。



 「ばっかやろおおおおお!!! そんなことしてたら帰りたくなったとき、ここから出れねえだろうがああああ!!!!」



 「ーー……あ」



 ◆◇◆◇



 ガァーーッガァーーーッ



 「ひゃあぁ!! ダイきちダイきち!! なんか今あっちで声がしたよ!!!」



 最初は意気がっていた陽奈だったが次第に周囲の空気に飲まれたのか、一気に怖がりだす。



 「カ、カラスだよなに言ってんだよ、怖いこと言うなよガチで」


 「だ……だってぇー」


 

 陽奈はオレの腕にしがみつきながら涙目でオレを見上げる。

 可愛い……可愛いしほんのり柔らかいんだけどその感情はここではない場所でじっくりと味わいたい。



 「おかしいな……陽奈、毎年ここのお墓家族で行ってるのに」


 「ならちゃんと地図が頭に入ってるはずじゃねーのかよ」


 「ううん。 陽奈、陽奈の家のお墓までの道しか分からないけん……」


 「お前よくそれでルンルンで歩けてたな」



 ガササッ



 「いやああああまた手前で何か音が!!!」



 陽奈が勢いよくオレに抱きついてくる。



 「お、おい大丈夫だって。 虫だろ虫」



 オレはそう声をかけつつも陽奈の体の柔らかさをマックスまで感じ取るため、体の感覚に全神経を傾ける。



 「ぎゃああああ!!! また!! また同じところからあああ!!!」



 オレに抱きついたままの陽奈の体が謎の音を聞いて再び激しく反応。 ちょうどオレの股下に入れていた片足を勢いよく上に突き上げる。



 「ーー……!!!!!!」



 まさに鐘の音。

 活発な田舎娘の脚力……おそるべし。



 「あぎゃあああああああああああ!!!!」



 オレはお腹のあたりを押さえながら悶絶。

 ここが墓地だということも一瞬忘れ、その場で転げ回る。


 

 「いやああああああ!!!!」



 そしてその声を聞いた陽奈も釣られて絶叫。 そのまま動けなくなっているオレを置いてどこかへ走り去ってしまった。



 「ちょ、おい陽奈……!!! ーー……マジか」



 ◆◇◆◇



 「ーー……ったくどこ行ったんだよ。 おーーい、陽奈ーー」



 あれからしばらく。 オレはポケットに入れていたスマートフォンの明かりを付け、周囲を照らしながらゆっくりと進んでいた。

 すると運のいいことに一本の街灯の光を発見。

 そこへ視線を向けると近くには見覚えのある門があった。



 「あ、入口だ!!!」



 運のいいことにそこはオレはここに入ってきたときに見た門。



 「むやみに探し回るよりもあそこでじっと待ってた方が可能性高いだろ」



 その方が陽奈の声とか聞こえるかもしれないしな。

 オレはすぐさまその門の前へと駆け寄り、陽奈との合流をここで待つことにした。


 とりあえずあれだな……このまま何もしないで待つのもなんかそれはそれで怖いし、前に録画してたお祭りの動画でも見て気分を落ち着かせるとしよう。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] はじめまして。 いつもクスッと笑わせていただいて、なんだかんだ楽しませていただいております。 好きなキャラですか…はい。結城ちゃんですね(´∀`=) [一言] 私は本作ただひとりのjc読者…
2020/09/08 23:58 退会済み
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