75 まるで初夜
七十五話 まるで初夜
帰省した当日、オレたちは外へは出ずに家の中でのんびり過ごし夜を迎えた。
結城も初めこそ緊張であまり話せていなかったものの、そこは流石人生の大先輩といったところだろうか……晩御飯を食べ終わる頃には結城も福田祖父母に笑顔を見せるまでになっていた。
「今日は長旅で疲れたでしょう? お風呂沸かしてるから入ってらっしゃい」
ということで優香と結城の2人が先にお風呂場へ。
オレはそれまでの間、福田祖父母とともにリビングで過ごすことに。
「ダイキちゃん、学校は楽しい?」
福田祖母が顔を覗き込みながら尋ねる。
「うん。 それなりに楽しいよ」
「優香から聞いたんだが……ダイキ、高いところから足を滑らせて落ちて、記憶が曖昧らしいじゃないか」
福田祖父が缶ビール片手にオレの隣に座る。
流石優香だな。 いじめられてたのが原因で飛び降りたとは伝えてないのか。
「うん。 まぁでもそこまで苦労はしてないけどね」
ここは元気な孫の姿を演じることに徹したほうが良さそうだ。
オレは2人を心配させないよう、なるべく話を絶やさず……かつ暗い話に持っていかないように考えながら話すことにした。
なんか2人を見てたら無性にオレも親の顔を見たくなっちまったな。
この半月の間に顔だけでも見ることができたらいいんだが……。
◆◇◆◇
その後優香たちに続いてオレの入浴タイムも終わり、スッキリしたオレはリビングへと向かう。
「ーー……ん?」
扉の向こうから優香と福田祖父母の会話が聞こえてくる。
結構静かな話し声……笑い声が聞こえてこないってことは何かダークな話でもしてるのだろうか。
気になったオレはその場で息を殺し、その内容を聞いてみることにした。
「それにしても良かったわね優香ちゃん。 ダイキちゃん無事で」
「うん。 私もダイキが目を覚まして安心したもん」
ーー……どうやらオレの話をしているらしいな。
「でもあれだろ、ワシもさっき聞いたんだがダイキ、記憶が曖昧なんだろ?」
「そうだよ。 病院で起きて私を見たときも誰だかわかってないみたいだったもん」
「そうか……優香も大変だったな」
あぁ、胸が痛え。
この恩はどこかで返すからそれまで待っててくれよ優香。
「ねえ優香ちゃん、ダイキちゃんが目を覚ましたのになんでおばあちゃんたちの話を断ったの?」
ーー……ん? なんの話だ?
オレが目覚めてから今日までの間に何かあったのか?
「うん……、私もダイキの為を思うならこっちに引っ越した方がいいとは思ったんだけどさ」
え、引っ越す話出てたの!?
「ほら……引っ越してきたら引っ越してきたでダイキ……あの子のこと本気で嫌がってたでしょ? だから記憶の曖昧なダイキが今行ってる学校で全く馴染めなくて辛そうだったら引っ越そうって決めてたんだけど、案外怪我したときよりも楽しそうにしてるからこのままでいいのかなって」
ーー……マジか。
優香の負担を考えるなら引っ越した方が絶対に楽なのに……。
てかダイキが嫌がってたあの子って誰だよ。 そこのところ詳しく……!!
必死にドア越しで聞き耳を立てていると福田祖父がトイレと言いながら立ち上がる音が聞こえたのであえなく中断。
あたかもついさっきお風呂から上がりました的な雰囲気を醸し出しながら扉を開けてリビングへと入り、ジュースを持って結城のいる部屋へと向かった。
それにしてもダイキが本気で嫌がってたっていう子が気になるな。
今度優香にそれとなく聞いてみるか。
◆◇◆◇
「結城さん、ジュース持ってきたよ」
オレはペットボトルを片手で2本持ちながら扉を開ける。
「あ、福田くん。 ありがとう」
「お……おう」
オレは扉を開けてまず視界に入ってきた結城のパジャマ姿に目を奪われる。
上下ともにピンクのパステルカラーで、上はダボっとした半袖タイプ。下もサイズはダボめの短パン。これ角度によっては見えるやつじゃないか??
そんなことを考えながらオレは結城の前まで近づいてペットボトルを渡す。
「ありがとう」
内股でペタンコ座りしていた結城が足を立ててそれを受け取る。
「ーー……!!!」
いぇす!! 見えた!! 見えました!!!
ダボめの短パンの隙間から尊い白パンツさんこんばんは!! そこから伸びる足の付け根もめちゃめちゃ絶景だ!!
「なに?」
結城がオレの視線に気づく。
「ううんなんでもないよ」
「あ、そうだ。どうせならジュース飲むの、先にお布団敷いてからにしよっか」
結城が隅に畳まれた布団を指差す。
「え……あ、うん。 そうだね」
こうしてオレたちは真ん中に並べて布団を敷き、ペットボトル片手に布団の上に座ったのだがーー……
この布団の配置や並び、まるで初夜……ゲフンゲフン、、めっちゃエロくね!?!?
その日の夜、オレはいろんな角度から熟睡している結城を観察。 気づけば太陽が昇り始めていた。
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