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72 そういうパターン!?


 七十二話  そういうパターン!?



 ある日の夕方、優香がオレの予定を聞いてくる。



 「え? おばあちゃん家?」


 「うん。 夏休みだしさ、おじいちゃんとおばあちゃんに私たちの元気な姿見せとかないとじゃない? だからどうかなって」


 

 なるほど、ダイキには親はいなくとも祖父母はいたのか。

 オレが黙り込んで考えていると優香が何かを察する。



 「あ、ごめんね。 そこらへんも思い出せてない感じだったのかな……遠くに私たちのおじいちゃんとおばあちゃんが住んでるんだよ」


 「そうなんだ、ごめん」


 「ううんいいの。 で、どうかな」



 優香がスケジュール帳を開いてオレに向ける。



 「ダイキ、もし予定あったらそれ終わってからでも良いんだけど」


 「いや、何も予定はないからいつでも良いよ」



 ラブカツオーディションだってダメだったしな。

 もし通過してたら話し合いとかで声優さんたちとも会えてたんだろうなぁ……。

 まぁ過ぎたことを悔やんでも仕方ないが。



 「あ、どれくらい行く予定なの?」


 「うーん、私的には半月くらいかなーって思ってたけど、ダイキ的にイヤ?」


 「ううん。 ただ、結城さんどうなのかなーって思って」


 「あ、そうだね。 桜子ちゃんその間家に来れなくなるわけだもんね」



 なんだかんだで夏休みになっても金曜の夜は家に来てたしな。 もし半月もオレらいなくなったらあいつガチでどうすんだろ。

 鍵でも渡しておくとかするのだろうか。



 「じゃあさ、桜子ちゃんも一緒に行くか聞いてみよっか」


 

 ーー……え?



 ◆◇◆◇



 

 優香が電話で結城母に聞いてみた結果、結城母は是非よろしくとのこと。

 そういや優香がその後言ってたんだけど、「電話越しで話した限りだとそこまで酷いことするような悪そうな感じはしなかったなー」だってさ。


 ともあれ結城もオレたちに同行する運びとなり出発日は明後日に決定。 そこから3人とも半月の間向こうに滞在することになったのだ。

 そしてオレたちはその帰省に必要なものを買いにスーパーに来てるわけだが……



 「なんで水着なの?」



 オレたちがいるのは水着売り場。

 優香は結城と楽しそうに話しながら水着を物色している。



 「あ、そうか。 えっとね、おじいちゃん家って田舎だから近くに川があるんだよ。 暑い日に川で水遊びするの楽しいよー? っていってもダイキは今まで一度も外には出なかったけどね」



 優香が苦笑いで答える。



 「そ、そうなんだ」



 めちゃめちゃインキャじゃねーか!

 でもそこらへんは前のオレも似たような感じだったから親近感はめちゃめちゃあるぞ。



 「ーー……で、ダイキはどうする?」


 「何が?」


 「水着だよ水着。 せっかくだし新しいの買う?」


 

 優香が男性用水着コーナーを指差す。

 


 「ううん、オレは学校のでいいや。 ここで2人が選ぶの見てるよ」


 

 こうしてオレは2人の水着選びを間近で観察することにした。


 

 ◆◇◆◇



 「桜子ちゃん、こんなのどうかな」


 

 優香が黄色いビキニを体に当てながら結城に尋ねる。



 「優香さんかわいい。 似合ってる……」


 「そう? じゃあ私、これにしようかなぁ」


 「でも、あっちのも似合いそう」



 結城が優香の後方に設置してあるマネキンが着用している水着を指差す。



 「え、あれ?」


 「うん。 私は……あっちの方が好き」



 それはビキニなのだが肩紐が付いておらず、真ん中にリボンのようなものがついているデザインだ。

 社会人になっても休日は基本引きこもってた生活をしていたツケがここになって来るとはな……構造が全くわからん。 あんなので落ちないのか??


 オレがボーッとその光景を眺めていると優香がオレに視線を向ける。



 「ダイキはどう思う? お姉ちゃんあれ似合いそう?」


 

 ぶっちゃけどれ着ててもほぼ下着のような格好の優香と遊べるわけだろ? だったらオレ的にはそれだけでありがとうございますなのだが……。

 まぁでも遊んでる時にポロリするとしたらそれの方が確率は高いか。

 ということでオレの返事はもちろんこれだ。



 「うん。 似合うと思う」


 「じゃあお姉ちゃんはこれにしよっかな。 桜子ちゃんはどうする?」



 優香が屈んで目線を合わせながら結城に尋ねる。


 ーー……ゴクリ。


 結城の水着姿か……。

 ぶっちゃけスッポンポンな姿は前にお風呂場で見てはいるんだけど、あの時はタオルが邪魔でほとんどが見えなかったからなぁ。

 どうせなら露出多めの水着を選んでもらって、できれば屈んだ時にチラッとするような少し大きめの水着を希望します!


 そんな願望を頭にめぐらせながら視線を送っていると結城と目があう。



 「ーー……福田、くん」


 「え、なに?」


 「その……恥ずかしいから、あっち……」



 結城が水着売り場前にあるベンチを指差す。



 「え、なんで?」


 「もうダイキ、桜子ちゃんも年頃の女の子なんだから。 お姉ちゃんはいいけど、同い年の男の子に水着選んでるところ見られてると恥ずかしいんだよ?」


 「あ、はい。 わかりました」



 くそ、結城の水着は当日までお預けかよ!!

 オレは渋々店を出て、外に設置されているベンチへと向かった。



 ブー…ブーー……



 「ん?」



 ベンチに腰掛けるとポケットの中でスマートフォンが鳴ってることに気づく。

 取り出し確認してみるとメールではなく着信通知。 多田からだ。


 別にメールで連絡しろよとは思いつつもやることが特になかったオレは通話ボタンをタップ。 耳にスマートフォンを当てる。



 『あ、良かった繋がった!! もしもし福田!?』



 なんだ? 妙に焦ってるようにも聞こえるが……



 「どうした? お前なんでメールにしな……」

 『さっきさ、ラブカツオーディションの人から家に電話あってさ! ウチら映画出れることになったんだって!!』


 

 ーー……は?



 「それガチ?」


 『ガチだよガチ! なんかウチらのステージを見た声優さんたちがオーディションの後、偉い人にお願いしてたんだって!! ラブカツの愛を一番感じて感動したから一緒にやりたいって!!』


 「お、、おおおおおお!!! やったな! それって三好や小畑には?」


 『今頃オーディションの人が佳奈たちの家にも電話かけてると思う!! ほんとサンキュ福田!!』



 マジか、こんな展開あるのかよおおおおお!!!

 てことは収録とか話し合いに一緒に行けば、声優さんたちを間近でまた見れるってことか!! これは最高に神展開だぜ!!!



 「で、声の収録とかって決まってんの!?」


 『うん、だから福田に電話したんだよ! 福田もラブカツの人に会いたいでしょ!?』


 「もちろんだナイスだ多田! それでいつなんだ!?」


 『来週の土日だって! なんか簡単な写真撮影もあるらしくて、ホテルの用意もしてくれるっぽいよ!』



 ーー……。



 「ーー……え、来週?」


 『うん! あれ、もしかして福田来れない感じ!?』


 「ーー……」


 『ん? あれ、電波悪いのかな、おーい福田ぁー! もしもーし!!』



 そ、そんな……そんなことってあるかよ。

 オレは水着選びをしている優香たちに視線を向ける。


 仮に……仮にだぞ?

 オレがお留守番を選べば結城は気まずく優香もより気を遣う。

 延期をお願いしようにも、結城母にはもう日程も伝えてある……どう転んでも無理なやつやん!!


 く……これも運命だと言うのか。



 「もしもし……多田」


 『あ、繋がってた! で、どうなの!? 今日同行者の人数の連絡入れないとダメっぽいんだけど』


 

 「残念だけど外せない用事がーー……」


 『マジ!?』


 「あぁ。 工藤ーー……裕太兄ちゃんにはオレから聞いて後で連絡するよ」



 オレは多田にそう告げ通話を終えた後、優香たちが水着選びを終えて戻ってくるまでの間それはそれは真っ白に燃え尽きていたのだった。

 


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