☆727☆ 【作者の気まぐれSP】小学生最後の食事会!!
七百二十七話 【作者の気まぐれSP】小学生最後の食事会!!
「うっはーー!! 開放感やばーーい!!!」
事務所をあとにしてしばらく。 私服に着替えた小畑が三好・多田・エマに「メールはしてるけど、実際に会うのはほんと数日ぶりじゃんー!」と満面の笑みでじゃれついていく。
「ねぇミナミ、メンバーの二人は今日はいないの?」
「あー、鈴菜ちゃんと橘さん? 二人なら今頃歌の収録してるんじゃないかなー」
「ミナミは行かなくて平気なの?」
「うん! 私はその次の曲から電撃参戦だかんね! だから時間はまだあるっちゃあるんだけど……」
この小畑の言葉の詰まらせに、オレと三好は再び過剰に反応。「なーに言ってんの美波!! 美波なら出来るって!!」やら、「そ、そうだよ小畑さん!! 伝説のセンターなんだから問題ないって!!」と声を若干裏返しながら励ましの言葉を送る。
「ありがとー。 でも……どうしたの佳奈も福田も。 さっきから急にテンションおかしくなってない?」
「「え」」
「なに? もしかして私に黙ってることがあるとかー?」
おいおい勘が良すぎるだろ。
小畑は対象を三好だけに絞ったのだろう、顔を近づけ、逃げられないよう三好の手を握りしめる。
「み、美波!?」
「佳奈ー、何か隠してるよね」
「へ!? か、かかか、隠してないよ別に!!」
「ほんとー?」
「ほんとほんと!!」
「じゃあ私の目を見てもう一回言ってみて?」
「えっ!! そ、それくらい余裕だし!! 本当に私は美波に隠してることなんて一ミリも……」
三好、お前にしては頑張った方だと思うぞ。
三好はギリギリまで小畑の目を見つめて発言していたのだが、三好の長所・正直者がここで仇となってしまったな。 語尾に近づいていくほど声量が下がっていき、それと比例して視線も斜め上へとずれていく。
「あー。 やっぱ佳奈なんか隠してんじゃん」
「!!」
「もしかしてあれ? まーだ福田のこと狙って……」
ん?
「うわぎゃああああああああ!! 何言ってんのさ美波ーーーーー!!!!!」
なんだ? 一瞬オレの名前が出たよな気がしたけど……聞き間違いか?
オレが三好に視線を移すと、三好は顔を真っ赤にさせたまま小畑の口を手で塞いでロック。 その後オレをキッと睨みつけながら「か、勘違いしないで。 美波の勝手な妄想だから」と呟いた。
「ん、何がだ?」
「だ、だからさっき美波が言ったその……」
「すまん、オレちょうどそこが聞き取れなかったんだ。 もう一回頼む」
「ふぇ?」
「お前声が小さいんだよ。 小さいのはその胸だけにしろ?」
「ーー……っ!! う、うるさいバカ、あほーーー!!!!」
オレのミスがあるとすれば、三好を育てすぎたことだろうか。
三好はなんの躊躇もなくオレの下半身を蹴りあげ……忘れているかもしれないから念の為伝えておくと、今のオレはノーパン状態。 防御の薄くなったオレの急所を三好はベストな角度・ベストなスピードで打ち抜いたのであった。
「ぎょあああああああああ!!!!」
パァンという音が響き割ったと同時に、オレは下半身と腹部を押さえながらその場でうずくまる。
しかしやはり痛みと空腹は別物なんだな。 体勢を丸くしていたオレのお腹から、空腹のメロディが周囲に聞こえる音量で流れ出た。
「そういやもう二時だね。 ウチらはまだ食べれてないんだけど……美波はもう食べた?」
この光景を見慣れた多田が、自身のスマートフォンで時間を確認しながら小畑に尋ねる。
「うんにゃ、まだー。 今日は九時半からレッスン場だったし」
「そっか。 じゃあ今から食べに行こうよ。 美波は今日はもう予定ないの?」
「うーん、ないにはないんだけど、夕方までかなー。 今日言われたダンスの復習とかしたいし」
「すっかりアイドルだね。 分かった、じゃあチャチャっとご飯済ませて、夕方までどこか遊びに行こうよ」
「お、いいねーー!!」
「美波、体力持つ? 大丈夫?」
「伝説のセンターをナメんなー?」
こうしてオレたちは、遅れた昼食をとりに行くことに。
ちなみに昼食場所は一番最初に視界に入ったファーストフード店に決定。 各々注文をとり、小学生最後のご飯会が始まった。
◆◇
「えー、そっか真由香、中学受験終わったから塾からも解放されたんだね。 お疲れー」
ご飯中はそれぞれの近況報告会。 と言ってもオレは特に話せるネタもなかったため、女子たちの話にただただ耳を傾ける。
「ありがとー。 ママもさ、中学になったら授業数とか多くなるしって。 でもテストの点数とか悪かったらまた塾行かせるって言ってたから、そこだけは頑張らないとだけどねー」
「えーいいじゃん!! じゃあさ、ワンチャンス私が遊びに誘ったら、真由香来られる感じ?」
「うん。 そうだけど……いや、美波にそんな時間ないっしょ。 まだデビュー前でこんな忙しそうなのに」
「やっぱそうかー。 エマとはたまに事務所で会える可能性はあるけど、真由香や佳奈は流石に厳しいかー」
小畑は少し残念そうに息を吐きながら、目の前にあったポテトをひと齧り。 続けて「あーあ、アイドルになりたいって夢は今も変わらないけど、そのための犠牲が半端ないなー」と隣に座っていた三好にもたれかかる。
「だよねー。 私も美波とこうして直接話せなくなるのは寂しいなー」
「お、嬉しいこと言ってくれるね佳奈。 あ、でも中学になってもあれだぞ? 佳奈も真由香もエマも福田も、私のこと忘れんなよー? どこにいたって親友だぞー?」
小畑が視線を三好、多田、エマ、オレの順にゆっくりと移していく。
「「!!」」
もちろんこの言葉にも三好とオレは反応。
しかし今回ばかりは、三好よりもオレの方が先に小畑に声をかけた。
「えっ、小畑さん……、今、オレのこと……親友って?」
「そうだよー、決まってんじゃん。 更に言うと、福田は私のファン第一号なんだからね。 コンサートとか来なかったらマジぶっ飛ばす。 もちろん全公演、強制参戦ね」
おお、おおお……おおおおおおおおおおおおおお!!!!!
オレはこの小畑の台詞に猛烈に感動。
三好を見れば三好も涙を流してはいたが、オレはそれよりも多くの涙を流していたのだった。
「ちょ、ちょっと今度は福田まで!! ってまた佳奈も泣いてんのーー!?!? どんだけ二人は感性似てんのさー!!」
「だっで、だっでぇ……ねぇ福田ぁーー」
「うぐえぐっ……!! 一生追っかけさせていだだぎまずーー!!!」
なんなんだ、嬉しい気持ちが大きい反面、寂しさもそれ以上にある。
小畑美波……初めて会った時から只者ではないとは思ってはいたが、まさかここまでとは。
しばらくオレと三好が泣いていると、それを見かねた多田が、「んじゃ小学生最後に集まれた記念にプリクラでも撮りに行こうよ」よ提案。 オレは普段よりも塩見の増したポテトを口一杯に詰め込みながら、未だ溢れてくる涙を必死に腕で拭う。
「ちょっとダイキ、あんた流石に泣きすぎ。 ハンカチほら、使いなさい?」
オレの服の袖がびちゃびちゃに濡れていたことに気づいたエマが「ハンカチくらい持ってきときなさいよ」と自身のカバンから可愛い柄のハンカチをオレに差し出してくる。 オレは「ありがどう、エマ」と受け取ったハンカチで顔を覆いながらぺこりと頭を下げた。
「本当世話が焼けるわね」
「ずまん」
そしてこの時は心の声がそのまま言葉に出るくらいに感情が揺さぶられていたからな。 ハンカチを目に押し当てながら、オレは言ってはならない言葉を口にしてしまったんだ。
「なぁエマ」
「何よ」
「なんかこのハンカチ、生臭い……イカ臭くね?」
「ーー……っ!! 誰のせいでこんな臭いついてると思ってんのよ!!!」
それからは、今も小学校に通っているかのようなテンションで、全員揃って近くの商業施設へ。
ウインドウショッピングを軽く楽しんだ後に、一番の目的でもあるプリクラを撮ったのだが、もちろんそのセンターには小畑。 そこに写っている小畑は小学生らしい笑みで……だけど他とは比べ物にならないオーラ……『伝説のセンター』という名に相応しいオーラを解き放っていた。
◆◇
「へへ、小学生の最後に、いい思い出できた。 みんな、来てくれてありがと! 私、頑張るわ!」
撮ったプリクラを満足げに見つめながら、小畑が家へと小走りで帰っていく。
「うん! 頑張ってね美波! ほんと応援してるから!!」
「ウチも! 時間できたらでいいから、絶対遊びとか誘ってね!」
「たまにはエマにも頼りなさいよ?」
「小畑さん! コンサート絶対行くから! もちろんCDも買うから!」
「今度会うときはコンサートだっ!!」
オレたちは小畑の姿が見えなくなるまで声援を送り続ける。 そして今日オレたちと会ったことで、色々と吹っ切れたところもあるのだろう、その後ろ姿には最初に感じた小畑の違和感……暗さは全く感じられず。 とても堂々とした……自信に満ち溢れた背中をしていた。
「じゃ、ウチはこっちだから」
「うん、真由香も頑張ってね」
「エマは買い物して帰るわ、みんな、帰り道気をつけるのよ」
「三好やエマとは同じ中学だからいいとして、多田、頑張れな」
小畑を見送った後、各々がその日撮ったプリクラを眺めながら帰宅。 そしてその全員がそこに書き込まれれいた小畑の文字を見て、大きく頷いていたのだった。
『絶対的なアイドルになるっ! 見とけ、親友たちよー!!!』
お読みいただきましてありがとうございます!!
明日は特別編・陽菜、特別編・舞の2本を投稿予定ので、よろしくお願いします!!




