714 【真・結城編】何気ない日々からの!?
七百十四話 【真・結城編】何気ない日々からの!?
「あー!! 福田ぁ!!! 今私見て笑ったっしょーーー!!!」
放課後、視線があったと同時に三好が額に怒りマークを浮かばせながらオレのもとへ全速力で駆けてくる。
「いやいや三好、何をおっしゃいますやら」
「嘘つけーー!!! めっちゃ私の顔見た瞬間『ふっ』って笑ったじゃん!!」
「だって……ねぇ。 なんでお前三つ編みにしてんだよ。 メスガキに三つ編みはミスマッチだぞ?」
「は、はああああああ!?!?!? 違うし!! これは昼休みの終わりに美波がやってきただけなんだから!!! それで勝手に髪型戻すのもその……申し訳ないから、そのままにしてただけだし!!」
「あーはいはい。 プフっ」
「むきいいいいい!!!! 福田あああああ!! そこになおれえええええ!!!」
病むことがなくなると日々の早さって一気に加速するんだな。
気づけばすでに11月。 オレたちは卒業までの残り少ない時間を1日1日噛み締めながら過ごしていた。
「ん、そういや多田はどうした。 最近放課後見ないけど」
「あー、麻由香なら放課後になったらすぐに塾に行ってるからね。 受験も来年すぐだからラストスパートなんだって」
「なるほど大変だな」
「うん。 そんでちなみに美波はエマの紹介で今日からモデルの勉強しに行ってるんだ。 ほら美波って中学になると同時にアイドルなるっしょ? その予習らしいよ」
「えええ、真面目か」
「そーだよ。 美波って実はチョー真面目。 てか福田も知ってるっしょ?」
「まぁな。 オーディションのときかなり近くで見てたしな」
みんなまだ小学生だというのに将来や夢のために必死に頑張っている。
じゃあオレはどうだろう。 オレが将来や夢のために今するべきことってあるのだろうか。
◆◇◆◇
ある程度三好との言葉プロレスを楽しんだオレは先ほど考えていたことを思い出しながら靴箱のある正面玄関へ。
運動靴に履き替え玄関を出ると、見慣れたクラゲヘアーが視界に飛び込んできた。
「福田……くんっ!」
「ちょ、おわわわわ!!! ビックリしたああああ!!」
クラゲヘアー……そう、結城だ。
結城が何かそわそわした様子で「えっと……あの、あのね」と声を詰まらせながらオレを見上げてくる。
「ど、どうしたの結城さん」
「ちょっと今、なんていうか……私1人じゃどうしたらいいか分かんなくって、それで……」
んんん? なんだ? 何かの相談か?
それにしても何をそんなに焦ってるんだ?
「とりあえず一回落ち着こうか」
オレは結城の背中を(制服越しに感じるソフトブラの感触を楽しみながら)さすり、なんとか結城を落ち着かせることに成功。 深い息を吐いた結城に改めて何があったのか尋ねてみたのだが……
「あ、あのね」
「うん」
「西園寺さんが校舎裏で」
「うん」
「漏らしちゃった」
「ンンンン!?!?!?」
西園寺が漏らした!? 校舎裏で!?
とりあえず何が起こったのかは理解できたが、状況が意味不明だったオレは色んな意味で西園寺のことが心配になり現場へと急行することに。 到着すると、今にも天に昇りそうな表情をした西園寺が「やっぱり……これだ」と小さく呟いていた。
「な、なぁ西園寺。 最近すげーなお前」
「あ、福田くん。 えへへ、福田くんにも見られちゃったなー」
いや喜ばずにそこは恥ずかしがれよ。
「まぁオレはいいもの見させてもらったけどよ、どうしてこんなところで」
「えへへへ、適当にタイマーをセットしてパンツに入れてたんだけど忘れちゃってて……、いきなり震えてビックリしたよ」
ーー……。
「なぁ西園寺。 もしかしてお前、日頃スマホをポケットじゃなくて……」
「うん。 最近はずっとここ」
西園寺が指差したのはもちろん下腹部。
ーー……小学生で目覚めるとか早すぎるだろ。
オレはとりあえず濡れたパンツを簡単に水で洗ってビニール袋に入れるよう指示。 すると結城が「保健室からパンツ借りてきた方がいい……かな」と校舎を指差した。
「いや、このままでいいと思うよ。 なぁ西園寺、お前ももう帰るだけなんだし、パンツなんて要らないよな」
「え。 でも今日って結構風強いし……捲れでもしたら」
「いいじゃないか。 それもスリル……今のお前ならそれさえも楽しめるはずだ。 誰とは言わんが、そいつは既にそのギリギリを心の底から楽しんでるぞ。 それに……」
「それに?」
「冷たい風がそこを通り抜けたらさぞかしゾクゾクするんだろうなぁ」
「!!!!!」
オレのこの言葉に西園寺の表情が変わる。
股のあたりをキュッと押さえると、目をキラキラと輝かせながら口角をグインとあげた。
「ほんとだ!! じゃあ要らない!! 桜子、パンツは大丈夫ありがとう!!!」
「よし! それでこそ西園寺だ!!!!」
「え、えええ……? 希、何でパンツ大丈夫なの? それに福田……くんも、何でそれで『それでこそ希』ってなるの?」
「いずれ桜子にも分かる日が来るよ!」
「そうそう!! その時は是非オレに教えてくれ!!」
「え、ええええええええええ!?!?!?!?」
ほんと毎日が楽しすぎるぜ。
少し前と全く変わらない……ただ1つのことを除いては。
◆◇◆◇
夜。 日課のようにエロ漫画を楽しんでいると結城からメールが届く。
【受信・結城さん】福田くん、今起きてる?
そう、それこそ結城関連。
何故か夏の終わりに結城と久しぶりに出掛けて以降、結城からのいろんなお誘いが激増していたのだ。
【送信・結城さん】起きてるよー、まだ眠くないし。
【受信・結城さん】じゃああと少ししたら電話していいかな。 もうすぐママ、寝るから。
女の子との通話……それ自体は普通にありがたいことだし、なおかつその相手が結城なもんだからオレからしたらご褒美でしかない。
ただそれにも問題があって……
「ヤベェな。 もしかしたらあの時以上に好きになってしまってるぞ」
もう完全に吹っ切れたと思ってたんだけどな。
今では受信通知の【結城】って文字を見るだけで心が弾んじまうぜ。
でももう同じ過ちは繰り返さない。
結城はおそらくオレを親友としてみてくれているんだ。 だったらオレもそれに応えて……オレも精一杯好意を持っていることがバレないよう努めなくては。
しばらくすると結城からの着信通知とともにスマートフォンが鳴る。
オレは嬉しさ半分・もどかしさ半分のテンションで通話ボタンをタップ。 普通に『家に帰ってから何をしてた……』やら『宿題どうだった?』などといった、何の当たり障りのない会話を繰り広げていたのだが、それは突然に……
『あ、そうそう。 そういやママが言ってたんだけど』
「うん」
『名前で呼びあってこそ、心の距離って縮まるんだって』
結城母曰く、お互いに名前で呼ぶということは心の壁をなくしている……信頼しているということ。
それを繰り返すことによって更に互いの心の距離が縮まっていくらしい。
「あーそれあるかもね」
『福田……くんってエマのことをエマって呼ぶでしょ?』
「うん」
『なんかそれ思い出したら、確かに福田……くんとエマって信頼しあってる感じするしいいなーって思って。 私とはその、どう……かな』
「どう……とは?」
『心の壁、感じる?』
「いや、オレはできればもっと仲良くなりたいって思ってるけど」
『じゃあ、どうかな。 名前……で、呼んでくれたり……とか』
「ーー……え?」
『ゆ、結城さんじゃなくて……さ、桜子って』
ええええええええええええええええ!?!?!?!!?!?
お読みいただきましてありがとうございます!!!
さぁ……ここまでやって参りました!!!!




