718 【真・結城編】ラブリー100パーセント!!
七百十八話 【真・結城編】ラブリー100パーセント!!
優香のおかげで真実の愛に目覚め、オレは愛の使者・ラブリーダイキへと進化。
この心から溢れ出る愛をどう結城に伝えていくべきか。 そんなことを考えながら翌日廊下を歩いていると、背後から鼓膜が破れるかと思うほどの大絶叫が聞こえてきた。
「あーー!!! 西園寺いたぁーー!!! 今日も可愛い愛してる大好きぃーーー!!!!!」
!?!?!?!?!!?
背後からオレの横を通り過ぎ、少し先にいた西園寺へ愛のメッセージを送りながら突撃していったのは乙女・綾小路恵子。
今まではただウザくて面倒くさいだけの女ってイメージだったのだが、ラブリーダイキに進化した今なら分かる。
これだ、これだああああああああああああああ!!!!!
あいつ、西園寺に心のまま……ラブリー100パーセントの言葉をぶつけているじゃないか!!!
そして気になるであろうそれに対する西園寺の反応なのだが、これもまた以外。
修学旅行の時も薄々気づいてたんだけど、最初こそ嫌がっていた西園寺が今や「あーはいはい、ほんと綾小路って私のこと好きだよね」などと綾小路の愛を受け入れるようになっているのだ。
「みてみて西園寺ーー!!! スマホの壁紙、昨日西園寺と画面通話した時の西園寺の顔にしてんだぁーー!!!」
「ちょっ! 綾小路、なんてもん壁紙にしてるの! ていうかその壁紙の私、めちゃくちゃ眠そうにしてるけど!!」
「いーじゃんそこが可愛いんじゃんー!! ウトウトしながらもアタシとの会話に付き合ってくれてる西園寺……ああああああ可愛い!!!! ほんと好き!!!」
「いや、お願いだから他のに変更して。 じゃないと友達やめる」
「えええええ!?!? こんなに可愛いのに!?!?」
「もっと他にいいのあるでしょ。 ないなら今撮ってもいいからさ」
「ピエエエエエエエエエ!?!? いいの!? やったああああああああ!!!!!」
西園寺もなんだかんだで元気そうにやってるようで良かったぜ。
あの謎の返事不可の告白イベント以降、西園寺がオレのところに来る時は決まって性癖に付き合わせてくるくらいだったもんな。
まぁ綾小路にはまだそういうのに付き合わせてはいないようだが……
何はともあれ、いいものを見せてくれてありがとう綾小路。
ラブリー100パーセントの伝え方、かなり参考になったぜ!!!
早速オレも綾小路と同様、結城にラブリー100パーセントを伝えてみることに。
昼休みエマと結城の3人で雑談をしていた際、いきなりラブリーをぶち込んでみた。
「ほんと最近寒いわよねー」
「だね。 もう11月だもんね」
「そういや少し前に水着のモデルしたんだけど、桜子に似合いそうなの貰ったからいる? 着るのは来年の夏になっちゃうけど」
「いいの?」
「えぇ。 可愛いんだけどエマの好みではないのよ」
「ありがとー」
「今度ウチに来る機会あったら渡すわね」
「えー、じゃあ週末泊まりに行っていい?」
「いいわよ。 あれならお母さんも一緒にどうぞ」
「ほんと? なら後でママに聞いてから教えるね」
「えぇ」
なるほど、水着か。
「桜子ちゃん!!!!」
会話のほとんどが結城とエマによるものだったのだが、ここでオレが勢いよく割り込んでいく。
「ちょ、ちょっとなによ、ビックリするじゃないダイキ」
「な、なにどうしたのダイキ……くん」
さぁ、綾小路から学んだラブリー100パーセント、とくと受け取ってくれ!!!
「もしエマに貰ったその水着を試着することがあったなら……写真撮って送ってくださいお願いします!!!!」
「「ーー……え?」」
結城とエマの動きがピタッと止まる。
おお、聞いてる……ちゃんとオレの言葉に耳を傾けてくれてるじゃないかああああああ!!!!
いける……いけるぞおおおおおおおお!!!!!!!
「もちろん上半身アップとかじゃなくて全身が映る感じで!!! それか、もし許されるのならそこにオレを呼んでその……動画を撮影させてください!!!!」
「な、なんで……?」
「可愛いからです愛おしいからです大好きだからです!!!!」
この瞬間隣からエマによる素早いボディブローが腹部に炸裂。
あまりのめり込み具合に一瞬息が出来なくなったオレはそのまま机の上に突っ伏すように倒れこむ。
「バカダイキ!! あんたなに急にセクハラやってんのよ!!!」
「ぐべ……! そ、そんなの決まってる……だろ。 見たいから……だよ、水着姿のオレの……最推しを……」
まぁエマには理解出来ないだろうことは分かっていた。
だってあの言葉は結城に向けてのものだったからな。 だから見てみろよ、結城のやつ……目を大きく見開きながら何か言いたげにオレを見ているぞ。
オレが「どうしたの桜子ちゃん」と尋ねると、結城が若干戸惑いながらもゆっくり口を開く。
「えっと……なんで送って欲しいの?」
「素直に嬉しい!」
「写真を送ったらダイキくん、どうするの?」
「送られてきた瞬間に保存してスマホの壁紙にして毎晩拝みます!!」
「ど、動画の場合は……?」
「その場合はもちろん毎晩拝むのは変わらないけどそれと同時に……えへへ、流石にこれ以上の内容を女の子相手に言うのはちょっと」
「妄想ですでに身体反応させてんじゃないわよおおおおおおお!!!!!」
腹部の次は下腹部かよ!!
座りながらのエマの蹴りが勢いよく男の脳へ。
結果オレはかなりの大ダメージを受け、しばらくの間一言も発することすら出来なくなってしまったのであった。
「ぐ、ぐぬぬぬぬ、エマお前少しは加減しろ……」
「セクハラするのが悪いんじゃない!」
「いや……これはオレなりのラブリーを伝えたかったわけで……」
「どこにそれを受け入れる女子がいるってのよ!!」
くそ、やはりあれは綾小路にしか出来ない西園寺専用の方法だったってわけか。
となればまた伝え方から考え直さないといけないな。
オレは大きくため息をつきながら「桜子ちゃん嫌な気持ちにさせちゃってたらごめん」と謝罪。 しかしどうだろう、オレが謝ると結城は首を横に振り、思いも寄らない言葉をかけてきたのだ。
「えっと……ううん、別に嫌な気はしなかったよ」
「そ、そうなの?」
「うん。 それでその……いいよ」
ーー……。
「え?」
「だからその、水着……写真送ってもいいよ。 エマが良ければ動画でも別に……」
おお……おおおおおおおおおおおおおお!!!!!
まさかの大どんでん返し。
エマは信じられないような表情で結城を見つめており、オレは最大限のパワーで拳を握りしめ、過去最大級のガッツポーズを決めたのだった。
「っしゃあああああああああああああああああ!!!!!!!!」
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