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☆728☆ 【作者の気まぐれSP】 特別編・陽奈、サプライズプロジェクト!!



 七百二十八話  【作者の気まぐれSP】特別編・陽奈、サプライズプロジェクト!!



「ねぇママ、陽奈がいきなり目の前に登場したら、ダイきち、驚くかなぁ」



 福田ダイキ・優香の祖父母の住む田舎。 ここで小学生生活を無事終えたおてんば少女・薮内陽奈は、自身の家のリビング内……仰向けになった体勢で、キッチンにいる母親に話しかけていた。



「そりゃあ驚くと思うけど、陽奈ちゃん本当にいいの? まぁもう言っても遅いんだけど」


「うん大丈夫!! 陽奈、お姉ちゃんのぶんまで楽しまないとダメやけん!」


 

 手術跡の残った胸元を指先でなぞりながら、陽奈はゆっくりと立ち上がり隣の仏間……姉・愛莉のいる部屋へ。 仏壇の前に敷かれた座布団の上に座ると、「じゃあ……出発はもうちょっと先やけど、夏は帰ってくるけん。 それまでお姉ちゃん寂しくても泣かないでね」と明るく微笑みかけた。



 そう、陽奈は中学進学を期に、ダイキのいる街へと引っ越しをするのだ。



 退院後しばらくして、陽菜がその想いを打ち明けた時は両親をかなり困らせてしまったのだが、いくら病が完治したとはいえ娘の身体が心配だった母が『大きな街の方が、今後陽奈に何かあった時にはいいかも』と陽奈のお願いに賛成。 父や祖父母を説得し、なんとか引っ越しをすることに、全員の賛成を貰えたのだった。



「それでねお姉ちゃん、陽奈、お姉ちゃんの服も何個か持って行きたいんやけど、いいよね?」



 仏壇の写真に写る姉に声をかけたと同時。 キッチンの方から「それよりも陽奈ちゃん、引っ越しの準備終わったのー?」と母親の声が聞こえてくる。



「んー? まだやけどー」


「えええええ!?!? 陽奈ちゃんあなた……引っ越しは明後日なんだよ!? 全然終わってないとかないよね!?」


「大丈夫やよー。 あとは服とか本とか……そこらへんを入れるだけやけんー」


「いやそれほぼ全部じゃない!! 早くやりなさい!! じゃないと陽奈ちゃん今日は夜ご飯抜きだから!!」


「えーーー!?!?」



 陽奈はおもむろに最近買ってもらったスマートフォンをポケットから取り出して時間を確認する。



「えっと今はお昼の二時だから……うわああああ、ママ、お片付け終わらないかもーー!!!」


「だからやるんでしょ!!」



 夕飯を食べられない。 そのことを考えるだけで、まだ昼食をとって二時間しか経っていないというのにお腹が空いてくる。



「ちなみに陽奈ちゃん、今夜はハンバーグにしようと思ってるんだけどなー」


「うわああああああ!!! 陽奈、今から急いでやるけん、ハンバーグ食べるーー!!!」



 陽奈は慌てて仏間を出ると、小走りで自分の部屋へ。 頬を茜色に染め上げながら、必死に荷造りを始めたのだった。



「ダイきちたちともまた会いたいし、ハンバーグも食べたいもん!! こんなの陽奈にかかれば、一瞬やし!!」



 ◆◇



 心配になり様子を見に来た母からの「流石にもうちょっと綺麗に入れたら?」というアドバイスも無視して、陽奈は小物等をガサツにダンボールの中へと放り込んでいく。



「大丈夫! 壊れるものないけん!!」


「それにしても汚すぎじゃない?」


「気にせんけん平気ーー!!」



 結果、それはガサツの甲斐あって一時間足らずで終わったのだが、そこで陽奈は母の口から衝撃の事実を聞かされることとなる。



「そういや陽奈ちゃん、流石に分かってるとは思うけど……」


「なに?」


「ダイキくんと同じ中学に行けるのはもう決まってるけど、同じクラスになるかまでは分からないことは……知ってるよね?」


「へ?」



 陽奈の頭上に大きなはてなマークが出現。

『そんなの知らなかったですよ』風な表情をしながら首を左右に振る。



「え、陽奈ちゃん……本気で言ってるの? 本当に知らなかったの?」


「うん。 なんで?」


「あのね陽奈ちゃん、中学校は小学校と違ってクラス数も多いし、それに次行く中学は都会だよ? クラスも五つはあるんじゃないかな」


「ーー……え? ええええええええええええええ!?!?!?!? クラスって一つじゃないのおおおおおおお!?!?!?」



 母から知らされた事実に、陽奈は驚愕。

 元気一杯の陽奈の声が家全体に響き渡った。



「ちょっと待ってママ! てことは陽奈、もしかしたらダイきちと同じクラスになれないかもってことーー!?!?」


「それはそうでしょ、決めるのは先生たちなんだから」


「うわあああああああああ!!!!」



 困ったことになってしまった。

 もしクラスが別々だったら、彼の後ろから突然「じゃじゃーーん!!」とドッキリを仕掛けることが出来なくなってしまうではないか。



「お姉ちゃーーん!! どうにかしてぇーー!!!」



 陽奈は近くで見守ってくれているあろう姉の愛莉に懇願。 お姉ちゃんならなんとかしてくれるという望みを胸に抱きながら、母親と共にリビングへと戻ったのだった。



 ぐうううう……。



 リビングに着くと、陽奈のお腹から空腹のメロディが流れ始める。



「ママ、お腹すいた」


「いやまだ四時にもなってない……、お昼食べてからまだ数時間だよ!?」


「陽奈、ハンバーグに目玉焼き乗せたい」


「ほんと陽奈ちゃんは。 まぁ元気な方がママは嬉しいけど、中学生になったらもうちょっとおしとやかになりなね」


「そんなの決まってるし!! 陽奈、中学生になったらお姉ちゃんか、優香ちゃんみたいなレディになるけん!!」


 

 陽奈は無い胸を張って、堂々と宣言。

 その際母から同情的な視線を向けられていたことを陽奈は知らず、また、これから想像以上のドタバタな中学生生活が始まることすらも、もちろん知らない。



お読みいただきましてありがとうございます!!

褐色娘の陽奈ちゃんが加わったらもうドタバタが加速するの間違いなしですね!!笑

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