730 【作者の気まぐれSP】特別編・桜子の新学期
特別編・桜子の新学期
最高の卒業式を終え、最高の仲間たちとは別の中学へと進んだ桜子。
そして今日は新たな門出……入学式の日。 彼女はまだ着慣れていない新しい制服・薄茶色のブレザー姿で新中学校校門近く……クラス分けの貼られた掲示板の前に立っていた。
「ーー……うぅ、やっぱり知ってる名前、どこにもない」
クラスは全部で5クラスあるのだが、ざっと目を通したあたりでは、桜子の知る名前は一人もおらず。「転校してきたばかりを思い出すなぁ」と呟きながら、隣にいる女性……母・美桜の手を強く握りしめる。
「どうしたの桜子、緊張してる?」
数ヶ月前とは比べ物にならないくらい元気になった母・美桜が柔らかな笑みを浮かべながら、桜子に問いかけてくる。
「そ、そりゃあそうだよ。 だって希やエマ、佳奈たちも……ダイキくんもいないんだよ?」
「でも、またここで新しいお友達を作ればいいじゃない」
「もー、それが簡単にできたらこんなに緊張しないってばー」
自分自身でも分かっていることだが、桜子はコミュニケーション能力が高い訳ではない……というよりもむしろ、平均よりも遥かに低い方だ。 そんな彼女でも小学校生活を最終的に謳歌することができたのは、いうまでもなく恩人かつ恋人・ダイキのおかげ。 彼がいなければ、灰色の小学校生活で終えていたはずなのだから。
「だって小学校はダイキくんがいたから……」
スマートフォンを取り出し電源をつけると、画面にダイキとのツーショット写真が映し出される。
「はぁ、まーた桜子、ママと話してるのにダイキくんの写真見て笑ってる。 ほんと、ダイキくんはママも大丈夫だと思うけど、桜子は男選びを心配しないように気をつけるんだよー」
「もーー、ママーー!!」
大きく頬を膨らませたまま、桜子は母・美桜と一旦別れて自分の名前の記されていた教室へ。
新生活への期待と不安を入り乱らせながら、新しい扉を開いた。
◆◇◆◇
「お、おはよう……ございます」
どう入っていいのか分からなかった桜子は、とりあえず挨拶をしながら、顔をこわばらせながら未知の空間に足を踏み入れる。
しかしそこで待っていた光景は、桜子の不安を一気にかき消してくれることとなった。
「おはよ」
「おはよー」
「おはようございます」
「最初から挨拶とか礼儀正しすぎね。 あはは、おはよー」
「ーー……っ!」
瞳に映ったのは、外で桜の花びらが舞う窓ガラスを背に、笑顔で自分を迎えてくれている同級生たち。
一人は自分と同じで顔をこわばらせながら。 一人は気楽に手を振りながら。 また一人はわざわざ席から立ち上がって軽く頭を下げながら。
これが……、ここが、私がこれから過ごすことになる場所。
桜子は若干目を潤ませながらも自分の席に着席。
新たな顔ぶれと簡単な自己紹介をした後に、胸を躍らせながら別の中学へと進んだダイキへと、メールを送った。
【送信・ダイキくん】ダイキくん、そっちはどう? 誰かと同じクラスになれた? ちなみに私のクラスは結構平和っぽくて安心してる。
少し待っていると、ダイキからのメールを受信。
通知に表示される彼の名前を見るだけで、最近会ったばかりだというのにまだ物足りないのか、また彼と会いたくなってくる。
【受信・ダイキくん】幸いなことに三好と同じクラスだったわ。 あー……、オレも今さっきまで平和そうだと思ってたんだけどなー。 ちょうどヤバそうなのが数人きたわ。
「ダイキくん……、そうなんだ、佳奈と同じクラスなんだ。 ふふ、だったら安心かも」
桜子は彼が佳奈……三好佳奈と同じクラスだと知れただけで、彼の新中学生活の無事を確信。
彼のことだ。 メール後半に書かれていたヤバそうな生徒がいたとしても、彼なら上手く物事を解決できそうだし、それに佳奈がいれば百人力だ。
「だけど……、ちょっとだけ、佳奈に嫉妬しちゃうな」
桜子は小さく呟きながらメールを返信。
送信したタイミングでチャイムが鳴り、担当教師が挨拶をしながら皆の前へ。 その後この一年間を一緒に過ごすことになる仲間と共に、入学式の会場……体育館へと向かったのであった。
【送信・ダイキくん】そうなんだ。 あまり関わらないようにね。 あ、それはそれとして今週の土曜日空いてる? 新学期早々なんだけど……会いたいな。
お読みいただきましてありがとうございます!
こちら、お気づきの方がおられたら敬礼ものなのですが、【真・結城編】最終回ラストと連動しております!
やはり桜子ちゃんは天使!!笑
さて、残り3話ですが、お付き合いいただけると幸いです!




