724 【真・結城編】桜のようなキミと桜色の未来へ(終)【挿絵有】
七百二十四話 【真・結城編】桜のようなキミと桜色の未来へ
オレの記憶を合わせたら2回目か。
卒業式当日。 筆記用具以外何も入っていないランドセルを背負って登校したオレたちは、いつもと変わらない朝の時間を過ごして式に出席。
式は卒業生代表の言葉やら校長の言葉を聞いてあっさりと終わり、あとは小学生生活最後のホームルーム。
担任が来るまでの間、オレたちは馴染みの席で最後の会話を交わしていた。
「あーあ、終わっちゃったわねー」
卒業証書の入った筒机の上に立て、感慨深げに眺めていたエマが小さく呟く。
「だなー」
「不思議だわ。 エマが来たのは5年の2学期からなんだけど……なんでかしら。 かなり濃かった小学生生活だった気がするわ」
エマはそう言い終えると視線をゆっくりとオレの方へ。
「まぁダイキ、アンタのおかげなんだけどね」と頬杖をつきながら優しい笑みを浮かべてきた。
「え、オレの? なんでだよ」
「そんなの決まってるでしょ。 どれだけアンタの変態行為に付き合わされてきたと思ってんのよ」
オレとエマが「いやエマ、お前の方がやってたこと痴女だったぞ」やら「いやいや、ダイキの方が変態だったじゃない。 どんだけの頻度でズボンにテント張らせてたと思ってるのよ」などと言い合いを始めていると、目の前の結城がクスッと笑う。
「ん、桜子ちゃん?」
「桜子? どうしたの?」
「ううん、私、今日が卒業式で寂しくて悲しかったんだけど、エマもダイキくんもいつもどおりで……楽しいなって」
「あー、そうね。 エマとダイキは同じ中学に行くけど、桜子は校区的に別だものね」
「うん。 でもね、ママに聞いたら高校はみんなと同じところ……好きなところを受けて良いって言ってくれてるの。 だから、私のこと、忘れないでいてくれたら嬉しいな……なんて」
結城の目に薄っすらと涙が浮かぶ。
しかしそれが頬に伝い落ちるよりも早く、オレは自然と結城に声をかけていた。
「いやいや何言ってんの桜子ちゃん。 桜子ちゃんはオレの永遠の最推しなんだから忘れるわけないでしょ」
「えっ……」
「ダイキ」
結城やエマが無言でオレのことを見つめているが、オレは言葉を続ける。
「それに桜子ちゃん、あれだよ? さっき桜子ちゃんは『中学の3年間はずっと会えない』みたいな感じで言ってたけど、そんなことは絶対ない……お姉ちゃんだって桜子ちゃんの学校に近い大学に行くんだから、いつでも一緒に遊びに来れる……桜子ちゃんさえ良ければ、いつでも会えるんだよ?」
そう伝えるとどうだろう。
結城は声を震わせながら「で、でもダイキくんもエマもお姉ちゃんも新しい学校で忙しいと思うし……迷惑じゃない?」と尋ねてくる。
それを聞いたオレはエマと顔を合わせてアイコンタクト。 揃って結城へと視線を戻すと、「そんなわけないでしょ」とツッコミを入れた。
「そう……なの?」
「当たり前じゃん。 あのね桜子ちゃん、よく考えてみてくれ。 中学生になったとして、オレが新しい何かを始めると思う?」
「そうよ。 このダイキが部活とかに入るわけがないじゃない。 かと言って勉強もするはずがないし、少しでも自分の変態欲求を満たすために早く家に帰ってエッチな本でも読んでるに違いないわ。 ねぇダイキ」
「ほお、分かってんなエマ」
「えぇ。 それにエマも週末はモデルのお仕事があるもの。 エルシィに寂しい思いをさせたくないってのもあるし、部活には入らずにすぐに家に帰るつもりよ。 だから桜子さえ良ければいつでも会えるし遊べるわ」
最後にオレとエマが「だから変な気を使わなくて良い」と一言。
それを聞いた結城はなんとも嬉しそうな顔で……今までみたことのないほどに、大きく頷いたのだった。
◆◇◆◇
卒業式に参列していた保護者たちも交えた最後のホームルームが開始したのだが、担任が最後のメッセージをオレたちに伝えてそれから先は各自、自由解散。
最後に別れを名残惜しんでいる者や親とどこか外食にいく予定があるのかルンルンで親と教室を出て行く者、「明日映画行こうぜ!」などと卒業など関係なしの遊びの予定をたてている者……。 いろんな声が入り乱れている中、参列していた結城母が「ちょっと舞さんに挨拶してくるからどこかで待っててくれる?」と結城に声をかけてきた。
「ママに? うん、分かった。 メールしてくれる?」
「うん」
そうして結城母はオレたちに軽く手を振って教室の外へ。
それに続いて一緒に参列していた優香とギャルJK星も「あー、だったら私も行きます」「舞ちゃんところ? アタシもー」と結城母の後ろを駆け足で追いかけていった。
「てことだからダイキ……とエマちゃんも、どこかで待っててくれる?」
優香が振り返りざまにオレたちに視線を向けてくる。
「え、優香さん、エマも……ですか?」
「うん。 だってほら、エマちゃんのご両親ってフランスじゃない? せっかくの卒業式なんだし今日は一緒に帰りたいなって。 エマちゃんも私にとってはかなり頼れる妹みたいなものだし」
「優香さん……はい、わかりました。 じゃあエマも連絡貰えるまでどこかで時間潰してますね」
エマ、なんだかんだで嬉しそうだな。
やはりこういう場には保護者的な人が来てくれた方が、恥ずかしいながらも内心かなり嬉しい。 それに気づいてあげられているあたり、本当優香って人間ができてるよな。
こうして結城母・優香・ギャルJK星は高槻さんのいるであろう職員室へ。
次々と教室内の人口が減っていく中、突然エマのスマートフォンが鳴った。
「あら、ノゾミからだわ」
「西園寺? なんて?」
「なんかみんなの要望で最後にマドンナ勢揃いの写真が撮りたいんだって。 ノゾミもミナミもハナエもOKしたらしいから、ちょっと行ってくるわね」
「えええ、ちょっと待てってエマ……!」
「すぐ終わらせてくるから。 もし優香さんたちから連絡あったらエマに電話ちょうだい」
「ま、まじか」
なんてサービス精神旺盛なマドンナたちだろうか。
写真を撮るときに誰がセンターとかで揉めなければいいのだが……。
気づけば教室内にはオレと結城の2人だけ。
とりあえずエマか優香たちが戻ってくるまで何か話題を振って場を繋げなければ。 そんなことを考えながら脳を働かせていると、結城がオレの服の袖を軽く引っ張り……窓の外へと視線を向けながらゆっくりと口を開いた。
「ダイキくん、外、桜……咲いてるね」
「え、あ、あぁ……そうだね」
「外に出て一緒に見ない?」
「外? まぁ……うん、いいよ」
小学生生活の中で最後にお願いを聞く相手が結城と言うのも悪くない。
オレは迷うことなく結城のお誘いに了承。 エマや優香に外にいる旨をメールで伝えた後、結城とともに桜の一番咲いている裏庭へと向かった。
◆◇◆◇
まだ結構肌寒いが天気は快晴。
日差しの温かみを感じながらオレは結城と桜の下を歩いていると、それは突然。 結城が立ち止まったのでどうしたのだろうとオレが振り返るなり、いきなり結城が頭を深く下げて「ごめんなさい」とオレに謝りだした。
「え、えええ? どうしたの桜子ちゃん」
「ごめんなさい。 あの時は、本当に……ごめんなさい」
一体何に対して謝っているのだろう。
最近オレは結城に謝られることをされただろうか。
オレは最近の出来事を思い返そうとしていたのだがそれよりも先、結城がその答えを口にした。
「あの時……、ダイキくんの告白、ちゃんと答えられなくて、ごめんなさい」
結城が頭を下げたまま、ポロポロと大粒の涙を零しながらオレに何度も謝罪を繰り返す。
「ごめんなさい……ごめんなさい」
いやいや今更なんでそのことを。
あれはもう終わったこと……どうしてぶり返す必要があるというのか。
流石のオレでも終わった失恋に同情なんていらない。
小学校最後の思い出が最推しの涙だなんて絶対に嫌だ。 オレはすぐに結城の謝罪を制止。 どうして既に終わったことを今になって触れてきたのか尋ねてみることにした。
「違うの。 私、あの時本当は嬉しくて……でも」
そこから結城が話してくれたのは、あの時の結城の心の内。
オレが生まれて初めて勇気を振り絞って想いを伝えたあの時間、結城は心の底から嬉しかったらしい。
しかし結城が逃げてしまったのにはいくつかの理由があったという。
「1つはね、私もダイキくんのこと好きだったんだけど、その好きが本当の好きなのか分からなくてダイキくんに迷惑をかけてしまうって思ったから。 それでもう1つは私がもしダイキくんと付き合ったら、ママを1人にさせちゃうって思ったから。 そして最後の1つが……」
結城が声を震わせながら必死に声を絞り出す。
そしてそれを聞いたオレは一瞬言葉を失った。
「ダイキくんに……『ごめんなさい』って言ったら……悲しんじゃうって思った……から!!!」
「!!!!!!!」
まさか、あの時あのシーンで結城がそんなことを考えていたなんて。
結城はオレの告白の答えを伝えるのが怖くて……オレの気持ちに応えることが出来ない申し訳なさもあり、おもわず逃走。 しかし後日、オレがかなり光のない表情をしていたことから、なんて自分は酷いことをしてしまったんだと後悔してしまったとのことだった。
「でもどうやって私から声をかけたら……あの時のことを話せばいいのかよく分からなくて。 だから……あの時は本当に、ごめん……なさい!」
おいおい、もうやめてくれよ。
こんなオレに謝ってる結城なんて見たくもないぞ。
「もうやめよ? オレは別に桜子ちゃんの謝罪なんか求めていないし、逆にそこまで悩ませてしまってたなんて……こっちが謝りたいくらいだよ」
オレが無理やり結城の頭をあげさせると、結城はそのままオレに抱きついてくる。
まさか卒業式の日にこんなことになるなんてな。 人生って本当何が起こるか分からない……そんなことを考えながら結城が泣き止むのをじっと待っていると、しばらくして結城がようやく泣き止み……ゆっくりと顔をあげてオレを見つめてきた。
「さ、桜子ちゃん?」
無言に耐えきれず名前を呼んでみると、鼻を真っ赤にした結城が再び小さく口を開く。
「でもね、今は違うよ」
「え?」
「今なら分かる……というよりも、あれからダイキくんをずっと見てて、やっと気づいた」
「ん? 何のことを言って……」
「私、ダイキくんが……ダイキくんのことが、好き」
「!!!!」
結城はそう言うとオレの胸から離れて数歩後ろへ。
更に顔を赤らめながら……周囲を舞う桜の花びらに背を押されているかのように言葉を続けた。
「もしかしたら5年生のとき……落としたハンカチを拾って声をかけてくれた時から気になってたのかもしれない。 あれが私がここで初めて貰った優しさだったから。 でも私はあの時ずっと暗いところにいて、『好き』なんて感情を持つ余裕なんてなかった。 でもダイキくんがいろんなところで私を見つけてくれて、その度に少しずつ暗いところに光を当ててくれて……最後にはそこから抜け出させてくれて」
「桜子ちゃん……」
「それがいつの間にか私の中で当たり前になってて……でも失って初めてその温かさやダイキくんの存在が大きかったことに気がついて。 気づくのが遅れて本当にごめんなさい。 ダイキくんが私のこと『最推し』って言ってくれてるのも優しさだってことくらい知ってる。 でももう1度……もう1度言わせて欲しいの」
『私、ダイキくんが好き……大好き』
結城はそう言い終えると、両手で顔をパタパタ仰ぎながら呆然と立ち尽くしているオレに背を向け少しだけ振り返る。
「じゃ、じゃあ私、先に教室……戻ってるから」
「えっ」
「えへへ、今度は私が告白しちゃったね。 でも別に気にしないでいいから……できればこれからも仲良くしてくれたらその、嬉しいな」
結城が足早に正面玄関の方へと戻っていく。
あぁ……凄いな。
完璧に諦められていたと思ってたのに、今もさっきの結城の言葉が心の中で鳴り響いている。
さすがは恋愛初心者。 ただ心に蓋をしていただけで、自分でもビビるくらい未練たらたらじゃねぇか。
ならばオレに出来ることはただ1つ。
オレは息を大きく吸い込み、そして……
「桜子ちゃあああああああああああああああん!!!!!!」
オレの大声に驚いた結城が目を大きく見開きながら再度振り返ってくる。
結城……結城の愛、しっかりとここに……心に受け取ったぜ。
だったら次はオレの番……とくと受け取ってくれ!!! あの時よりも更に進化したオレの愛……ラブリーを!!!!
オレたち以外誰もいない裏庭。
オレの愛は春風に乗って結城へとまっすぐ届き、その後の将来を祝福するかのように数多の恋色の花びらが空高く舞い上がった。
◆◇◆◇
「ちょっと遅いわよー。 どこにそんな道草食う場所あるのよ」
結城とともに教室に戻ると既に全員揃い踏み。
エマを筆頭に優香、ギャルJK星、結城母が「散歩だけじゃないでしょ。 どこで何してたのー?」とイジり口調でオレたちに尋ねてくる。
「な、なんでもないよ。 ねぇ桜子ちゃん」
「うん。 桜が綺麗だったから一緒にお散歩してただけだよ」
「そうそう。 本当可愛かった」
「ーー……!?」
「桜の花びらが」
「も、もおおおお!!! ダイキくん、ビックリしたじゃない!!」
「おお、とうとう桜子ちゃんからもエマクラスの鋭いツッコミ、いただけました」
オレたちの頬が火照っていたのは、恥ずかしかったからなのか……はたまた心に春が訪れて桜の花が咲いたからなのか。
「とりあえずダイキに桜子、お話はまたあとでいい? 実は今からみんなで行くところがあるんだ」
オレと結城が希少な言葉プロレスを繰り広げていると、優香が間に入りながら……少し焦った様子で時計を見上げる。
「え、お姉ちゃん?」
「どこか……行くの?」
「うん。 実はお姉ちゃんと美咲ね、桜子のお母さんや高槻先生とこっそり打ち合わせしてたの。 それで今から……卒業祝いで豪華なお店に行きます! もちろんエマちゃんもエルシィちゃんも一緒にね!」
「えええええ!?!? そうなの!?」
「うん。 それでもうそろそろ出発しないと間に合わないから、早く行こ!」
優香がスマートフォンで予約時間を確認しながら小走りで教室を出る。
「ちょ、ちょっとお姉ちゃん、走っていくの?」
「ううん、校長先生にタクシー呼んでもらったから、校門前で待てってくれてると思う。 高槻先生も特別に今日は早上がりさせてもらってるから、エルシィちゃんとタクシー近くにいるはずだよ」
こ、これぞ姫の権限!!!!
優香の後ろをギャルJK星、エマ、結城母が続く。
「ほーらダイキに桜子、小学校最後の廊下よ! 全力で走っても誰にも怒られない……靴箱まで競争しましょ!」
「いやオレは……」
「うんっ!」
結城が後ろから満面の笑みでオレを追い越していく。
「えええ!? 桜子ちゃん!?」
「ダイキくん、エマのことだよ……きっと負けたら何か罰ゲームだよ!」
「あらよく分かってるじゃない。 そうね、勝った人がなにか罰ゲームを決めましょうか」
ーー……なるほど、それならば話は別だ。
「よかろう!!! ならオレが勝ったら2人は休日メイド服でオレをおもてなしな!!! いや……もっと豪華に行こう!! あとそこに三好たちも呼ぶこと!! 1回だけでいいからハーレムを体験させてもらうぜ!!!」
「ちょっ、ダイキくんっ! い、いきなり浮……!」
「そう! オレは今かなり浮ついています!!!!」
恋……すげぇな。 片想いでも相手が視界に入るだけで元気が出ていたのに、両想いになったらその効果が数千倍以上じゃねぇか。
これぞ恋い焦がれた最大級の謳歌!!!
オレは人生の楽しさを最大限に噛み締めながら、短い期間ながらも思い出深い校舎を背に……まだ見たことのない桜色の未来へと駆け出した。
◆◇◆◇
「あーー!!! もう最悪!!! 入学式早々にタバコ没収されるとかありえなさすぎ!!!!」
「それな!!!」
春休みが終わって中学校入学式後、振り分けられた教室で1人黙々とメールをしていると、また別の小学校出身のやつだろうか。 かなり髪の毛や制服の着こなしの派手な男女グループが教室に入ってくる。
うるせーなー。
【受信・結城さん】ダイキくん、そっちはどう? 誰かと同じクラスになれた? ちなみに私のクラスは結構平和っぽくて安心してる。
【送信・結城さん】幸いなことに三好と同じクラスだったわ。 あー……、オレも今さっきまで平和そうだと思ってたんだけどなー。 ちょうどヤバそうなのが数人きたわ。
【受信・結城さん】そうなんだ。 あまり関わらないようにね。 あ、それはそれとして今週の土曜日空いてる? 新学期早々なんだけど……会いたいな。
ぐ……ぐおおおおおお!!!! 可愛すぎるんじゃああああああああ!!!
結城の圧倒的な癒し成分によりオレの集中力は完全にスマートフォンの画面へ。
視界がピンク色の中メールを続けていると、突然女の子の悲痛な叫び声が教室内に響き渡った。
「ちょっと……なにしてんのさ! さすがにやりすぎっしょ!!!」
目を向けた先にはヤバめな奴らと睨み合っている三好の姿。
どうやら奴らの標的になってしまった女の子を庇っていたようで、三好が後ろで震えながら怯えている女の子を守るように奴らの前に立ちはだかっている。
「はー? なにお前。 私らに逆らおうっての? 私らの上にはマジで怖い高校生の先輩いるから……態度には気をつけた方がいいと思うけど?」
「そんなん知らないし! ていうか、なに出会ったばっかりの子を突き飛ばしてんのさ! 態度気をつけたほうがいいのはそっちっしょ!!」
「うざー。 アタシらの前に出てくんのが悪いんじゃん」
「そうそう。 あ、てかなにお前そのヘアゴム。 太陽のキャラクターとかガキかよダッセー。 ちょっと見せてみろって」
ーー……あ?
「ちょっ、触んないでよ汚い!!!!」
三好が太陽のヘアゴムに手を伸ばそうとしてきた男の手を勢いよく払いのける。
しかしそれに対して奴らは逆ギレ。 「先に手を出してきたのはお前だからな!!!」と怒鳴りながら掴みかかろうとしたのだが……
秘技……パンツ・ロック!!!!!!
続いて最新技……唾液ファイヤー!!!!
これを使うのも久しぶりだな。
華麗なオレの必殺技が男へと炸裂し、これにより男たちは皆恥ずかしい箇所が全員露わに。
そして女たちには流石に問題になるかもと感じたのでパンツ・ロックは封印。 予め口に含んでおいたお茶を顔面に吹きかける。
「「ちょ、うわわわわわ!!!!! なにしてんだインキャああああああ!!!!!」」
「「ギエーーーーー!!!!! 汚ねぇーーー!!! クッセエエエエエエエエ!!!!!」」
オレの華麗な連撃によりヤバめな奴らは教室を飛び出していき、なんとかこの場は収束。
オレは大きく瞬きをしながらこちらを見上げていた三好に視線を向けると、いつ以来だろうな……懐かしのセリフを口にしたのだった。
「これであいつらのヘイトは全部オレに向いたはずだ。 安心しろ」
「福田……なんで」
「決まってるだろ。 アイツらが勝手に暴れるのは構わんが、オレの大事な仲間に手を出すことは絶対に許さん。 それに今のオレはラブリーに生きる男・ラブリーダイキだからな」
「ーー……は?」
「三好。 突然で久々だけど……やるぞ」
「え」
オレの言葉を聞いた三好の身体がビクンと反応する。
「やるって……なにを?」
「手伝え」
「!」
そう伝えると流石は三好だな。 三好は思い出したように「あ、……う、うん!」と大きく頷く。
「じゃああれかな、別のクラスにはなっちゃったけど、エマや花江……希たちにも協力してもらう?」
「いや、それはオレらで手に負えなくなった時の場合の最終手段だ。 まぁあのくらいならオレと三好で充分だと思うけどな」
「そっか! わかった! じゃあ後で作戦会議だね!」
「うむ!」
オレは満足そうに頷き返すと、三好の後ろ……不思議そうにこちらを見上げていた女の子に視線を移す。
どことなくだけど……幸薄そうな雰囲気が昔の結城に似てるな。
「出来れば……なんだけど、後ろのキミも手伝ってくれる?」
「え」
「大丈夫、キミに害はないから」
「へ? あ、は、はいっ」
入学式早々新たな波乱の予感だぜ。
またいろんな波乱が待ち受けていそうだけど、そんなのは知らん!!! 小学生生活と同様……この中学生生活も謳歌するため、オレは再び変態脳をフル回転させた。
「とりあえずあれだな。 1人目はあのグループの端っこにいたボインちゃんにするか」
「ボイn……ふ、福田。 流石に私らも中学になったんだしさ、言葉選びには注意していかない?」
「お、なんだ三好。 自分がペッタンコ属性だからってそんなムキに……」
「は……はああああああ!?!? あ、あるし!!! うっさい福田!!!」
「ぐえええ!!!!」
(おわり)
1話を投稿してから2年です。
本当にここまでお読みいただきましてありがとうございました。
多くのヒロインたちを応援して頂けまして、作者はとても幸せ満開……たまに思い出した時でもいいので、またダイキたちに会いに来てもらえると嬉しいです。
◆◇
次作は今週末くらいにでもと思っております。
察しのいい方は気づいてしまうかもしれませんが、この作品に出たとある人も後々登場しますので、よろしければそちらもお楽しみいただけたら幸いです。
小説情報→よすぃから作品一覧に飛べるはずなので、週末の夜、思い出したら読みにきてやってください。




