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79 癒しの天使・結城ちゃん


 七十九話  癒しの天使・結城ちゃん



 田舎の褐色娘・薮内陽奈とそれはそれは楽しい川遊びを満喫したオレは夕方暗くなってきたので陽奈を自宅近くまで送ることにしたのだがーー……



 「てか何がご近所さんだよ! 結構離れてねーか!?!?」



 思わず陽奈にツッコミを入れる。

 福田祖父母の家から今オレたちが向かっている薮内家までの間に家は何軒も立っている。

 ここまで離れてるのになんでご近所さんって括りになってるのかねぇ!!!



 「ねぇダイきち、別に陽奈1人で帰れるけんいいよ?」


 

 陽奈が自宅があるのであろう方向を指差しながらオレを見る。



 「いやいや陽奈お前な、そういった気の緩みが誘拐事件に繋がるんだぞ」


 

 特に田舎なんてそうだよな。 人の目が少ない分、そういう輩からしたら格好の場所かもしれないし。



 「ダイきちがそう言うならまぁいいけどさーー……ていうかダイきち、なんか去年と変わったよね」


 

 陽奈がオレの前に回り込んでオレをジッと見つめる。


 

 「え、そうか?」


 「うん、ダイきちめっちゃ変わった!」



 めっちゃ変わった……か。

 オレ的にはオレ自身も結構インドアな性格だったからそこまで前のダイキと変わりないと思ってたんだが……。



 「その……例えば?」


 「まずね、今までのダイきちやったら陽奈の言うことに逆らわなかったもん!」


 

 陽奈がくすりと笑いながらオレの鼻を指でつつく。



 「いや、それはあれだ。 この1年で成長したんじゃないの?」


 「あとさ、そんなはっきり喋る子じゃなかったよ。 陽奈が話しかけてもずっと下向いてたのになんで?」


 「なんでだろーなー」



 ーー……てかこいつダイキのこと結構知ってんのな。

 あまりボロが出ないようにこの話題は早く切り上げたほうがよさそうだ。



 「で、そんだけか? ていうかオレに関しての話よりも別に他の……」

 「あ、あと陽奈のこと陽奈って呼ぶよね!!! 今まで陽奈の名前呼んだことないのになんで!?」



 あー、そこもだったかー。 不覚だ。



 「べ、別にいいだろそれくらい」


 「ねぇなんで!?」


 「うるせーな、心境の変化なんて誰にでもあるだろ」


 

 そんなやりとりをしながら歩いている時だった。



 「あ! みどりんだ!! みどりーん!!!」



 陽奈が前方にいた女性に大きく手を振りながら駆け寄っていく。

 あまり顔はここからではよく見えないが、よくあいつあれで誰だかわかったな。



 「おおー陽奈ちゃん、何? 今帰り?」


 「うん! みどりんは?」


 「私は陽奈ちゃん家のお隣のアヤメんところに寄ってただけだよー」


 「もう帰るん?」


 「うん! 車でぶぶーんってね!」


 「えーいいなーー!!」



 なんだ結構仲良さそうな感じじゃないか親戚の人かな。 まぁこの人に陽奈のこと任せてオレは帰るとするか。



 「じゃあオレはこれで帰るわ」



 オレは陽奈に声をかけてクルッと背を向ける。



 「あ、ちょっと待って!」


 「え?」



 陽奈と話していたみどりんと呼ばれる女性がオレに話しかける。



 「ーー……なんでしょう」


 「家あっちなの? もう暗いしお姉さんが車で送ってってあげようか?」


 

 女性がゆっくりとオレに近づいてくる。



 「あ、いや別にすぐなんで」


 「いいのいいの。 ほら、そこに車あるから乗っちゃって」



 女性が道の端に停めてある車を指差す。

 

 ーー……まぁ陽奈の知り合いってことで問題なさそうだし、帰り道楽できるからお願いするか。


 

 「あ、じゃあよろしくお願いします」



 オレは女性の方に体を向けて頭を下げ、ゆっくりと体を起こして女性の顔を見上げた。

 


 「ーー……え」



 一瞬頭の中が真っ白になる。



 「ん? どうしたの?」



 女性が首を傾げながらオレを見る。


 

 こんな偶然ってあるのだろうか。

 オレの目の前にいるみどりんと呼ばれる女性……



 オレの妹なんですけどおおおおおおおお!!!!!!



 ◆◇◆◇



 「へぇー、ダイきちくんって福田ダイキって言うんだー」



 車内。 陽奈を家まで送り届けた後オレは後部座席に座って運転している妹を見る。

 妹の名前は森本 翠。 名前的にみんなこいつのこと『ミドリ』って呼ぶんだけど本当の読み方は『スイ』なんだ。

 

 それにしても見ない間に大人になったなぁ……。

 まさか車の免許を取ってたなんて。



 「そういやダイきちくんってどこに住んでんの?」



 オレは今帰省してここにいることと、今は姉と2人で暮らしていることを妹・翠に話す。

 

 

 「そうなんだ、やっぱり都会は楽しい?」


 「まぁ……そこそこは」


 「そっか、いいなー」


 

 ーー……ん? 翠も大学の時はここを離れてたはずだよな。 なんで帰ってきたんだろう。

 疑問に思ったオレはそれとなく尋ねてみることにした。



 「みどりんさんは都会に行かないんですか?」


 「まぁね、今は私がここにいないと」


 「今は?」


 「うん。 これはダイきちくんに言っても分からないと思うけど……私にはお兄ちゃんがいてね、ちょっと前にお兄ちゃんに色々あって私のお父さんとお母さん落ち込んじゃってるからさ、私が元気出させてあげないといけないわけよ」


 「ーー……!!!」



 マジか……。


 その言葉を聞いたオレは返す言葉が見つからずその場で黙り込んでしまい、しばらくして車は福田祖父母の家に到着してしまう。



 「ほら着いたよ、ここであってる?」


 「あ、はいありがとうございます」


 「じゃあね」


 「あ、あの!!」



 オレはなんとかその場で妹・翠と連絡先を交換し、妹と再会出来た嬉しさと苦労をさせてしまっている罪悪感がぐちゃぐちゃに入り混じった複雑な感情を抱きながら家に帰ったのだった。



 ◆◇◆◇



 その日の夜はオレの心を表しているかのような突然の雨が降りだして花火は次回へと持ち越し。

 オレが部屋でぼーっとしているとふわっとした甘い香りがオレの嗅覚を刺激する。



 「ねぇ福田……くん、今日どこいってたの?」



 この香りの正体はお風呂上がりの結城か。

 結城が目の前でペタンと座り込んでオレに話しかける。



 「え、あぁ。 陽奈って子と川で遊んでたよ」


 「陽奈ちゃんって……お昼に話してた福田くんが苦手だったって子?」


 「そうそう」


 「ふーん」


 「ーー……え、なに?」


 「なんで福田……くん、私のことは名字なのにその子のことは陽奈って呼ぶの?」



 「ーー……!!!!!!!」



 心にドスンと雷が落ちる。


 これは……もしかして、嫉妬!?!?!?

 やっぱり結城とオレは実は両想い的なハッピーエンド的な!?!?


 オレはあまりの嬉しさから口角が上がりそうになるのを必死に我慢する。



 「えーと、結城さん……なんで?」


 「ううん、ただなんでかなーって思っただけだよ」



 またまたぁ!! そんなこと言って実は気になってんだろ!?

 どんだけオレが昔ラブコメ漫画を読みまくったと思ってんだよ! これはそう……まさしくフラグ!!!

 試しに下の名前で呼んでみるか!? そこからオレたち2人のラブストーリーが始まるかもしれないしな!

 2人寄り添って「大好きだよ」って言い合いながら甘いキスしようぜえええ!!!!


 ゴクリ。


 オレはまっすぐ結城を見つめ、そしてーー…


 

 「さ、さくr………」



 ドゴオオオオオオン!!!!!



 「「……!!!!」」



 まさかのこのタイミングで近くに大きな雷が落ちる。

 オレは絶好のチャンスを逃された恋愛の神を恨んだ……のだが。



 「いやああああああああっ!!!」


 「ーー……!?」



 雷の音に驚いた結城が突然オレに飛びついて抱きつき顔を埋めてくる。



 「え、え!?!? 結城さん!?!?」


 「ごめんね福田くん、私雷の音嫌いなのおお……!!」



 ゴロゴロゴロゴロ!!



 「きゃあああああ!!!」



 田舎の雷はヤベェくらいに反響してんなぁ!!

 結城がより強くオレを抱きしめる。


 ぐへへへ……これはこれで。

 オレの中でモヤモヤしていたものは天使・結城桜子の癒しの力によりじわじわと浄化されていったのだった。



 就寝時、結城は雷の恐怖が消えさらなかったのかオレの手を両手で握りながら眠りに落ちる。

 もちろんオレはその興奮から眠れなかったのは言うまでもない。

 

 両手に包まれる感覚……小さい手……最高だったよ。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 溜まってた分読ませていただきましたー! よかったです! 挿し絵もいいですね! [気になる点] ダイキの性格は大人しめのいじめっ子 これがいじめられっ子のような気がします! [一言] えっ…
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