☆725☆ 【作者の気まぐれSP】思ってもみなかった展開!!
七百二十五話 【作者の気まぐれSP】思ってもみなかった展開!!
それはもうすぐ新学期……中学生になるまでの僅かな連休。
オレと三好、多田はエマの付き添いという名目で、数駅離れたところにある、アイドル事務所に足を運んでいた。
「なぁエマ、この建物の中、美人しかいねぇな!!」
建物内。 周囲を見渡したオレが興奮気味に話しかけると、目の前を歩いていたエマからは回し蹴りが、少し遅れて隣からは三好のパンチが横腹に飛んでくる。
「ぐええええ!! い、いきなり何するんだよエマ!」
「そんなの決まってるでしょ! ダイキ……あんたが恥ずかしい発言するからじゃない! ここはユウリたちメイプルドリーマーが所属してる芸能事務所……モデルやアイドル候補生、みんな綺麗で華があるのは当たり前なの!」
エマが顔を真っ赤にしながら指を口元に当て、「お願いだから変なこと大きな声で言わないで」とオレに念を押してくる。
「あー、確かにそうかすまん。 それは分かったけど……おい三好、なんで三好がオレを殴る必要がある! 結構脇腹に食い込んだぞ!!」
オレはエマに言われたことを守りながら小声で三好にツッコミを入れる。
すると三好は顔を真っ赤に染め上げながら……そしてポニーテールを激しく揺らしながら両拳を再度強く握りしめ、キッとオレを睨みつけた。
「はああああ!?!? 福田がまるで、私や真由香のことブスみたいに言ってたからじゃん!!」
ーー……ん?
意味が分からず多田の方へと視線を移すと、多田もオレと同様に三好の発言の意味が分からなかったのだろう。 オレと同じタイミングで首を傾げる。
「ん? オレがいつ三好と多田がブスって言った?」
「言ったじゃん!」
「だからいつ?」
「さっき! ついさっき! 福田がさっき、『ここには美人しかいねーな!』って! それって私らがブスってことでしょ!?」
はあああああああああああああ!?!?!?
確かに『ここには美人しかいない』とは言ったけど、どうしてそうなるんだ!!!
オレは「いやいや言ってねーよ!! 三好、お前の脳内変換どうなってんだよ!!」とすぐにツッコミを入れる。 しかし三好も負けてられないのだろう、「ノーナイへん……英語使わないでよ!!」と額に怒りマークを浮かばせながら、すぐに言い返してきた。
「残念でした日本語ですー! やっぱりお前はもうちょっと勉強した方がいいな。 の・う・な・い・へ・ん・か・ん。 アンダースタン?」
「はあああああああ!?!? なんで私がバカ扱いされないといけないのさ!!」
ここからはオレと三好お決まりの言葉プロレスに移行。
オレも三好も一歩も引き下がらずな言い合いが始まったため、エマはオレの股間を勢いよく蹴り上げてオレを制止。 多田は三好の耳元でこう囁いたのだった。
「佳奈、そんな騒いでたら美波に気づかれちゃうよ」
「!!」
多田の言葉に三好は小さく跳ねて反応。 焦ったように口元を手で押さえながら、エマの後ろに身を隠す。
そう、オレたちがここ芸能事務所に来た理由……実はそれは、一人夢に向かって歩き出した小畑に、一言『頑張れ』と、エールを送るためだったのだ。
「ご、ごめん真由香、私熱くなっちゃって。 エマもごめんー」
「まったく。 エマたちも来月には中学生なのよ? 勘違いさせるような発言をしたダイキも悪いけど、カナももう少し大人になりなさい?」
「ーー……はい」
いや、今のオレ悪くねーだろ。
しょんぼりする三好の頭を、エマが「分かればいいのよ」と優しく撫でる。
その後再び目的の場所……小畑が今いるであろう事務所内に併設されている、ダンスレッスン場へ向けて歩き出したのだが……
「なぁエマ、なんでオレの頭は撫でてくれないんだ?」
エレベーターに乗っている途中、未だ内股状態のオレがそうエマに小声で尋ねると、エマが目を細めながらオレの方を振り返る。
「いやアンタ……それ本気で言ってたら引くわよ?」
「なんで」
「だってダイキは桜子と……。 エマが悪者になっちゃうじゃない」
「はぁ?」
「ほんとダイキはそこらへん、お子ちゃまよね。 ちょっと同情しちゃうわ」
「だからなんでだよ」
結局エマがオレの頭を撫でてくれないまま、目的地……ダンスレッスン場へと到着。 そこは防音設備も整っているとのことだったのだが……レッスン場の扉へと向かっていた時、扉の向こう側からはっきりと、女性の怒鳴り声が外にいたオレたちにも聞こえてきた。
「何度言ったらわかるの!! やる気がないなら帰りなさい!!!」
「「!?!?!?!?」」
◆◇◆◇
突然聞こえてきた怒声に若干怯みながらも、扉を少しだけ開き覗き込むと、奥に卒業式以来の小畑の姿が。 しかしその表情は暗く、今までのような明るさは完全に消えてしまっている。
「え、美波大丈夫かな、めっちゃ暗いけど」
「そうね、エマもあんなミナミ見たことないわ」
「ウチも」
周囲に敏感な女子たちがそう言うんだ。 やはりオレの感じた小畑の違和感は間違いではない。
「もう一度、お願いします」、そうお願いする小畑に向かって女性が発した言葉は「これで何回目なの」。
二十代から三十代に見えるその女性は小畑の目の前まで近づくと、その場で腰を落とし、小畑の足をバシンと叩いた。
「この曲はね、歌の間……間奏で三人がシンクロして踊る、ダンスパートが非常に重要なの。 なのにこんな序盤で躓いているようでは、この曲自体が台無し……メンバーにも迷惑がかかるのよ!?」
女性は一度腕時計に視線を落として「とりあえず今日は脚に力も残ってないみたいだし終わり。 明日また見るから、それまでにちゃんと今のステップ叩き込んでおきなさい」とオレたちの覗いていた扉の方へ。 それを聞いた小畑は力なくその場でしゃがみ込んだ。
「あ、やべ! こっちくるぞ!」
「あっちの曲がり角に隠れよ!」
すぐに物陰へと移動したオレたちは、ギリギリ隠れることに成功。 そこからオレと三好は物陰から顔を覗き込ませて女性の様子を見ていたのだが、女性はスマートフォンを片手にどこかへ電話……「一旦考え直す必要があるかもです」と話しながらどこかへ消えてしまったのだった。
え、『一旦考え直す必要がある』って……マジ?
思わず近くにいた三好に視線を移すと、三好も信じられないような表情をしながらその場で固まっている。
「な、なぁ三好。 聞いたか今の」
「ーー……うん、聞いた」
「これ、ヤバくね?」
「これ、ヤバいよね」
顔を合わせながらその場から動けないでいると、エマがオレたちの背中を優しく叩く。
「ほら、ボーッとしてないで、行くわよ」
「えっ」
「でもエマ、今美波……!」
「あんなのアイドルだけじゃない……芸能のお仕事をしていたらよくあるわ。 でも先に言っておくけど、絶対に今のは見てなかったことにしておきなさい? 慰めの言葉は絶対にかけちゃダメ。 分かった?」
オレたちは小畑のいるレッスン場の扉の前へ。
エマは扉の取手に手をかけると、オレたちを見渡して「分かったわね?」と改めて確認をとり扉を開けた。
ようやく少し時間が取れまして、気まぐれシリーズ少し改稿しつつ、書ききりました!
以前掲載したのと少し違った内容になっている話もありますので、お付き合い頂けたらと思います!
気まぐれシリーズは全9話となってます!!!




