80 ノーパンと夏の音【挿絵有】
八十話 ノーパンと夏の音
「ーー……夏祭り?」
ある日の昼食時、優香から今夜隣町でお祭りがあるから行かないかという誘いを受ける。
どうやら今年は近所の神社ではお祭りはやらないらしい。
「んー、どうしようかなぁ」
オレは腕を組みながら悩む。
お祭り自体、小学生の頃以来行ってないけど別に行きたいとも思わないしな。
射的や屋台の食べ物にも興味が惹かれないし、子供の頃はワクワクしていたくじ引きの屋台も、あれ結局当たりクジないんだろ? 前にネットで有名な動画配信者がそこの闇に切り込んで検証してたもんな。
だったらオレはエアコンの効いた部屋でのんびりしていた方がーー……
「いいじゃない行きなさいなダイキちゃん。 桜子ちゃんも」
福田祖母がオレと結城の顔を交互に見る。
「そうだ桜子ちゃん、うちに優香ちゃんの小さい頃の浴衣あるから着て行きなさいな」
「え?」
なん……だと……!?
結城浴衣バージョンか! それは熱い!!
「じゃあ桜子ちゃん、私と一緒に行こっか」
「うん!」
優香の誘いに結城が大きく頷く。
「それで、ダイキはどうする?」
優香が結城からオレへと視線を移す。
「行きます!」
オレは優香の問いかけに即答。
浴衣姿の結城を見ることができるんだ……これでもかというくらいに写真を撮りまくってやるぜ!!
オレはポケットに入っている自分のスマートフォンを強く握りしめる。
そうだ、充電も完璧にしておかないとな!!
「あ、そうだ。 陽奈ちゃんも一緒に行くから。 誘ってくれたの陽奈ちゃんだし」
「ーー……え」
◆◇◆◇
「ねーねー桜子、あれ食べようよ! 綿飴!!」
陽奈が綿飴を売っている屋台を指差す。
「え、でも陽奈ちゃん……まだりんご飴持ってるけど」
「いいのいいの! こういう時は欲しいものを片っ端から買ってくスタイルが一番幸せになれるんやけん!」
「持ちきれなくなったら私が持っててあげるから気にしないでいいよ」
優香が戸惑う結城に優しく声をかける。
「でも……食べきれないかも」
「その時はダイキが食べてくれるよ。 ね、ダイキ」
優香がオレに視線を向ける。
「え、あ、はい!!」
JSの食べかけを食べれるなんて幸せ極まりないでございます!!
しかもオレの癒しの天使・結城の食べかけだろ? 満腹状態でも摂取するわ!!!
それにしても……
オレは浴衣姿の結城と陽奈を眺める。
良い。 良すぎる。 特に結城!
ペロペロとりんご飴を舐めているその姿の全てが愛おしい!!
ーー……え? オレが写真を撮っていない?
ふふふ甘いな、写真よりももっと贅沢!!! オレは動画モードにして胸ポケットにセットしているのだ!!
「あれ、どうしたのダイキ、2人に見惚れちゃってるの?」
優香がニヤニヤしながらオレの顔を覗き込む。
「え、いや! そんなんじゃないよ!」
「へぇー。 あーあ、お姉ちゃんも浴衣着たらよかったなー」
「いやだから違うって」
「ふーん」
しかし実際に優香が浴衣を着てみろ、おそらく境内に着くまでにナンパの嵐だぞ間違いなく。
◆◇◆◇
「あ、私……射的やってみたい」
結城が射的屋台を指差す。
「えー、陽奈焼きそばが食べたいなー」
結城と陽奈の視線が優香に集まる。
「じゃあこうしよっか。 私も結構お腹いっぱいだからダイキ、陽奈ちゃんと一緒に焼きそば食べておいで。 あとで合流したら問題ないしさ。 それでいい?」
「「うん」」
2人はオレの返事など待たず同時に頷く。
こうしてオレたちはそこで一旦別れ、オレと陽奈は焼きそばを売っている屋台へと向かったのだった。
ちくしょう……できれば結城と一緒がよかったぜ。
「あ、待ってダイきち」
突然陽奈がオレの腕を掴んで立ち止まる。
「なんだ? 落し物か?」
「陽奈、先におトイレ行きたい」
「ーー……は?」
◆◇◆◇
「ええーー、待って待って、どうしよう!!」
陽奈が足を内股にして細かく揺れている。
そう、お祭りということで人の量が多く、女子トイレにはかなりの列が出来ていたのだ。
なのでオレたちは他にトイレがないか探し回っていたのだが……
「ないな」
「えええええ、それ困るって!!」
「緊急事態ってことで男子トイレにでも入るか? 子供だから犯罪にはならんぞ」
「いや! 陽奈見たくもないもの見たくない!」
「見たくないものってなんだよ」
「それはもちろんチ……」
◆◇◆◇
「ーー……で、どうしてそうなった」
オレは頭上にはてなマークを浮かべながら陽奈に視線を向ける。
「仕方ないじゃん、もう漏れそうなんやけん! それにここだったらバチも当たらなさそう!」
オレたちがいる場所……ここは神社の脇にある茂みに入って少し進んだ周りに木しか生えていないところだ。 周囲を見渡しても人の気配すらない。
ここで陽奈はすると言うのだ。
「ちょっとダイきちさ、誰も来ないかあっちの方見張っててね」
陽奈が神社の方を指差しながらオレを見る。
「わ、わかったよ」
別に見られなくとも音だけは楽しめるからな。 贅沢は言うまい!
オレは心を弾ませながら陽奈に背を向けて体を神社の方へ。
ーー……といってもそのままだと誘惑に負けて振り返ってしまう可能性があったので念の為、気を紛らわせるためにスマートフォンを胸ポケットから取り出す。
あ、そうだ録画モードにしてセットしてたんだ忘れてた。
オレの録画状態のスマートフォンをジッと眺める。
ーー……あれ、これ内側カメラに変更すれば勝ちじゃね?
ということでオレはスマートフォンを弄るフリをしてさりげなくカメラを内側カメラモードに変更。
スマートフォンの画面越しに陽奈の姿を確認する。
「あ!!」
突然陽奈が叫ぶ。
ーー……やばい、撮ってるのバレたか!?
そう1人で焦っているとどうやら独り言のようだ。
陽奈は小さく「そうだったそうだった」と呟いている。
オレは「なんだよビビらせんなよ」とホッと胸を撫で下ろした……その時だった。
「あーよかった。 陽奈、パンツ履いてきてなかったんだった」
「ーー……!!!!!!」
なん……だと……!!!
まさかオレの隣にいた女がノーパンだった……だと!?
そういや巫女服の下って下着つけないっていうもんな!
てことは浴衣も同じ!? てことはもしかして結城も!?!?!?
その後間も無く日本の夏に相応しい水のせせらぎの音が聞こえてくる。
まさに『ワビサビ』!
オレは静かな風に吹かれながらその音を心の底から楽しんだのだった。
◆◇◆◇
帰り道。
「あー痒い!!」
陽奈が忙しなく股のあたりを手で押さえる。
「陽奈ちゃんどうしたの?」
優香が陽奈の顔を覗き込む。
「んー、なんかさっきからお股のあたりが痒いんだよね」
「蚊にでも噛まれたのかな。 でもそんなところに入ってこれないよね」
優香は頭上にはてなマークを浮かべながら首をかしげる。
「ほんとそれー! あああああ痒いいい!!!!」
オレには分かるぞ。 あの時だ。
オレの脳内で陽奈が夏の音を奏でていた時のことを思い出す。
くそ!! 蚊の分際で生意気な!!! その血よこせこの野郎!!!
お前が吸ったその箇所はな……牛でいうところの超希少部位だったんだぞ!!!
あ、ちなみに帰宅後お風呂に入る際、洗濯機の中を覗いてみたのだが……結城はちゃんとパンツを履いていたっぽいぞ。
今回の結城ちゃんバチバチに可愛くないですか!?
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