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☆733☆【作者の気まぐれSP】ラブ手帳③


 特別編 ラブ手帳③



 学校へと着いたオレは、エマたちと別れてすかさず男子トイレへ。 ポケットからラブ手帳を取り出すと、勢いよくそこに書き記した『エマ』の文字の上に斜線を引く。



「エマ、お前は可愛いやつだったよ。 でもな、オレが求めていたのはそうじゃない。 ひとときのラブをありがとう」



 さて、問題は、次なるオレに恋する女子を誰にするかだ。

 出来ることならアニメみたいなハーレムを体験したいものだが、このラブ手帳……二人目の名前を書いたらその前に書いた名前の子の効力が消えちゃうらしいからな。 少し残念ではあるが、こんな神仕様なんだ、文句は言うまい。



「んーー、そうだなーー」



 ぶっちゃけすぐにでも本命の結城に使いたいところではあるのだが、結城は今ようやく本当のお母さんとの時間を満喫している。 そこが落ち着くまでは使いたくないんだよな。 落ち着いてようやく結城でグランドフィナーレ……それまでは他の女子たちと擬似恋愛するのも一興いっきょうだろう。


 

「ぐふふ……ぐへへへへ。 確実にモテるとか、人生勝ちだろ」



 オレは脳内に一通り可愛い女子たちの顔を思い浮かべることに。



「エマとエルシィちゃんは終わったから、他には……」



 三好、小畑、多田……。



 西園寺、水島……。



 ーー……あれ、それくらいか?



 他にも女子はもちろんたくさんいるのだが、正直言って他は顔もあまり思い出せない程のモブばかり。

 というよりも、あまりオレ自身がさっき脳裏に思い浮かんだ三好たち以外とからんでなかったからな。 興味がないのも当然か。



「となれば、もうすでに5択かよ」



 オレは「やれやれ」と声を漏らしながらもシャープペンシルの先をラブ手帳のページにセット。 4組の西園寺からから順に、各少女たちの『恋する乙女モード』を楽しむことにしたのだが……



(※記憶復活の神メモ【第四百一話・『運命のクラス分け!』&四百二話『いざ、新クラスへ!』推奨】)

・4組 西園寺

・3組 エマ(済)、結城

・2組 小畑・水島

・1組 三好・多田



 ◆◇◆◇



 ラブ手帳に西園寺の名前を書き、オレは胸を躍らせながら西園寺のいる4組に顔を出す。 しかしこれは一体どうしたものか……。 西園寺の様子は、いつもの西園寺。 オレと目が合うなり、いつも通りのテンションで「おはよ、福田くん」と声をかけてくるではないか。


 

「ーー……ん?」



 いきなりバグか?



 若干動揺したオレが首を傾げていると、西園寺は不思議そうに「どうしたの?」と、オレの目の前へと歩み寄ってくる。



「ん、なぜだ? あれ? えっと……西園寺、おは……よ」


「福田くん? どうしたの私の顔をジッと見て。 ーー……もしかして、私の顔に何かついてる?」


「いや、西園寺はいつものマドンナ級の美貌を持つ西園寺だぞ。 ただなんというか……まぁ確かに変なことが起こっているというか」


「どういうこと?」


「あー、いや。 こっちの話だ、なんでもない」



 これはラブ手帳の説明書きを見直す必要がありそうだな。

 もしかしたらオレが見落としていただけで、『一週間に使える制限人数』とか……『次の人の名前を書いたとしても、数時間後じゃないと発動しません』みたいなものが、あったのかもしれない。



「福田くん? どうしたのそんなボーッとしちゃって。 やっぱり本当は私の顔に何か……」


「あー、本当になんでもないんだ! 不安にさせちゃってごめんな西園寺!」


 

 オレは西園寺に「じゃあな!」と告げると、逃げるように自分のクラス……3組へ。

 自分の席に座り安堵の息を吐いていると、エマが真顔でオレの席の前まで近づいてきた。



「どうしたエマ」


「ーー……」


「ん、なんだ?」



 そうするとどうだろう、エマはオレの顔を見るなり「ふふっ」と軽く一笑。 「やっぱりそうよね」と漏らしながら、オレの頭をポンポンと叩いてくる。



「んんん!? 何するんだいきなり」


「ごめんね、エマ、なんか朝おかしかったでしょ」


「え」


「いやね、何故かは分からないんだけど、朝限定でダイキのことをかなり愛おしく感じてたの。 でもやっぱり気のせい……寝ぼけてたみたい。 変なエマを出しちゃってごめんなさいね」



 お? なんだ? 今オレは謝られているのか、煽られてるのか、どっちなんだ?

 もとはといえば、オレが原因っちゃあ原因なのだが……だけど今回のエマの一件で確信が持てたことが一つある。 それは、恋する乙女モードから解放された場合でも、その記憶は残っているということだ。



「ーー……なるほどな。 てことは、使い過ぎたら皆がオレへの恋心を覚えている世界線になってしまうのか」


「うん? ダイキ? どうしたのよ、いきなりブツブツ呟き出して」


「それに恋心だけじゃなくて、その時の記憶もある……と」


「ダ、ダイキ?」


「んーー」



 オレはエマが目の前にいることも忘れてラブ手帳の副作用とも呼べるデメリットを考察。 仮にその時の記憶が完全に無くなってしまう仕様だったなら、ワンチャンスあんなことやこんなことをしてムフフ出来たかもしれないが……記憶が残ってしまうのなら話は別だ。 メリットよりもデメリットの方が遥かにデカいじゃねーか。



「ーー……エマやエルシィちゃんには悪いことをしたな」


「え、エマとエルシィが何?」


「うむむむ」


「ちょっとダイキ、ほんとどうしたのよ」



 オレの独り言考察タイムに呆れてしまったのか、エマはいつの間にかに自身の席へ。 その後ホームルームが始まり、考察を終えたオレは、こっそりとラブ手帳のルールを読み返していった。



 ーー……うん、オレの読み忘れは無さそうだ。 制限人数とかそんなのはどこにも書いてない。



「じゃあなんで西園寺には効かなかったんだ? まぁバグのおかげで、オレへの恋心とかいう無駄な感情を抱かなかっただけ、良しとするか」



 オレは不思議に感じながらも、西園寺の無事にホッと胸を撫で下ろしながら、ラブ手帳に書き記された西園寺の名前の上に線を引く。

 その後このラブ手帳を持っておくこと自体が危険だと感じたオレは、放課後に自室で廃棄することを決意。 それまでは誰の手にも渡らないよう、ポケットの中で厳重保管しておくことにした。



 ーー……のだが。



 ◆◇



 その日の昼休み、事件が起こった。



 オレがトイレを済ませて教室へ戻ろうとしていると、ちょうど同じタイミングで隣の女子トイレから出てきた三好と鉢合う。



「おー、三好、偶然だな」


「ほんとだねー。 あ、そうだ福田、ちょうどよかったかも!」



 三好はそう言うと、おもむろにポケットからスマートフォンを取り出す。 そして「昨日スマホ機種変更してさー」と自慢げにオレに新型スマートフォンを見せびらかしてきた。



「ん、なんだ? 自慢か?」


「あーうん、それもあるんだけど、私、前のスマホとのデータ移行失敗しちゃってさ。 登録してた連絡先消えちゃったから、福田、またアドレスと電話番号教えてよー」


「なるほどそう言うことか。 いいぞ」


「やった! 実は福田が連絡先登録すんの、一人目なんだよねー」


「おおマジか! それはなんか特別感があっていいな!! よし、ちょっと待ってろ!!」



【連絡先】ではあるが、三好の『初めて』をオレがいただくことは事実。 オレは胸を躍らせながらポケットの中に勢いよく手を突っ込む。



「ーー……あれ」



 いつもスマートフォンを入れている右ポケット……そこには何も入っていない。

 突然のことに動揺し固まっていると、それを察した三好が「え、福田スマホ落とした?」と心配そうに尋ねてくる。



「い、いやそれはない……と思うんだが。 お、落としたのかな」


「待って、こういうときは、過去をさかのぼればいいんだって。 福田、最後にスマホを触ったのっていつ?」


「えっと待ってくれ……。 学校内では触ってないし、通学路でも触ってない。 今日オレが最後にスマホを触ったのは……目覚ましアラームを止めたときだな。 あ、なんだ、オレ落としてねーじゃん、家に忘れただけか! よかったああああああ!!!」



 あのスマホの中には結城を筆頭に、多くの可愛い写真……他にも、誰にも見せられないようなムフフ画像とかも入ってるからな。 下手に落として誰かに拾われて、中身を見られたらたまったもんじゃない。

 とりあえず、家の中なら安心だ、命拾いしたぜ。

 


「いやー、三好、ナイスアドバイスだった!! ありがとう!!!」



 オレは三好の肩を軽く叩いて改めて感謝。 

 そのまま機嫌よく教室へと戻ろうとしたのだが……



「あー、そっか。 じゃあ福田の連絡先はまた今度ね。 んじゃ、真由香は今日休みだから、美波にでも聞きに行こっと」



 ーー……!!!!



「ちょっと待てい!!!」



 そうだ忘れていたぜ! 今重要なのは、オレのスマートフォンの有無ではない……三好の『初めて』になれるかどうかなのだ!!!



 オレは小畑のいる2組へと向かおうとしていた三好の腕を掴んでそれを静止。「アドレスと電話番号なら覚えてるから……!」と、先にオレの連絡先を登録するようお願いをした。



「へ? なんで福田、そんなにマジなわけ?」


「そんなの決まってんだろ! オレの名前が最初にきて欲しいからだよ!」


「は、はああ!? なんかそれ、別の意味に聞こえるんだけど!」


「別の意味ってなんだよ! とにかく三好、頼むからオレの一番に頼む!」


「い、いいけど……でももうあんま時間ないよ? 私、ローマ字入力は慣れてないからあんまり早くないし……」


「じゃあメモ書いて渡す!! なんか書くものないか!?」



 そう言って三好に手を差し出すと、三好は困ったように「いや、今ペンしかないや」と首を左右に振る。


 

「えええ、じゃあ手のひらにかく! 三好、手を出せ!」


「いや、なんで私の手に福田の連絡先書かないといけないのさ! なんか他に書くもの……って、ちょっと、福田、左のポケットに手帳あんじゃん!!」


「おお、ほんとだ!! こういう時に持ってるオレ……なんて気が利くんだ!!」


「じゃあこのペン貸したげるから、ささっと連絡先書いてよ! もうチャイムなっちゃうよ!?」


「そ、そうだな!! よし待ってろ、ついでに三好はバカだからな、誰から貰ったか忘れられたら困るから……オレの名前も書い解いてやるよ!」


「はああああ!?!? 忘れるわけないっしょ!!」


「まぁそう言うなって。 ほら書けた。 んじゃ、三好の処zy……ゲフンゲフン、初めての連絡先登録は、オレで頼むぞ」


「わ、分かった」



 オレが三好から借りたペンとともに、急いでちぎった紙を渡すと、三好はどこか嬉しそうに……ポニーテールを軽快に揺らしながら、教室へと戻っていく。

 最初こそオレは三好の『初めて』と手に入れたという達成感に満ち溢れていたのだが、チャイムが鳴り教室へと戻っている途中のこと。 オレは気づいてしまったんだ。



「ていうか、さっきの紙ってあのラブ手帳……、まぁいいか。 そんなことよりも、なんか今日のオレ、窓映りめちゃくちゃカッコよくね?」



 今回起きたことは、本当にオレの中での黒歴史だ。

 オレはしばらくの間、窓に映る自分自身に一目惚れ。 反射して映るオレに抱きつこうとして、窓に顔ぶつけて気を失ったのだった。



 ◆◇



 気づけば保健室のベッドの上。 どうやらラブ手帳の効果は消えていたようで、オレが記憶に残っていた黒歴史に悶絶していると、ちょうど休み時間になっていたのだろう。 オレは保健室にいると聞きつけた三好が、勢いよくオレの元へと駆け寄ってくる。



「ちょっと福田、教室行ったら福田が保健室にいるって聞いて……一体どうしたのさ!」


「あはは、すまん。 ちょっと足滑らせて、窓にぶつかって気を失ったんダヨネー」


「そっか、無事でよかったよ」


「おうありがとう。 それで、どうしたんだ三好」


「あー! そうだった!! ごめん福田、昼休みに福田からもらったメモ用紙、あれから登録しようとしてたら、手が滑ってお茶こぼしちゃって……文字消えちゃったから、もっかい教えて!!」


「ーー……ん? あ、ああああああ!!! そういうことか!!! だからか!!!」



 三好がバカしてメモ用紙にお茶をぶっかけてくれたおかげで、オレの書いた文字が消えて……効果が切れたということなのか!!!


  

 オレは三好の手を取り、何度も「ありがとう」を連呼。 三好のスマートフォンに連絡先を登録すると、このラブ手帳を早々に手放すべく、ビリビリに破り捨てた後に、近くにあったゴミ箱に投げ入れたのだった。



 まさかオレが自分に恋することになるとはな。

 恋って……奥が深いぜ。



 そして、なんでだろうな。 この少し後には、オレのラブ手帳に関する記憶……そして、恋する乙女モードになったエマたちからも、オレに恋したという『ラブ手帳事件』の記憶が消えていたのだった。

 


お読みいただきまして、ありがとうございます!!

あえてネタ回で終わるというのが、小五転生らしいですよね!!


作者の気まぐれにお付き合いいただき、ありがとうございました!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] >じゃあなんで西園寺には効かなかったんだ? このボケチンはいっぺん地獄に落ちたほうが良いと思うんすよね と思ったけど、そういや似たようなところに落ちたことあったな・・・
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